《ウイルター 英雄列伝 英雄の座と神代巫342.黒幕と新しい影

心苗(コディセミット)たちの治療や取り調べが始まったちょうどその頃、一臺の飛空船が空を飛んでいた。薄い楕円形の船に、四つのエンジンを後ろにばしたその飛空船は、鏡のように眼下を覆うオレンジの雲海を映している。それは、20人ほどを乗せて飛行することができる、ダイラウヌスの武裝船艦だった。

飛空船の中にはアーリムの姿があった。彼は今、他の案件を解決し、イトマーラへと帰る道中にある。

アーリムは船の個室でソファーにを委ね、ワイングラスをくゆらせながら、ゴールドスカラベの実況投影を見ていた。そこで彼は、柱の間のり口での石像たちや、柱の間部での聖霊との戦い、そしてジェニファーが蘇(ソ)に逮捕されるまでの全てを把握した。

「君が言ったとおり、スカラベをバレーヌの服に付けておいたおかげで、面白いものが見られた」

満足げに語るアーリムのそばには、一人のがいた。彼はアーリムと同じソファーに座り、飼い貓のように彼の元にを寄せている。

二人はもちろん、遼介(りょうすけ)がのぞみに依頼した任務についても聞いた。

「ラメルス先生が手を下すよりも前に、未來の『尖兵(スカウト)』がバラしてしまったんですね?」

十代後半という見た目のは、「くるりんぱ」にアレンジを加えた亜麻のローテールをなびかせ、足を組んでいる。肩や腰、太ももが覗くセクシーなドレスが何とも艶やかだ。

「逃がした『尖兵』の連れてきた援軍は予想外だった。まさか、未來の英雄・野(みつの)和真の子どもに目を付けられるとはね」

は切ない表で、アーリムを上目遣いに見た。

「そう言うわりに、嬉しそうね、先生?」

「英雄と関われるなど、とんでもない栄だからね」

「でも、これからどうすればいい?プランは続けるの?」

「ああ、言ったとおりに続けてくれ」

「でも……」

「宿命だよ。私はやるべき役目を果たす、何があろうとも」

「分かったわ、仰せのままに。それで、あの後輩はどうするの?」

投影された映像には、のぞみの深刻な表が映し出されている。アーリムは悪意ある笑みを浮かべた。

「ふふ、構わない。カンザキノゾミ、彼には最高のステージを用意する。命が盡きるまで、踴り続けてもらおう」

「先生ったら、意地悪ね」

は嬉しげに頬を赤く染め、妖艶な甘い笑みをこぼした。そしてご褒でも求めるように、両手をアーリムの首に絡めると、そっとを近付けた。

飛空船はさらに飛び進み、雲海の中へと飛び込んでいく。

その晩、フミンモントル學院の研究室で、ヘルミナの変死が発見された。

    人が読んでいる<ウイルター 英雄列伝 英雄の座と神代巫女>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください