《【書籍化&コミカライズ】勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖、お前に追って來られては困るのだが?》315.未來へ

エピローグ

「やれやれ、やっと人心地ついた」

俺は月《イルミナ》を見ながら嘆息する。

宇宙空間に妻《アリシア》と一緒に吹き飛ばされるという稀有な経験をしたが、何とか無事にイシス星へと仲間たち全員と帰還することが出來た。

その理由は、レメゲトンの支配から解放されたサイスたちと、基本素に意識を移させたエリスやデュースが再起し、數千のオートマタを率いて探索し、宇宙を漂う俺たちを拾ってくれたからだ。

今、こうして俺が自國オールティに戻り、こうしてバルコニーでのんびりと夜空を見上げることが出來るのも、彼らのおかげである。

さて、そんな彼たちであるが、

「魔大陸とは違う食事文化、実に興味深いですね。調査意が絶えません」

王! あんたはいい加減仕事をしろ! いつまでここにいるつもりだ⁉」

「愚問ですね。全ての料理のレシピをこのメモリーでパンパンにするまでです。それにあなたも別にそこまで嫌がっているようには見えませんが?」

「い、いやぁ、それは……」

エリスとデュースが言い爭っているが、いつものことである。デュースが頬を妙に染めている理由までは分からないが。そしてもう一人、

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「アげて行きましょう~! 明日は元気に街道作りです」

サイスのご機嫌な聲が響いた。

そう……三人とも、まだここにいるのである……。

いや、まぁ確かに魔大陸は現時點では起しなことを決定したから、ある意味休息期間であることは確かなのだが。

「なぜ、俺の國にいる?」

「魔王リスキスに旅館『あんみつ』での湯治にわれましてね、あれはいいものです。料理も様々、文化そのものがお寶であるという新しい概念を、私は理解したのです。ぜひ習得して魔大陸に持ち帰らねばなりません」

「うまいこと言っているが本音は?」

「食べ足りません。ちなみに我がパートナー。あなたの料理も楽しみの一つです」

やれやれ。

「ま、料理を通して、今まで流のなかった魔大陸とエンデンス大陸が理解し合うというのは良い方法か」

「さすがは我がパートナーです」

まだしばらくは滯在しそうな王エリスたちであったが、まぁ、幸せそうだから良いだろう。

月を見上げれば、あの神イルミナが「どわっはっはっは!」と笑っているような気がした。

……まったく、あいつには助けられたな。俺はそう思って、月に杯を掲げた。

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さて、俺は國王でもあるが人魔同盟學校の校長でもあるので出勤する。

道中で生徒たちに出會う。魔族のルギに人間のフィネ、ドラゴニュートのキュールネーにエルフのソラ。そしてワイズ神の分ピノをあわせた5人だ。

「あ、先生、おはようございます」

「はよーん! 先生! 聞いたぞ~、宇宙に行ったんだろ? どんなとこだった? どんなとこだった?」

「相変わらず規格外な活躍をしているんですねえ」

「もうし休むべきではないでしょうか? 働き過ぎたら過労で倒れますよ!」

「魔大陸の皇帝までされて、お人好しが過ぎますね」

今回の活躍は既に市民たちの知るところだ。魔大陸との霧のカーテンが失われた以上、原因と経緯を各國に報告する必要があった。ただ報告をしたところ、賞賛と謝の言葉。並びにいつの間にか民間に武勇伝として今回のいきさつが語風に伝搬することになってしまったのである。

「一、いつになったらのんびり暮らせるんだ?」

俺は困った様子で言うが、

「きっとワークホリック質なんだよ、アリアケ先生は!」

「フィネにしては正鵠をた意見ですね」

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フィネの言葉を間髪れずルギが支持した。

やれやれ、そんなことは斷じてないんだがなぁ。

まぁ、とはいえ、

「フィネとルギのように、種族を超えて仲良くなれる奴らが暮らせるように、ほどほどに頑張るさ」

「「なっ⁉」」

顔を赤らめる二人を笑ってから、俺は一足先に校舎へと向かうのだった。

さて、校務も終わり、視察も兼ねて寄り道をして帰ることにした。

目的地の一つ目は、

「まぁ、ようこそ旅館『あんみつ』へ~。國王様一人ご案でーす!」

「「ようこそ、アリアケ様!!」」

そう、旅館『あんみつ』である。ここは他國の要人が逗留する特別な施設でもあり、時折俺も訪れて様子を見るようにしているのだ。かつて助けた獣人族のハスとアンもここで従業員として働いている。

ところで、今日泊っていたのは、

「おおー、アリアケっちも來たのだ? いいお湯だったのだ~。それにしても、今回は宇宙戦だったし、きっとアリアケっちもお疲れなのだ。ゆっくりしていくべきなのだ。そう、この魔王もさすがに疲れたので、こうしてブリギッテ將の世話になっているのだ」

魔王リスキスと、

「まぁ、たまにはこうして羽休みも必要ですしね。アリアケ様のグッズを魔大陸へ展開する前に休息も必要です!」

セラ姫と、

「ミルノーちゃんも今回は頑張った! だからこうやって自分へのご褒をあげてるんだ! いいよね! 王にだって休息は必要なんだから!ちゃんと大臣たちにも連絡して、『いなくても全然大丈夫』っていう返事もあったから!」

ミルノー王だった。図らずも王族グループだ。

と、そんなことを思っていると、リスキスが首を傾げて言った。

「ミルノーっち、その大臣たちの『いなくても全然大丈夫』って、それはそれでどうなのだ? ……ん? あれ、っていうかあてぃしも、もしかして、魔王國でそういう扱いになってるかもなのだ? めっちゃ不安になってきたのだ⁉」

「あれ、あれ? 私って要らない子って言われてる? あれれー?」

不安になる二人につられるように、セラも首を傾げ始めた。

「そう言えば、私もグッズ展開の話ばかりお兄様にしていたら、最近、お兄様からは『好きにしていいよ』という生溫かい返事しかかえって來ないようになっている気がします」

三人はテンパり始めながらも、

「大丈夫ですよ。きっと何とかなりますよ。さあ、それより味しいお料理が待ってますよ。お酒もご用意してますからね~。あ、ハスさん、アンさん、配膳のほうお願いしますね」

「「はい! それではアリアケ様、失禮します」」

二人は廊下の奧に消えていく。

一方、魔王たちは、

「そ、そうなのだ。うんうん、きっと何とかなるのだ!」

「そうだよね! ミルノーちゃんが要らない子なはずなかった! アハハハハ」

「私はエルフの姫、ちゃんとエルフの里の木材易なんかにも貢獻してるから大丈夫なはず。大丈夫、大丈夫、ふ、ふふふ」

そう言って、何だか不気味な様相で笑うのだった。

「ブリギッテ。確かに居心地の良い最高の宿を作ってしいとは言ったが……、この三人を見ていると微妙に洗脳狀態のように思えるのだが……」

「アリアケ君も利用して行ってくださいよ。いつでもこのブリギッテお姉さんが、超特別サービスをしちゃいますからね♡」

そう言って満面の笑みを浮かべるが、どうにも嫌な予しかしないので、退散することにした。

あの三人はあのままでいいのだろうか……。

「ま、まぁ、あまり深く考えないでおこう」

もう一つ寄る場所があることだしな。

俺は旅館から帰宅途中にある農地へやって來た。

そこで芋作りをしている一人のがいたので聲をかける。

「魔大帝パウリナ。を出るな」

「ふわああああああああああ⁉」

俺の挨拶にその。魔大帝パウリナはなぜか悲鳴を上げた。

「どうした、魔大帝。何かトラブルか?」

「王様、その呼び方やめてくださいよ~」

ドヨーンとした表で言った。

「仕方ないだろう。魔大陸は再度スタンバイ狀態になって、元の位置に戻ったが、もうあのレメゲトンはいない。魔大陸を唯一起出來るアクセスキーであり、またサイスたちをる権能を持つ君が魔大帝になるしかないからなあ」

「ほえええ⁉ お芋をふかして食べたいだけの人生なのに、いつの間にこんなことに⁉」

「まぁ、サイス達が全力でバックアップしてくれるだろう。それに余り気負う必要もないさ」

「そ、そうなんですか? な、なぜですか?」

は疑問を浮かべるが、俺は微笑みながら答える。

「いざとなれば、俺が助けるしな」

「お、王様! そ、そうですね、さすが王様です! け、結婚してください!」

「ははは、それだけ冗談が言えるなら大丈夫だ」

「冗談じゃないのにぃ⁉」

まぁ、ともかく彼もこの國でゆっくりしていけばいい。ここは誰であれれる國なのだから。

「ただいま~」

俺は玄関をくぐる。すると、

「お帰りなさい、アー君」

「ただいま、アリシア」

しい妻が待っていてくれた。まぁ、彼も人魔同盟學校の先生なので、職場でも會ってはいるのだが。

「今日のご飯はアー君の好きなパスタですよ~。むっふっふー、楽しみにしていてくださいね~」

「ああ、俺も手伝おう」

そう言って、奧の廚房へとろうとする。

が、

「ふむ、主様、それには及ばんぞえ。我が手伝っておるゆえな。ゆっくり休んでいるが良かろうて」

「そうですね、アリアケ先生にはちゃんと休んでもらわないと。心を込めた料理を味しく召し上がってもらうことが、先生のお仕事です!」

「わしのブレスで味しく炒めた焼をぜひ堪能すると良いのじゃ♡」

「私は盲點であるところの、食後のデザートを用意しておきますね」

と、そんなアリシア以外の聲が聞こえて來た。

廚房をのぞけば、エプロン姿の五人が広めのスペースで分擔して料理を作っている。

さすがに俺がったらスペース的に邪魔か。

ただ、

「なぜ3日に1度、全員家にいるんだ?」

そう。なぜかコレットにラッカライ、フェンリル、そしてローレライたちは、毎日ではないのだが3日に一度はこうして我が家に集合し、料理をして宿泊していくのである。

もちろん、俺は構わないし、大事な仲間なので問題ないのだが。

なぜか、俺の知らないうちに、特別なルールが施行されている気がしてならないのであった。

「ふー、アー君。第108回子會……。聖さんからはこれ以上のことは言えないのです」

「そうなのか」

「ええ、ええ。まぁ新婚生活を二人きりで堪能したい! 超したい! という気持ちも山々なのですが、そこは魚心あれば水心。私の背中を押してくれたり、ちゃんと順番を待ってくれたりもしてくれてますし、何より大切な……」

「おお、大切な何であるかえ?」

「なんでもありませーん! はいはい、食事にしましょう食事に!」

パンパンとアリシアが手を叩いて仕切り直そうとする。

だが、フェンリルはニヤニヤしながら言った。

「うむうむ、我もそなたらを大切な仲間であり、家族であると思っておるぞえ? にゅふふふふふ」

「やめなさーい⁉ 恥ずかしいでしょうが‼ 聖さんハリケーン・パンチを放ちますよ⁉」

途中で切った言葉の続きを言われて、アリシアが赤面する。

しかし、コレットとラッカライ、ローレライも元気に口を開く。

「わしじゃって、わしじゃって! 旦那様やアリシア、ラッカライやフェンリルのことを大切に思っておるのじゃ! ずーっと一緒なのじゃ! あと旦那様との子供がしいのじゃ‼ 本當の家族になるのじゃ!」

「うわー! コレットちゃん! どさくさに紛れて何て大膽な! 大膽さはドラゴンさんの特権ですか⁉ うう、はさすがです!」

「ボ、ボクも! い、いいえ、私もアリアケ先生のことが大好きです。結婚しましょう! お姉様の次に!」

「ラッカライちゃんも子力高い! ちゃんとコレットちゃん達を立てた上で、求婚するなんて!」

「むふふ、出來た者たちであるな。我は別に後回しでも良いぞえ。ただ、我も家族になりたいのう」

「はい、私もです。ぜひその際はおいのほどを。既事実が大事ですから!」

むむむ。

さすがの俺も子會でどういったことが話されたのか、何となく察しがついたのだった。

そして、それがアリシア公認であることも。

いつの間にこんな狀態になっていたのかは想像だにつかないが!

「えーっと、そうだな……」

俺はアリシアを見てから、どうするか決めた。

「アリシアと俺の子供が出來たら、その後考えよう」

まずは自分たち夫婦のことが優先だと思ったからだ。

しかし、

「あ、それなんですが、アー君。えっとですね」

「へ?」

は顔を赤らめながら、嬉しい報告を俺に告げたのであった。

~1年後~

「おい、アリアケよぉ」

「何だビビア」

俺とビビアは並んで座っていた。お互いに赤ん坊を抱っこしながら。

「俺の子供、超可いと思わねえか?」

「ふむ、そうだな」

俺はビビアが抱っこしている、小さな生まれたての生命を見下ろす。

の子だ。

「とても可いな」

「そうだろう! そうだろう! ぐひひひひひ!」

大笑いするビビアに対して、後ろから聲が飛んできた。

「ちょっと、ダーリン! その笑い方は教育に悪いですわ‼」

「なんだと! じゃあ、俺が『ハハハハ』と笑えってのか⁉」

「それはそれで気持ち悪いですわねえ」

「むがー⁉」

デリアの言葉に、ビビアが不服の聲を上げた。ただ、赤ちゃんを起こさない程度の聲でだ。

「ところで俺の子はどうだ?」

「ふん!」

ビビアは鼻を鳴らして言った。俺の抱く小さな男の子を睥睨すると。

「可いに決まってんだろうが。馬鹿めが!」

「ふ、そうだな、馬鹿な質問だったか」

その言葉に後ろから聲が飛んできた。

「ちょっと、アー君、馬鹿なんて言葉使っちゃだめですよ~。教育に悪いですからね~」

「む、確かに」

アリシアの言葉に反省する。

「難しいものだなあ」

「まったくだ、けっ」

俺たち二人は赤ん坊を揺らしながら會話する。

「ところで賢者パーティーは一旦解散したらしいじゃねえか。良かったのかよ」

「勇者パーティーもだろう?」

「ふん、まあな」

魔王討伐自はもはや人類の目的ではない。

だからパーティー自は解散しても差し支えない。

ただ、無論、強力なモンスターは存在するため、その討伐任務に赴くパーティーは必要なのだが。

しかし、俺は肩をすくめて言った。

「次の世代が育つさ。これまでもヒトはそうやって進歩して來た。俺からお前たち弟子が巣立って長したようにな」

「一度もお前の弟子になったことなんてねえよ、ボケが!」

「ダーリン!」

「ア―君!」

叱責の聲がもう一度飛んできた。

やれやれ。

俺はもう一度手元の赤ん坊らの稚い表を見る。

赤ん坊の溫が伝わってくる。

それだけで幸せな気持ちになった。

それはまさに、これからの明るい未來そのものだと思うのだった。

~fin~

ここまでお読み下さり、ありがとうございました。

アリアケやビビアたちの語は、一旦これにて語は完結となります。

長い旅路の末の二人の結末、読者様たちはどんな想を持たれたでしょうか。

より良い読後じて頂ければ嬉しく思います。

作者としましても、フラグも全て回収できて、とても満足できる作品になったとじております。

さて、本作の最終巻の第7巻が10/6に発売されます。大幅に加筆修正もしておりますので、ぜひともお買い求めいただけますと幸いです。コミック第4巻も大好評発売中です。どちらもお楽しみ頂けますと幸いです。

(小説)https://magazine.jp.square-enix.com/sqexnovel/series/detail/yuusyaparty/

(コミック)https://www.ganganonline.com/title/1252

それでは次の作品でお會いしましょう。

皆様の良い読書ライフを祈っています。

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