《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》157話 お前もかよ

……

「あ、えっ」

「ひゃぶ」

「父上!! そんなバカな……! なゔえっ!!」

「権能、カーリーのーーあべし」

毆る、蹴る、叩きつける。

その化けくたびに、神が1人死んでいく。

「アハハハハハハ、ギャハハハハハハハハハ!! なんだ、なんだァ!! やる気あんのか、テメェらァ!! ーーあ。 たの、たの、たのたのしいいいいいいいい!! ころすのってすごくいいいいいいいい」

地獄に限りなく近い場所は、ここだ。

人類を遊び殺した神達が、屠られ続ける。

空を埋め盡くすように、現れる扉、扉、扉。

そこから現れるは、數多の神種、この星の新たな霊長。

「ニホン! まだ決著がついていないとは、嘆かわしい! この がちゅん」

「悪い、セリフの途中だったか? ーーイヒヒヒヒヒヒ、とうぶはそん、いいせっけん」

扉から現れた瞬間、1人の神が化の拳骨を頭部に食らう。

縦に潰れる神、青と赤のが破裂する。

が笑う。

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味山としての言葉と、耳としての言葉が繰り返される奇妙な口調。

もう、この化けを止めるはない。

「お、い、おいおい……こりゃァ、なんの悪い夢、だァイ……」

「あれ、まだ生きてたのか。ーーぺりぺり、ぺりぺり。よいよろい、ドラムにさせてくれよ、エイトビートをきざもうぜきょうだい」

「あ……」

空に浮かぶ神達を始末する前に、耳の化が見たのは足元に這いつくばる神達。

その中で、1人、まだ息がある奴がいた。

ドコドコドコドンドンドンドンドン!!

ドンドンドンパッ、ドンドンドンパッ、ドンドンドンパッ!!

倒れ伏したまま、聖天大聖と呼ばれていた神に化の拳の嵐が振り続ける。

「が、ハッ」

「ドラムス! ロック! ああはははは!!!」

「ギャッ、やめ、もう、やべっ!! でっ!! あ、まて、待て、渉、こうしょうしよゔ!!」

「OH……? 初めてのパターンだな、お話してくれるのか?」

「これ、これ……やるから、やべてぐれ、し割れてるけど、凄い味い"飴"なんだ……」

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「飴……?」

その神が、息も絶え絶えに差し出してきたのは、桃に輝く花の形をした飴。

棒に刺さっている。

「お前、わかるよお、定命の者だろォ……オイラも昔はそうだった……気持ちわかるよお、老いとか、死とか怖いよなァイ。それを舐めればひと舐めで10年、いや、100年は壽命がさあ」

「……」

の飴。

耳の化が、差し出されるそれをじっと見つめて。

TIPS€ 神造"桃娘飴"

TIPS€ 神の殘り滓、桃娘を材料に作られた桃の飴。人のの為に造られた彼達は、今度は神の愉しみの為に消耗される。彼達はきっと、こうして誰かに奪われ続ける為に生まれてきたのだろう。

気の毒なことだ。飴にはうっすら、文字が刻まれている、"雨桐"、材料の、名前だろうか

「……………………………」

「へへっ、ほら、遠慮する事ァねえよお、すごおく、甘くて暖かくてーーあえ?」

だん。

飴を差し出す神の腕がくるくるくる、弾け飛ぶ。

くるくるくる。

落ちていく桃の飴を、耳の化が信じられないほど優しい手つきでけ止めて。

「………」

はひとつだけを今、決めた。

目の前のこのの塊を。

「ーーギャァアアアアアアア!? なん、なんで、なんで、俺のうでー、えっ」

出來るだけ、苦しめて殺そうと。

「」

ぶちり。

ぶ神の口から何かが引きちぎられた。

舌だ。

れることすらせず、耳の化が神から舌を抜く。

「もっとおおきく、もっと高く、もっとたくさん」

「あ、え」

「ひめいをきかせろ」

、暴力。

人間の持つ最もシンプルで、最も単純な力が神を襲う。

「あぎゃ……待て」

ぐ、ぐぐ。

ボロボロの巨躰、首っこを摑んで化が神を立たせる。

「待て、待て……本當に待てよォ、オイラ、ここからなんだァイ、ここからが楽しくーーあっ」

ずぽ。

の腕が神の腹を貫く。

ずふり、そこから抜き出されるのは長い長い、臓ーー。

「綱引きしようぜーーなわとびでも、いいよ」

「あ、あ、アアアアアアアアアアア!!?」

酷すぎる死に方をする同胞を前に、今この場に現れたばかりの神達はけない。

「きかせろ、聞かせろ、響かせろ、ーーテメェの汚ねえび聲で、せめて贖え」

「ア、ア、アアアアアアアアアアアアア!?」

臓を引き出され、それを振り回される。

叩きつけ、捻り出す。

強い生命力が、神に安易な死を許さない。

桃の飴をなぶった神は、他の神と比べて長い時間苦しめられて。

「あああああ……なんだよ、クソ。全部、本當に全部死んじまってるじゃあねえか。なんでだ? どうして? だれのせいだ?」

殺意と怒りが皮を燃え上がらせる。

首の斷面からのような火がれ出してゆく。

「ああ……お前らのせいじゃんーー殺せるやつがたくさんうれしいな」

耳の化の頭上、空に浮くは數多の神

「斉天大聖が……あんな、おもちゃのように……?」

「深淵の耳長どもよりも、強い……?」

「なんだ、あれは。あんな生きが、いるのか」

「だ。だから、言ったじゃん! 予言部の連中がずっと言ってた! ニホンの王が放つ最後の弾丸! もっと慎重に滅ぼすべきだった! 備えておくべきだった、予言で襲來は予知されていたのに!」

慄く神達が、1人1人また死んでいく。

人を滅ぼし、人にり代わった上位種達。

星の霊長へと返り咲いた彼らは、最後の最期にそれと出會う。

「あ、ギャ、ぎゃははは、ぎゃははははははははは、そうか、これ、こういう風に使うのか! 耳の!! 耳の大力! 耳砲! 耳の……なんにしようかなァ!!」

にたかる蟻のように耳の化へと殺到する神達、だがその全てが殺されていく。

「あ、ぎゃ――」

指を弾くだけで神の首が飛ぶ。

「なんで、死なない……!? 腹を貫いたのに、あ」

神話に語られる武ですら、その命に屆かない。

「やめ、やめ――笑うな、笑っ」

その存在の嗤い聲を誰も止める事は出來ない。

神の首を右手に、神の臓を左手で振り回し、神のでそのに浴びて。

「あああああああ、クソ耳の野郎、悪くないシュミだ――だろう? いっちょ前に霊長を名乗る小賢しい奴らのび聲は、DNAに響くよな」

がちゃん、がちゃん。

耳の化が空を仰ぎ見る。

おびただしい數の扉、扉、扉。

「忌々しい」

「今更出てきやがって」

「あきらめろ、人間は皆死んだ」

「意味がない、お前の戦いには意味などない。もう誰も帰らない」

翼をはやした神が化を諭す。

意味がない、と。

抵抗も戦いも、すべては終わった事なのだから。

「人類の為の戦いは終わった、お前はやってくるのが遅すぎ――」

「あは、あはははははははははははははははははははっはははははははは、ぎゃはははっはハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハは!!」

神の言葉を腹を抱えて響かせる化の笑い聲がかき消した。

「意味!! 意味、いみいみいみいみみみみみみみみみみみみみみみ!! ぎゃははハハハッハハハハハ!! いるかよ! そんなモン!!」

の材料になった只の人の魂が、本気で嗤っていた。

「お前らを殺すのに、そんなモンいるわけねえ、何かの為に今、俺がこんな事してると思ってんのか!?」

「愚かな。定命の者の言う復讐のためか? 想像しろ、復讐などくだらないものを貴様の同胞がむとでも?」

「いや、多分あいつらは復讐とかノリノリでむタイプだと思うわ」

急にすんっとした化

ふわふわ浮かぶ耳頭を、こんこんと叩いた後。

「お前らを殺すのはな、それなりに楽しいからだ。お前らのび聲だけは悪くない」

の顔がにやァぁァァと歪む。

種達が、本能に刻まれた嫌悪に顔をゆがめた。

彼らはみな、神話の存在。

それはつまり、すでに終わった存在でもあるという事。

全てが一度は経験している記憶――滅びを化に見て。

「行くぞ、同胞」

が剣を構える。

「人代は終わり、これより先は神代の再來。星の資源を食い盡くす事しかできぬ劣等種を駆除した、これが、最後の害獣駆除だ」

決意に満ちた目、その目は新たな星の霊長としての矜持、そして――。

「これは世界を救う戦いである」

輝く貌、しい、正しい世界の住人達が誇りを口にする。

「ドブ川の口臭をまき散らす割に、言う事ァ、かっこいいなァ! じゃあ、俺は、これは――」

歪む貌、恐ろしき異形の化けが心を口にして

「世界をぶっ殺す戦いだ、足掻いて喚いて、死んでくれ」

神と化が、戦う。

その決著に數分もかからない。

がちゃり、がちゃり、空の輝く時計盤、針がき続ける。

そして、び聲が止んだ後。

「……」

そこは骸の山。

言わぬ新たなる星の支配者達の骸の山。

ふわふわ浮いた片耳の頭部、首のないが骸の山の上に座り込む。

「あー、やっちまったなァ……」

もう味山でも、耳でもない。

ただ、怪を殺すだけの探索者がぼやく。

「俺、なんの為に戦ってたんだっけ……」

空を見る、巨大な時計盤が、針をかす。

それももう、なんの為にあったものか分からない。

がちゃん、がちゃん。

大きな扉が、空に浮いている。

「」

「」

TIPS€ 神持ちの神種の存在を確認

「ああ、まだいるなァ」

巨大な神

神話に語られるその姿から耗せず、この人代に奪われる事なく、その存在をそのままに殘してきた者。

「ああ、可哀そうな子たち、せっかく神代が來たのに死んじゃったのね」

「くすくす、ああ、かわいそう、かわいそう。でも、これが相手なら仕方ないね」

巨大な顔だ。

扉の向こう側からこっちを見ている。

もしも、男が未だ化と化していなければ、この時點でその凡人の存在は神の一瞥だけで溶け來ていただろう。

「本の神様……どんな汚い聲で泣きぶのかなあ」

は思う。

良かったと。ここに、もう名前も思い出せない奴らがいなくてよかったと。

「疲れた……もう、全部殺そう」

目に映る全てがうざったい、殺したくてこわしたくて仕方ない。

今がきっと一番強い。

が、その衝に任せて立つ。

今また、すべてを殺そうと――。

「あ」

「あ……噓、まだ、生きて……」

「あ?」

扉の向こう側で、その巨大なの顔が固まった。

その視線は、化へ向いたものでなくて――。

「ハァイ、お嬢さん達、ご機嫌いかが?」

「あ――」

「やめッ――」

TIPS€ 神消滅

轟音と閃

巨大な扉の向こう側で、音と

嵐と雷がうごめいて。

「あ……マジか」

思い出も記憶も耳のに溶け始めた化の頭で答え合わせが出來た。

そりゃそうだ。

アイツら。名前ももう思い出せない、けどものすごく大切だったはずの連中は皆死んだ。

でも、そう、コイツがそう簡単に死ぬわけがなかった。

「ストーム・ルーラ―、ストーム・ルーラー、ストーム・ルーラーストームストームストームストームすとーむすとーむすとーむすとーむ……」

壊れたオルゴールのように繰り返される言葉。

巨大な扉の奧から風と雨と雷がれ出している。

嵐だ。

嵐が、神を一瞬で屠った。

TIPS€ アレフチームを目の前で失った瞬間、彼は完した

TIPS€ 彼は英雄として神殺しの道を歩いた、神を殺す英雄など神と何が違うのか

TIPS€ 神種――

「あら……とても、とても懐かしい香りがする、探索者、かしら?、”わたし”もそうなの」

もう、記憶の中にある彼の姿はそこにはない。

金の髪も蒼い瞳もどこにも。

「ねえ、わたしを見て。ねえ、わたし、探しをしているの。でも不思議ね、とても大切だったのに、今はもうそれが思い出せないの」

白く長い髪、真っ白の、黒目だけの瞳。神々しいと表現するほかない均整のとれた

その背中に羽の如き、嵐を背負った神が化の前に現れる。

「”わたし”、アレタ・アシュフィールド。……懐かしい香りのたんさくしゃさん、あなたの名前は?」

アレフチームは、そして、その化の材料になった男は彼を一人にしてしまった。

ひとりになった彼はそして、たどり著いてしまった。

「……お前もかよ、アシュフィールド」

TISP€ 神種・アレタ・アシュフィールド、顕現

読んで頂きありがとうございます!ブクマして是非続きをご覧ください!

また大変お手數おかけしますが、凡人探索者シリーズが今年の"このラノベがすごい大賞2024"の投票対象になっています。

かなりめんどいのは重々承知ですが、宜しければぜひ投票をお願いします! ありがとうございます。

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