《ウイルター 英雄列伝 英雄の座と神代巫337.芝居は終わった

ジェニファーは、コミルに制圧されたまま、ずっとのぞみを橫目に見ていた。全員一致で危険があるとされた彼は、10クルの距離を取った先で、コミルの監視制圧狀態にある。

そして遂にジェニファーは、の全ての源気を解放させた。コミルは『デスセンス』で危険を察知し、凄まじい源気の放出に近距離で巻き込まれることがないよう、ジェニファーから瞬時に跳び離れた。

「フン、まだそんな力をめていたか。いや、わざと制圧されていたな?全員が気を抜く瞬間を狙っていたのか」

その通りだった。ジェニファーは戦闘能力の高い心苗たちが『尖兵』との戦いで耗されること、そしてティフニーの手當てを必要とする重の者が出ることを待っていた。そして今、『尖兵』たちの一件が片付き、全員が気を緩めている。一時的にコミルに制圧させたのも芝居を打ったまでだ。連攜暗殺をするなら今しかない、ジェニファーはこの瞬間を見逃さなかった。

に燃えるような源気を放ち、ジェニファーは冷たい笑みを咲かせる。

「君のおかげで力を回復させてもらったよ。さて、Ms.カンザキ、貴様の命は私がもらう!」

補給陣地の心苗たちが異変に気付いた時には、ジェニファーはもう、左手に集めた源気を放っていた。

のぞみは床にぺたんと座ったまま、蛍に源気を送っていた。ちょうど、ジェニファーには背を向ける形だった。強い殺意が凝された源(グラム)のは、槍のように一直線にのぞみの背中に向かっていく。

集中しているのぞみの手前に、咄嗟にコミルが飛び込んだ。右手の『スレイヤーハンド』がの槍に貫かれ、コミルの腕が折れる。

「!?」

「邪魔しても無駄だ!」

ジェニファーの気配の上昇に気付き、ティムが瞬時にいた。コミルの後ろに立ち、のぞみを守るように源気のバリアを作る。

それでもなお、ジェニファーの技を防ぎきることはできなかった。ティムはモーションスキルで上手く急所を避けたが、肩にり傷を負った。

「ノゾミ、伏せて!」

「えっ?!」

最後に飛び出したラトゥーニは、メイスに源気を集め、ジェニファーの技に衝突させた。コミルの腕を折り、ティムのバリアを破ったの槍は、ラトゥーニの技によってとうとう打ち破られ、の粒子となって散った。

(そんな、全てを賭けた一撃が……)

の必殺技を破られ、驚きの表を浮かべていたジェニファーを、コミルが急襲する。ジェニファーはコミルに視線を追いつかせたが、技を繰り出すよりも先にコミルが攻撃を始める。

「今度こそ、くたばれ!」

コミルは左手の『スレイヤーハンド』でジェニファーを押し飛ばすと、『鬼歩(ゴーストステップ)』で消えるように移する。ジェニファーの真正面に立ったかと思うと首を摑み、そのまま壁に叩きつけた。

額からを流すジェニファーの首を摑んだまま、コミルは靜止する。彼の握力があれば、気管を潰すのは造作もないことだった。

「なぜ……私を殺さない……」

「ボクがこの作戦に參加する條件だよ。ハヴィーが、お前の息を殘せってねぇ」

クラークがんだ。

「このアマ!まだカンザキさんを殺す気かよ!」

「ツィキーさん、どれだけのぞみさんを苦しめたいんですか?」

藍(ラン)が悲痛なびを上げると、ラトゥーニが害獣でも見るような目でジェニファーを見下して言った。

「ランさん、人殺しには何を言っても屆かないよ」

クラスメイトから罵られるジェニファーの立場を思うと、のぞみはが切り裂かれたように痛んだ。

「皆さん、やめてください!これ以上、ツィキーさんを苦しめないで。モクトツさんも、お願いです、彼を離してください」

自分を殺そうとする人を庇うのぞみの行が、藍には理解できない。

    人が読んでいる<ウイルター 英雄列伝 英雄の座と神代巫女>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください