《【書籍化・コミカライズ】誰にもされなかった醜穢令嬢が幸せになるまで〜嫁ぎ先は暴公爵と聞いていたのですが、実は優しく誠実なお方で気がつくと溺されていました〜【二章完】》第77話 書庫で読み読み

晝食を終えてから一息つくこともなく、アメリアは書庫に足を運んだ。

屋敷の書庫は広大で、床から天井まで聳え立った本棚がいくつも並び、多種多様な本が整然と並べられている。

ふわりと漂う紙とインクの匂いが、アメリアは何気に気にっていた。

その中で、アメリアが最も頻繁に訪れる場所は學的な書籍が揃う場所。

特に植に関する書籍がずらりと並んだエリアが、アメリアのお気にりだった。

「わっ、これも見たことない本……」

記憶にない書籍のタイトルに、アメリアの手が思わず吸い寄せられる。

初めて書庫を訪れた時に比べて、蔵書されている本の數は明らかに増えていた。

ラブなアメリアのために、ローガンが新たにたくさんの本を仕れてくれたのだ。

そんなローガンの気遣いによって蔵書された數々の本の中から、『緑の辭典』というタイトルの本を手に取る。

ふんふーん♪ と鼻歌を奏でつつ、書庫に設置された椅子に座ってアメリアは本を開く。

『緑の辭典』には、様々な植の絵と共にその生態や質、用途が詳細に記されていた。

「ふむふむ……『カミツレ』はとして相が良い……あと、茶葉としての利用も出來るんだ。乾燥させるだけで長期間利用可能なんて、使い勝手もなかなかいいわね……」

一文字一文字吸い込むようにしてアメリアは知識を摂取していく。

數々の植の有用や保存方法などの知識が、彼の頭の中で新たな形を作っていく。

昨日ローガンと話したこともあって、アメリアの読書は盛り上がっていた。

自分の植の知識を活かす機會がやってくる時に備えて、しでも勉強しようという心がけであった。

気がつくと、のめり込むように本の世界にっていった。

そうして、どれくらい経っただろうか。

「アメリア様、そろそろ休憩しませんか?」

本にが空く勢いで読み込むアメリアに、シルフィが聲を掛ける。

細い眉をし下げて、シルフィは心配そうな表をしていた。

「ごめん、ちょっと待ってね。今いいところなの」

「もうかれこれ3時間も続けて読んでいるのですが」

「えっ、そんなに!?」

現実に引き戻されたアメリアがギョッとした表になる。

「確かに言われてみるとは乾いたわね……も、心なしかカサついているような……」

「せめて水だけでも飲んでください。そのうち水癥狀で倒れないかと、こっちは心配でなりません」

「うう……わかったわ……」

渋々、アメリアは本に栞を挾んで閉じる。

すかさず、シルフィがコップをテーブルに置いてくれた。

「ありがとう」

コップに注がれた水をにくぴくぴ流し込むと、しおしおだった全が瑞々しく潤っていく。

ホッと、アメリアは息をついた。

「ぷはあ、生き返る……」

「もう一杯飲まれますか?」

「ええ、お願い」

再びくぴくぴと水を流し込むアメリアはシルフィは言う。

「熱中するのはいいですが、詰めし過ぎないようにお願いしますね」

「わ、わかった、気をつける。ごめんね、心配をかけて」

「いいえ、お気になさらず。むしろ、良い傾向なのではないですか?

「良い傾向?」

「ええ。今のアメリア様は生き生きしていて、とても楽しく見えます」

「うん、そうね……」

コップをテーブルに置いて、ふふっと笑みを溢すアメリア。

「楽しいのは、間違いないわ」

(私は植も、植を調合するのも、薬を作るのも好き……)

その好きなことが、誰かの役に立てるのであれば俄然やる気が湧いてくる。

充実、とでも言うのだろうか。

中に力が満ちているような、今までの人生で抱いたことのない覚をアメリアは抱いていた。

「さて、じゃあまた読書に戻るわ」

「行ってらっしゃいませ。今度は干からびないように気をつけてくださいね」

「流石にまた同じことは……あるかもしれないから、頃合いを見て聲をかけてちょうだい」

「ですよね、知ってました」

シルフィが苦笑を浮かべたその時。

「……珍しいな、書庫に人がいるのは」

聞き慣れない、低い男の聲。

振り向くと、り口に佇む一人の男の姿が視界にった。

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