《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》156話 化
「……なんだ、お前」
「ろうどうはきらい、あそぶのもそうでもない、本當は生まれたくもなかった」
ふわふわ、ふわふわ。
浮かぶのは、三日月を思わせる頭部。
首はなく、ただ片耳だけの頭が浮いている。
「いきたくない、でもしにたくない、かといって長く生きたいわけでもない」
もう、味山でもないナニカが、耳から聲を絞り出す。
「おれ、みみーーああ、あじやま、あじやまじゃない、
でも、ああ、おれーーさく、ーー」
それでも、そのナニカは、最後の一線を越えることはない。
「まいにちまいにち、うっすらしにたい、かわりばえのないろうどう、なんの為に働いてるか分からない日々、やりたくもないことを行きたくもない場所にまいにちまいにちきまったじかんできまったばしょで、ちくたくちくたく」
完された自我が、耳の化による神汚染を食い止める。
「じんせいにいみはない、えらばれなかった、とくべつじゃないにんげんにじゆうはない。だきょうとあきらめを繰り返してすり減らして、毎日毎日、クソみたいな日々を送るだけ」
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その生きにもはや脳みそはない。
人間の証明を行うは、耳のに溶かされ盡くした。
なのに、消えない。
「いきたくない、いきたくない、生きていたくない!! 死にたい死にたい、それでも、死にたくない! ああ、ぎゃははは、繰り返し、繰り返し! その繰り返し! あああああ、気分が悪い!! 生きるってのは本當に気分が悪いイイイイイイイイイイイイイイ!!」
「なに、これ……」
神達が押し黙る。
その反応はまるで、異様な怪に初めて出會った人間のそれ。
「わるい、わるい、悪い、気分が悪い、人生が嫌いで死にそうだ。生きていたくない、良い事なんて一つもない、生きてて良かったなんてずっとそう思えてなきゃ意味がない!!」
ぐるぐるぐるぐる、ぽっかり浮いたお耳が廻る。
ぶるぶる、を震わせ、耳を震わせ。
「でも、そんな人生でもひとつ"たのしみ"があるのが大切だ」
「え」
「ひとりめ」
スカイ・ルーンの顔をした神、それの首がから外れた。
風が吹く、その生きが移した、それだけで大気が揺れ、風が渦巻く。
なんのことはない、その生きが、耳の化が神を殺した。
「おとが、ききたいいいい、おと、あれ、おれ、あは、ぎゃははは、みみ、おれ、みみ、ぎゃははははは!!」
どろりと溶けるスカイ・ルーンの顔、本來の神の顔が顕になる。
驚愕と恐れが混じったその表はどこまでも人間臭く。
「ぶっころすって、たのしい」
ぱしゃ。
化の手の中での神の首がけた。
「あ、ああ……神が、神が消えていく……」
「ペルセポネ……?」
立場がゆっくり変わっていく。
人類に絶と滅びをもたらせたその存在達の絶頂の時は予想よりも早く。
「ああ、あああああ、みんな、みーんなしんじまった。きさきもくらーくもぐれんも、みんな! いなくなった! なのに、みろよ、ギャハハ、ギャハハハハハハハハハハ! おれ、もう笑えちまってる!」
なにが楽しいのだろう。
この男の唯一の楔、仲間。そう呼べる存在はもういない。
全部失って、全部なくした男はそれでも嗤う。
「へいき、へいき、ああ、でも、なんだ、これ、うっすら死にてえ。ぎゃはは、ああ、でも、なんて、じゆう!! なんでも出來る、そんな気がする。び聲、もっと、泣き聲を、もっと」
ぬらり。
化が、殘りの神を、ニホンを滅ぼし盡くした神2人を見つめて。
「なあ、おまえらはどんなこえでないてくれるんだ?」
「……糸紡ぎ、神持ちを呼び戻せ」
「あ、は……いや、そうしたいのはやまやまだけど……」
「余が、時を稼ぐ……! 早くしろ! 見ただろ! もう既に、神は意味をしていない! こいつ1人で、世界の法則がおかしくなってーー」
ぶつん。
神、殘った2人のうち青年の右腕が吹き飛ぶ。
化の攻撃、だがその生きはその場からいてすらいない。
「あは、あは、アハッ!! できた、できた、できぎゃはははは! おんぱこうげき!」
人差し指を親指で抑え、弾くような作。
ただそれだけで
「みみてっぽう」
「は、やーー」
また、神の腕が飛ぶ。
既に神達は理解した。立場はひっくり返った。
自分達が人類を遊び殺したように、今度はーー。
「いろいろいろいろいろ出來る!! やってみたかった事全部出來る!! アハ、アハッ、ギャハハハハ」
「ひっ」
「化けが!!」
笑う、微笑う、嗤う。
瓦礫の街、神の前に降り立つのは人という名の最悪の怪。
「もう誰もいない、だから、だからさあ!! 我慢する事ァ、もう無いよなァ!」
その男は、他人を必要としない。
その男は、1人で完している。
その男は決して、1人になるべきじゃなかった。
TIPS€ 警告 複數の神種、いや、新たな"霊長類"が多數出現
「……貴様は、放たれるのが遅すぎた! 怪よ! 貴様はもう人類ではない! この星の新たな支配者は我々神! 人の時代は終わった! これからは神の時代なのだ!」
「権能接続……! 頼む、どんな神話系の神でも良い、とにかく強くて、戦える奴……!」
神種。
ダンジョンというフィルターを通じ帰還した古い星の支配者達は、ホモ・サピエンスを駆逐した。
だが、やり殘しがあった。
備えておくべきだった。
數多の神がその來訪を予言していたというのに。
「よおよおよおよお、どしたい、二方。そんなこの世の終わりの顔をして。釈迦の掌を見た時のオイラよりもひっでえ顔だなァイ」
「斉天大聖……お前、深淵に潛っていたんじゃ」
「はやいね、孫さん……」
神が集まってくる。
初めからその場にいたように、奇妙な出たちの男が、ボロボロの神達と並ぶ。
「いやなに、ちょいとばかし予がしてね。無くした頭のっかが締め付けられるような嫌な覚がしたわけさァ。んでもって、耳長どもと殺し合うより、こっちのが面白そうだと思ったらァ、なんだい、ありゃ、見た事ねえよ、あんな化け」
巨軀の丈夫、野生的な風貌も金のあしらいを施した鎧にを包んだそれが、耳の化を眺めて笑う。
「あは、あは、あは、誰だあ、お前え、あああ別にどうでもいいやァ、全部殺すから」
「おいおいおいおい、殺意高いなァイ。飴舐めて……いって!! えええ……噓だろォ、飴、割れちまったァ……桃の飴……」
「斉天大聖……舐めてかかるな、ペルセポネも北歐のも、アレにやられた」
「心配すんなァイ。こう見えてオイラ、古今東西の魑魅魍魎と殺し合いまくった男さァイ。ーー見りゃ分かる、アレは強いわ」
がちゃん。
がちゃん。
がちゃん。
「ということできちんと、援軍を連れてきたァヨ。世界を守ってやんねえとなァイ」
扉が生まれる。
赤い空を埋め盡くすような數の扉。
ありとあらゆる神話系から數多の神が現れる。
世界の全域から人間を刈り盡くした新たなる星の支配者達が。
「ッ、おまえら……」
「いずれは覇を競う相手なれど、此度は別よ。深淵の耳長狩りに赴いた神が戻るまでは、我らが相手になろう」
輝くもの、眩いもの、しいもの。
空を埋め盡くす神話の存在達が、彼らの世界を脅かす異分子を見下ろして。
「怪よ!! 我らの世界を脅かす害獣よ! 滅び「蝸牛」
ボボボボボボボボボボボボボボ。
破裂、捩れ、散。
瞬きの後、煙と変わる神達。
「へっ」
びよよよん、びよよよん。
その化、化けの耳から引き摺り出された渦を巻いたの管。
それが鞭のように振り回され、神達を屠った。
「なかまがたくさんいていいなぁ」
賢きヒトが滅びる時、かのものは現れる。
最初は極東の王が滅する時、放たれる最悪の銃弾として。
神の勝利は、それの來訪を避けることはできない。
「あああ、でも、おまえらどこまでいっても、怪種だろ? 神とかなんとか言っても、怪なんだろ?」
どのような形、どのような方法で人を滅ぼしても、ソレは必ず生き殘る。
そして、全ての気にらないものを焼き盡くすだろう。
「お前……本當に、なんなんだ……」
「みみのけしん。いやーー」
耳はついにはその男を完全に飲み込む事は出來なかった。
アクセルを踏みに踏んだ結果でも、男の全てを塗りつぶす事は出來なかった。
「たんさくしゃだ」
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書籍版の2巻発売中です、WEB更新のモチベになるので是非お買い求めください!
書籍版だけのルート展開になりつつキャラはそのままなので楽しんで貰えると思います。
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