《聖が來るから君をすることはないと言われたのでお飾り王妃に徹していたら、聖が5歳?なぜか陛下の態度も変わってません?【書籍化&コミカライズ決定】》第95話 でも、わたくしはサキュバス ◆――リリアン(キンセンカ)
「一、どういうつもりなのよ!」
王宮の廊下。
目の前では、ショコラがキャンキャン吠え――もとい、ニャンニャン鳴いていた。
「何よ。聖には何も手出ししていないでしょう? 約束通りだと思うけど?」
そう返せば、黒貓がキッとわたくしをにらむ。
「そういうことじゃないわ! だっておちびのパパがおかしいの、どう考えてもあんたの仕業でしょう! そんなことして何になるのよ。早くやめなさいよ!」
……これだからショコラは駄目なのよ。親が子に及ぼす影響を、全然理解していない。
「しょうがないじゃない。文句は國王に言って。あなただって知っているでしょう? わたくしは男を魅了するの。國王だって、時間差で魅了されてしまっただけよ」
ショコラは幻については何も知らない。それをいいことに、わたくしは噓をついた。
「話がそれだけならもう行くわ。それと、忘れていないでしょうね? 各所のおやつを持ち出してあんたにあげているのは、誰だったのか。それがなくなってもいいの?」
Advertisement
「お、おやつを持ち出して脅すなんて卑怯よ!」
「そんなことで脅されるのはあなたぐらいのものよ。それじゃ、わたくしは忙しいからもう行くわね」
「あっ、ちょっと!」
まだ文句を言いたそうなショコラを殘して、わたくしはさっさと踵を返した。
今、わたくしは無事國王を掌握し、後はマクシミリアンと王宮の崩壊を待つだけ。
だというのに、わたくしは無にイライラしていた。今も急にひとりになりたくなって、あてもなく王宮をさ迷い歩いていたのよ。
どこへ向かうかもわからないまま角を曲がろうとして、急にぐいっと腕を引かれる。
かと思うと、わたくしは廊下の壁にドンッと押し付けられた。
「っ誰!?」
驚きと怒りでカッと目を見開くと、至近距離にあったのはハロルドの顔だ。
「……っ何の用?」
こちらをまっすぐ貫いてくる、鋭い赤茶の瞳。
なんとなく目を合わせられなくて、わたくしはパッと顔を逸らした。
「何の用、じゃねえ。お前もわかってるんだろう。自分が何をやっているのか」
「ふん。國王陛下をたぶらかしたこと? だってしょうがないじゃない。相手は國王なのよ? わたくしじゃなくても、彼に見初められたいと思っている令嬢なんて腐るほどいるわ。手段が悪くたって、わたくしはわたくしの希をかなえただけ――」
「じゃあなんで、お前はそんなに苦しそうな顔をしてるんだ?」
「っ……!」
指摘されて、わたくしはを噛んだ。
「廚房に來てつまみ食いをしているお前は、なくともこんな苦しそうな顔はしていなかったぞ。俺には辛辣で、でも食べには目を輝かせて。俺が知っているリリアンという人間は、そんなやつだったが?」
「……なら、あなたの見る目がないのよ。殘念ながらこっちがわたくしの本」
はん、と鼻で笑うと、ハロルドが目を細めた。
「そうは思わないな。……さてはお前、何か隠しているだろ? 実は実家からゆすられていて、金が必要とか? あるいはユーリをたぶらかせと、誰かに脅されているとか?」
わたくしは驚いて目を見開いた。
この男……! 核心とは言えなくても、絶妙に近いラインを當ててくるわね……!
「言え。言わないなら俺は自分で調べに行くぞ。こう見えて意外と人脈はあるんだ。何せ、王宮中の胃袋を握っているからな」
わたくしはギリッとを噛んだ。
この男は、わたくしの正を知る聖アイとだって仲がいいのだ。聞かれたらあのくて正直な聖のことだ。わたくしの正を、喋ってしまうかもしれない。
……かくなる上は。
「なら、教えてあげるわ」
「本當か?」
「本當よ。だから私の目をしっかり見て。それが話を聞く人の態度でしょう?」
「わかった」
短い返事とともに、ぎろりとつり上がった三白眼の、赤茶の瞳がじっとわたくしを見つめてくる。人相の悪いこの男は、きっとにはモテないでしょうね。
でも……わたくしは嫌いじゃなかったのよ。
「ごめんね、ハロルド。悪く思わないでちょうだい」
言いながら、わたくしのがつきりと痛む。
ああ……本當は、この男は、この男だけは……手を出したくなかったの……。
でも、わたくしは、サキュバス。
次の瞬間、わたくしはカッと目を見開いた。
國王ユーリの時同様、ハロルドにも一気に大量の魔力を流し込んでいく。
ただし今は幻ではなく、魅了の方だ。
「っ!? リリアン、お前……!!!」
ハロルドの言葉はそれ以上続かなかった。
すぐに彼の瞳からが消え失せ、ずるずるとその場にしゃがみこむ。
そんな彼を、わたくしはトンッと押した。ハロルドは人形のようにいともあっけなく倒れ、王宮の廊下に仰向けになる。その上に、わたくしはまたがった。
顔を近づけると、わたくしの長いピンクブロンドがハロルドの顔の周りに垂れ下がる。
彼の瞳は、虛ろだった。
強い魅了魔法をかけた場合、人によっては本能のままに生きる獣となり果て、その場でわたくしに襲い掛かってくるような輩もいる。
なのに、ハロルドはぴくりともその場をかなかったの。
「あなたって、そんな見た目をしているくせに、意外と紳士だったのね……」
わたくしは自嘲するように、くっとを歪めて笑った。
わたくしの言葉が、もう彼には屆かないことを知りながら。
\おやつで釣られちゃうショコラ/
次回更新は通常通り火曜日です!
【書籍化】俺は冒険者ギルドの悪徳ギルドマスター~無駄な人材を適材適所に追放してるだけなのに、なぜかめちゃくちゃ感謝されている件「なに?今更ギルドに戻ってきたいだと?まだ早い、君はそこで頑張れるはずだ」
※書籍版2巻でます! 10/15に、gaノベル様から発売! コミカライズもマンガup で決定! 主人公アクトには、人の持つ隠された才能を見抜き、育てる才能があった。 しかしそれに気づかない無知なギルドマスターによって追放されてしまう。 數年後、アクトは自分のギルド【天與の原石】を作り、ギルドマスターの地位についていた。 彼はギルド構成員たちを次から次へと追放していく。 「鍛冶スキルなど冒険者ギルドに不要だ。出ていけ。鍛冶師ギルドの副支部長のポストを用意しておいたから、そこでせいぜい頑張るんだな」 「ありがとうございます! この御恩は忘れません!」 「(なんでこいつ感謝してるんだ?)」 【天與の原石】は、自分の秘めた才能に気づかず、理不盡に追放されてしまった弱者たちを集めたギルドだった。 アクトは彼らを育成し、弱者でなくなった彼らにふさわしい職場を用意してから、追放していたのだ。 しかしやっぱり新しい職場よりも、アクトのギルドのほうが良いといって、出て行った者たちが次から次へと戻ってこようとする。 「今更帰ってきたいだと? まだ早い。おまえ達はまだそこで頑張れる」 アクトは元ギルドメンバーたちを時に勵まし、時に彼らの新生活を邪魔するくそ上司たちに制裁を與えて行く。 弱者を救済し、さらにアフターケアも抜群のアクトのギルドは、より大きく成長していくのだった。
8 184【書籍化コミカライズ】死に戻り令嬢の仮初め結婚~二度目の人生は生真面目將軍と星獣もふもふ~
★書籍化&コミカライズ★ 侯爵家の養女セレストは星獣使いという特別な存在。 けれど周囲から疎まれ、大切な星獣を奪われたあげく、偽物だったと斷罪され殺されてしまう。 目覚めるとなぜか十歳に戻っていた。もう搾取されるだけの人生はごめんだと、家を出る方法を模索する。未成年の貴族の令嬢が家の支配から逃れる方法――それは結婚だった――。 死に戻り前の記憶から、まもなく國の英雄であるフィル・ヘーゼルダインとの縁談が持ち上がることがわかっていた。十歳のセレストと立派な軍人であるフィル。一度目の世界で、不釣り合いな二人の縁談は成立しなかった。 二度目の世界。セレストは絶望的な未來を変えるために、フィルとの結婚を望み困惑する彼を説得することに……。 死に戻り令嬢×ツッコミ屬性の將軍。仮初め結婚からはじまるやり直しもふもふファンタジーです。 ※カクヨムにも掲載。 ※サブタイトルが少しだけ変わりました。
8 111僕の妹は〇〇ですが何か問題ありますか?
人と妖怪が共存するようになっても思春期特有の悩みは存在する。 僕の妹もその一人だが、僕はなんとか妹の力になってあげたい。 これは半人半鬼かつ無自覚のシスコンである少年が高校生活や家庭のゴタゴタ、戀愛、時折起きる事件などを通して成長していく物語である。
8 196氷炎騎士の騎校生活(スクールライフ)
最強の騎士の父と最強の魔術師の母との間に生まれた、最強の『固有魔法(オウン)』をもつ 東山 秋風は 「この世で俺が1番強い」と思い込んでいた。しかし、両親にすすめられ入學した ”國立騎魔士アカデミー” でその現実は覆される。 主人公の成長を描いた、學園戀愛ファンタジー⁈ 初投稿なんで、誤字とか多いかもです ご了承ください
8 194光輝の一等星
100年前の核戦爭により、人類が地下で暮らさなければならなくなった世界。幼くして親をなくした少女、飛鷲涼は七夕の日、琴織聖と名乗る少女と出合い、地下世界の、そして、涼自身の隠された血統の秘密に向き合っていく。涼を結びつける宿命の糸は一體どこに繋がっているのか……? 失うものが多すぎる世界の中で、傷つきながらも明日に向かって輝き続ける少年少女たちの物語。 (注意點)①最新話以外は管理を簡単にするため、まとめているので、1話がかなり長くなっている作品です。長すぎ嫌という人は最新の幕から読んでいただければ良いかと(一応、気を付けて書いていますが、話のなかの用語や狀況が多少わかりにくいかもしれません)。 ②視點の変更が幕によって変わります。 ③幕によりますが、男性視點が出てきます。
8 177こんにちは!この世界の勇者を倒しに來ました!〜『世界』を旅する転生旅行記〜
ある日、トラックに轢かれたワタルは、どうみても悪魔な自稱女神に異世界の勇者を倒す使命を任されました!? コメントや、いいね。もしくはお気に入り登録していただけると、制作の勵みになり、作者が小躍りします。ぜひよろしくお願いします!
8 189