《【書籍化】わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く【8/26から電撃マオウでコミカライズスタート!】》最奧

呪いの森の最深部には、意外なことに魔はまったく存在していない。

それはこの土地の伝承と名前に由來している。

呪いの森は、元はよくある森のうちの一つだった。

ほどほどに野生が出て、ゴブリン程度の魔や燈火程度の弱い魔が出る、冒険者が定期的に間引きさえすれば何も問題の起こらぬ土地。

そこに異変が起きたのは、とあるスキル持ちがその場所で自殺をしたからであった。

この森は樹高の高い木々が生していて同じ景が続いているため、一度迷い込んでしまうと元の道に戻るのが大変で、救出の手がることは滅多にない。

故に『呪い』と呼ばれるスキルを持つが一人、その森の中へとっていった。

現れるや魔達を呪い先へ進みながら最奧にたどり著いたは、そこで自殺した。

なぜ彼が自死を考えるほどにまで追い込まれていたかは定かではない。

だがアルビノや両有、特殊なスキル持ちといった他の人にはない特徴を持つ人間が神聖視されたり迫害されることは、ままあることだ。

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結果としては死んだ。だが彼の呪いは死ないなかった。

やってくるまでに森の中にばらまかれた呪いだけではなく、彼が死に際に殘した特大の呪いが、森をむしばんでいった。

森は変質していき、強力な魔や妖怪が出る魔境となった。

だが彼があったところとその周囲だけはぺんぺん草も生えぬほどに荒れ果てており、土は全てを拒絶するかのように真っ黒に変質してしまっている。

そんな全てを拒絶している土地に、ぽつんと一件の家屋が建っている。

石造りでこじんまりとした、どこか寂しさをじさせる小屋だ。

「……」

無機質な冷たさの強いその場所で、一人のが黙々と本を読み続けている。

黒髪をばして幾重にも重なった著に付けている人形のようなこそ、イナリが躍起になっていてきた原因である千姫である。

既に年齢は十五になったはずだが、年齢と比べてもずいぶんとく見える。

千姫はい頃から病弱で、比較的食も細い方であったのが関係しているが、一番の原因は當然ながら、彼が滯在しているこの場所にある。

がこの呪いの森の奧でひっそりと暮らし続けてから、既に一年近い時が経っている。

その間も、呪いは彼を著実にむしばんでいた。

「こほっ、こほっ……」

の奧をこすり合わせているかのような、かすれた咳の聲。

森に來る前と比べるとずいぶんと生気が失われたように思う。

もしも長生きしたいと思うのならば、今すぐにでもこの森を抜け出した方がいいのだろう。

だが千姫は既に、この森で己の生を終わらせる覚悟を決めていた。

現領主であるモトチカと、前領主であるミチザネを父に持つ千姫。

二人が爭ったとしても、それで利を得るのは他領の人間ばかり。

自國の民を飢えさせてまですることではない。

それに純粋に戦闘能力の面で言っても、千よりもモトチカの方が高い。

千が得意なのは政や調略であり、戦にはとんと疎いのだ。

いざという時に前線に出れぬ領主では民もついてはこれないだろう。

だが思うところはある。

けれどそれを考えるのはやめにした。

思索を深めていってたどり著く場所が、決していいものではないと理解しているから……。

こんこん、とノックの音が鳴る。

千姫は定期的にモトチカ子飼いのシノビ達から、食料の供給をけている。

今週分の食料だろうか。

いつもと比べるとしやってくるのが早いような気がするが……。

「はーい」

し不思議に思いながらもドアを開ける。

するとそこには……見たことのないおじいちゃんがいた。

短編を書きました!

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