《【書籍化・コミカライズ】無自覚な天才は気付かない~あらゆる分野で努力しても家族が全く褒めてくれないので、家出して冒険者になりました~》終わった話
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十分運は良かったはずなんだよな。たしかに生まれは恵まれた環境ではなかったのだろうけど。浮気で出來た子供をまともに療育してくれる義理の母が出來たのに、それに謝するどころか待されているかのように振舞って恥をかかせた。
貴重な屬の魔力が芽生えて公爵家に引き取られるとなった時に、その男爵家と縁まで切っている。本は親権を盾に子供をげる親から引き離すための制度だったのに、よくもこう悪用出來るものだと調べた時に恐ろしくなったよ。
本人にも言った事だけど。アジェット家に引き取られた後も、わざわざリアナちゃんを攻撃するような真似しなければ幸せになれたのにね。
その場合は俺とリアナちゃんは出會えてないけど……でも俺は、リアナちゃんが傷付かなくて済んだんなら、そっちの方が良かったなぁって思う。
でも、全部もうなかった事に出來ない過去の話だ。
「これ、學校に必要な書類。ニナ……これからは噓は吐かないで、真面目に生きてしい。悪い人だっているけど、貴が思ってるより……ほとんどの人って親切だよ」
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「……。」
「風邪とか引かな……あ…………さよなら。元気でね」
リアナちゃんの言葉を最後まで聞く前に、ニナは背中を向けて學校の敷地の中に向かって走って行ってしまった。
別れの挨拶すらせずに。恩知らず、と腹は立つ。でもこうして別れる事になっても良心が痛まないって點で見ると、ある意味良かったのかな。
クロンヘイムを発つ前に買いした時から、あのニナって子はずっと不機嫌だった。優しいリアナちゃんは気遣ったりしてあげてたけど、頑なに「何でもない」「ウザい」なんて言ってずっと拒絶してたのはあの子の方だから。最初に學校行く時一緒に挨拶に行こうか、って提案も斷ったのは本人だ。「家族でもないくせに」って。
リアナちゃんは気付いてなかったけど、俺には何となくその理由が分かってた。
多分あの子、リアナちゃんのになったつもりでいたんだろうな。騒もあって屬の魔力の研究機関については流れたと思ってたのか、クロンヘイムを出た後もリアナちゃんが自分の面倒を見てくれると考えているような甘えが見えた。
やっと分かったんじゃないかな、損得抜きでニナの事助けようっていてくれたリアナちゃんの優しさとか、ありがたみが。まぁ、遅すぎるんだけど。
それが、「餞別にけ取って」と言われて、自分だけ置いて行かれるのを初めてそこで悟ったんだろう。
何度かすがるような目を向けていたのは見たけど、結局「私も一緒に行きたい」とは言えなかったみたいだった。
もし、一言言ってたら、きっとリアナちゃんはニナをミドガランドに連れてってあげてたかもしれない。けどそうならなくて良かったと思ってる。
「……ちゃんと自分の行いを反省して、生まれ変わってくれるといいな……」
一度も振り返らずに走っていく背中を、リアナちゃんは心配そうに見つめていた。さっき「もし、困った事があったらここに連絡していいから」ってリアナちゃんは連絡先を渡してたけど、多分あの子は意地でも頼らないんじゃないかな、って俺はそんな事を思っていた。
晝食はどこで食べよう、なんて明るい聲で話しかけるアンナさんと琥珀のやり取りを見ながら、俺はエディと並んで、のんびりその後をついていった。
「やっと會えた!! 久しぶりの兄さんだ!!」
ミドガランドに戻った翌日。竜の咆哮(ドラゴン・ロア)のクランマスターの部屋を訪れた俺は、扉を開けた途端に突っ込んでくる人影。俺は咄嗟に床に踏ん張った。
覚悟したにも関わらず、リンデメンの街で會った時と同じ勢いでバーン! と抱き著かれて思わず數歩よろめく。相変わらずの反応のクロヴィスに苦笑いしつつ、「ちょっと腕を緩めてくれ」って思いを込めて背中をタップした。
「大げさだな、共振で毎日連絡してただろ」
「いや、本の兄さんは別なんだよ」
いつも通りよく分からない理論を述べ始めたクロヴィスを制止して、俺達は真面目な話を切り出した。
ちなみに一緒に來ていたエディは、飛びつかれてよろめく俺を支える事なく、さっと一人だけ脇に避けていた。主人を盾にしおって。
やれやれと首を振りながら応接用のソファセットに腰を下ろす。普段は書がいるようだが、俺が來る時は彼も含めて人払いされているので、エディがいつも通り給湯スペースに向かった。
「兄さんが無事に帰ってきて良かった……アジェット家で監されたって聞いた時はどうしようかと思ったよ」
「クロヴィスがその言葉使うとちょっと不穏だな……」
「でもこれで、リアナ君とご家族の問題が解決したね。クロンヘイムの橫槍もこれで心配しなくて済むし、やっと人造魔石の大規模プラント計畫を次の段階に進められる」
「そうだなぁ」
これで、俺の事を迎えれてくれるビスホス侯爵家への手土産になるだろう。
正直、クロヴィスを支持する家にも、今はどこまで王妃の毒がり込んでいるのか分からない狀況だ。敵ではないと確信出來るビスホス侯爵家としっかり縁を繋いでおきたい。
正面からの糾弾は、宰相であるメドホルミ侯爵や他の取り巻きに潰される。そもそもそれをしたら無辜の民への被害が大きくなりすぎるからやるつもりはない。當然水面下でいてる訳だが、まともに見えても調べたらあのを支持していたりするのがその辺に居るので気が抜けない。
正直……甘い吸いたくて汚い事してるなら対処のしようもあるんだよ。ただ俺の生學上の父親やメドホルミ侯爵のように、盲目的にあのに心酔してる輩がやっかいなんだよな……。
今までもそう……無関係に見える所から主犯が名乗り出て、毎回あのまで追及の手が屆かない。
それらの生贄は、魔眼の力で作り出しているのは分かってるんだが……洗脳じみたその力を無効化する方法も、対抗する手段も現狀ない。
犯罪者に裝著するような魔封じの枷みたいなものが作れたらと思ってたんだが……。現在俺が使ってるものは、俺が「自らんでに著けている」から有効なだけで、あのにそのまま使えない。そもそも俺が使ってるこれで本當に力を封じる事が出來るのか確証もないんだよな。
なので現狀は手詰まりになってしまっている。
「……ちょっと考えてる事があるんだけど」
「また工場建てる領地に挨拶って名目でしばらく帝都離れるつもり?」
「どうにもならなくなったら、そんなじで逃げ続けるのもアリだな。いや、今回やろうとしてるのは、もしかしたら解決の糸口になるかもしれないって考えてて……」
俺は自分の考えた仮説をクロヴィスに話した。
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