……とりあえず今は自分の居場所からだな。

今度こそ自分がどこにいるのかを確認するため『天眼』の高度を下げていく。

建がどれか分からないので、徐々に近づいて行くしか方法がない。

それで俺が捕らえられているのは、先ほどの街道からかなり離れた王都西南部に役所の様な建造。

焦げ茶をベースとした壁、窓は左右対稱に一つしかなく、一階建てほどの高さの建。

しかし一階建てといっても高さ三メートルほどでその上には何もない。

側から観れば天井も平らに整えられており、四角い家、が白ければ豆腐だ。

周りの家々よりも平たく目立つ造りとなっている。

本當にどこだ。ここは。

自分がいる場所は分かったけど、そこがどこなのかは分からない。というか知らない。

王都西南部の建。

これだけだが、これだけで良い。

王都なら帰るのも楽だ。

上空に出した『天眼』を家の方に向ける。

「……屆かないふぉぼぉはなひよなふぉあ」

しかし途中で距離がばせなくなる。

『天眼』はあくまで上空に『千里眼』を飛ばしているだけなので、その距離は『千里眼』の限界まで。

今の『千里眼』が屆くのは一キロ。

『天眼』であれば多屆かなくても上空から見ている分広く見える。

それでもこの建がある王都南部から自宅のある北西まで約二十キロ前後。

俺の家は西門近くだから多短くなっているが、それでも二十分の一。離れすぎている。

上空からでは家の様子を詳しく見ることは出來ない。

それにユキナたちが気になる。

憶えている限りでは、俺が連れ出された後に別ルートで移送させられていた。

ルートは南部方面。つまりこっち側。

なら路上に漂っている霧で皆を見つけるか？

いや、さっき見た限りでも二、三百人は路上にいた。多時間が経過していても霧は殘るからその前にそこにいた人の分もある。

そんな中から特定の霧を見つけるのはさすがに無理だ。

そうなると一番早いのは──

「甲冑のやふぁっふうぬおふぁつらに訊くふはにひふ」

そうと決まればまずは檻からの出だな。

『天眼』の距離を檻の天井付近に変える。

相変わらずベッドらしき場所で全を包帯でぐるぐるに巻かれた者が橫になっている。

……そういえばさっきから聲が出せてるな。

確か襲撃された時に舌も裂けてまともにしゃべれなかった。

その後に治癒核では治していないから、まだしゃべれないはず。

一度口の中を確認してみるか。

『天眼』を包帯で塞がれている口の中に変える。

『魔眼』によって明るく見えるそこには綺麗な舌がある。

舌をかして全を確認するがどこも裂けていない。

それ所か口の中はどこも怪我していない。

中に巻かれた包帯、そして元通りの口。

誰かに手當されたのは間違いない。が、中に走る痛みから考えて治されたのは口だけ。