《骸骨魔師のプレイ日記》歓迎の闘技大會
闘技場の観客席にった魔プレイヤー達は珍しそうに闘技場を眺めていた。れ聞こえる「凄い」とか「信じられない」とかの言葉を聞く度に、私の顔に皮があればニヤニヤと笑みを浮かべていたことだろう。
ふふふ、そうだ。ここは凄い施設なのだ。作るのにあれだけ苦労しているのだから、凄いのは當然なのである。我々の努力の結晶を刮目して見るが良い!
ただし、彼らはまだ闘技場そのものしか見ていない。闘技場における楽しみは建を眺めることでは斷じてない。そこで行われるイベントを楽しむ場所なのだ。
「おおっ!?」
「何だ何だ!?」
そうこうしているに歓迎するイベントは始まった。魔王國においてイベントがあった時、常にその先陣を切るのは決まって『モノマネ一座』である。彼らは派手な発演出の後、得意の擬態とに付けた大道蕓によって素晴らしいショーを見せてくれた。
そのBGMを奏でているのは住民の有志が集まって結された楽団である。楽は魔王國製もあれば、コンラート経由で別の大陸から輸したモノもある。ともすると魔王國は世界で最も多種多様な楽がある國かもしれない。
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『モノマネ一座』によるショーが終わると、次は闘技場での対戦會だ。名前が読み上げられると場口からプレイヤーが現れ、ルールに基づいて戦い始める。一対一のガチバトルからパーティー戦、ステージギミックを用いた條件付き戦闘に闘技場を水で満たしての海戦など様々な形式での戦闘が行われていた。
「そろそろかな」
私が呟いたからではないだろうが、次に場口から現れたのはジゴロウと源十郎のコンビであった。有名人でもある二人の登場に新たな魔プレイヤー達はどよめいた。
きっと彼らは二人の戦いが見られると思っているのかもしれない。しかし、それではインパクトが足りないだろう。それに気付いている者もいるようだが、二人は司會に呼ばれた訳でもないし同じ場口からって來ている。今日、二人がお(・)互(・)い(・)と(・)戦うことはない。戦うのは…
「よォ、野郎共に新り共ォ!楽しんでるかァ!」
「「「「「ウオオオオオオオオッ!!!」」」」」
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「楽しんでるみてェだなァ!そんじゃァ今日のメインイベントの時間だァ!」
ジゴロウがよく通る大聲でメインイベントだと言った瞬間、空中に大きな文字が浮かび上がる。そこには『新人歓迎組手大會』と書かれていた。それだけでは何が何やらわからないようで、新たなプレイヤー達は困しているようだった。
「これは歓迎のイベントじゃ。ならば、主役たる者達が蚊帳の外というのは締まらんじゃろう」
「戦いてェ奴ァ俺達の好きな方を指定しなァ。好きなルールで戦おうぜェ」
そう。今回のメインイベントは新たにやって來た魔プレイヤー達の希者がジゴロウか源十郎の好きな方と戦えるというもの。ジゴロウはいつでも対戦は歓迎なのだが、源十郎は道場で教えるのが楽しいのか闘技場で戦うことは珍しい。魔王國の者達が羨むくらいだった。
ようやく狀況を飲み込めた魔プレイヤー達だったが、顔を見合わせているようだ。どうやら自分から手を上げて良いものか迷っているらしい。そこで私は立ち上がると皆に聞こえるように聲を張り上げた。
「誰からでも良い!早い者勝ちだ!二人共実力は折り紙付きである!を借りるつもりでどんどん挑んでくれ!遠慮はいらん!それと…別に倒してしまっても構わんぞ?最強の稱號を奪ってやるつもりで行って來い!」
私は発破をかけるつもりで言ったのだが、最初に返ってきたのは笑いであった。笑わせる冗談を言ったつもりは頭なかったので、私の方が困してしまった。
後に聞いた話によれば、私の口にした言葉の一部が有名な作品の一節のオマージュのようになっていたらしい。いや、知らんがな。
ともあれ、笑いが起きたのは短い時間であった。発破をかけること自には功しており、魔プレイヤー達は挙って我こそはと手を挙げて……ちょっと待て。新りじゃない者まで手を挙げるんじゃない!ちゃんとわかっているからな!?
どさくさに紛れて勝手なことをしようとした恥知らずもいたものの、それは二人も當然わかっている。新りの魔プレイヤーのみを指名して対戦を開始した。
「ハッハァ!やるじゃねェかァ!」
「ほう…思っていた以上に強いな」
対戦會は大変に好評であった。それは新りの魔プレイヤー達に対してだけではない。既存のプレイヤー達にとってもである。何故かと言うと、新り達が思っていた以上に善戦していたからだ。
厳しい環境下での生活を余儀なくされていたからか、彼らの腕前は中々のモノである。今戦っている者もも手加減などしないジゴロウの猛攻を何とか凌いでいた。ジゴロウも強い者と戦えるのが嬉しいらしく、とてもテンションが高い。楽しそうで何よりだ…凌いでいるプレイヤーは辛そうだが。
ただ、厳しい環境下で生き延びて來た猛者とは言えジゴロウと源十郎に勝てる者は流石にいなかった。まあこの二人は別格だ。相やら戦法やらが些事であるかのように踏み潰して來る。実際に向き合ってみると本當に同じプレイヤーか疑いたくなる何かがあるのだ。新りプレイヤー達はそれを味わっていることだろう。
そして善戦している姿は応援したくなるモノ。闘技場は新り達を応援する聲援で満たされていた。言い方は悪いが二人の圧倒的強者を前にして他の全員の心が一つになっていたのだ。
「オオオッラァ!」
「「「ああっ!?」」」
ただし、聲援を送られようが善戦しようが実力差が急に埋まることはない。今もジゴロウと戦っていた者は、その拳によって毆り飛ばされていた。魔とはいえそのプレイヤーはなのだが、ジゴロウには全く関係なかった。
敗北したのは間違いないが、観客達は彼の敢闘を稱えるべく拍手している。同時にジゴロウには冗談ではあるがを毆ったことへ野次が飛んでいた。ジゴロウは「毆られたくねェなら出て來んな」と平然として返している。これに関しては全く持ってその通りであった。
「希者は……もう終わりか?ならそろそろこの馬鹿騒ぎも締めにろう」
闘技場に飛び込む希者がいなくなったところで、私は立ち上がって闘技場の上へ移する。目立つ行を取ったことで観客の視線が一斉にこっちを向いた。
「希者がいないのなら、そろそろこの歓迎會を締めることにする。楽しんでもらえたのなら…」
「オイオイ、兄弟ィ!そりゃねェだろォ。なァ、ジジイ」
「うむ。ここは王としての実力を見せておかねば示しがつくまい。儂ら二人がお相手いたすぞ」
…おい、二人して何を言っているんだ。私が二人と戦う?そんな話は聞いていないぞ!?しかも源十郎の言い方だと二人を同時に相手取れと言っていないか?そんなの無理に決まっているだろうが!
だが、私が何かを言う前に観客は大盛り上がりだ。どうやらチンピラやマックなどが煽っているらしい。ああ、この空気でやらないなんて言えないじゃないか!
「…………良いだろう。ただし、そっちは二人なんだ。こちらも助っ人を呼ぶぞ」
「おう。誰でも好きに呼べよォ」
「むっ、ジゴロウよ。その返答は迂闊…」
「グオオオオオオッ!」
「クルルルルルルッ!」
ジゴロウから許可も降りたところで、私は大人気なくも常に攜帯するようになったモンスターキューブを取り出す。その中にるのはもちろん、カルとリンであった。
二頭の龍(ドラゴン)は待ってましたと言わんばかりに咆哮を上げる。これから何をするのか察したらしいジゴロウは引き攣った笑みを浮かべ、源十郎はそれ見たことかと呆れていた。
「あー…兄弟?ひょっとして…」
「やるからには全力で勝ちに行くぞ、兄弟。誰よりも良く知っているだろう?私は手段を選ばないということを」
「だよなァ…」
私が取る戦は単純明快。ジゴロウと源十郎の手が屆かない安全な高さから一方的に撃ち下ろすというもの。二人は白兵戦のスペシャリストであり、近寄られたら私に勝ちの目はない。こうする他に勝つ手段がないのである。
だが、普通ならこれでも勝てない。何故ならジゴロウと源十郎は対空攻撃手段を幾つも持っているからだ。このくらいの工夫で勝てるなら誰も苦労しないのである。
「この高さから広範囲の魔を放つぞ。カル、近付いて來たら叩き落とせ。リン、近付いて來そうになったら橫から魔で迎撃しろ」
「グオゥ」
「クルッ」
だが、私にはカルとリンがいる。カルはジゴロウと源十郎に鍛えられており、格闘戦でも良い勝負が出來る。それが空中であればカルの方が有利ですらあった。
リンは格闘戦こそ二人に絶対勝てないが、空中での速度であれば彼には敵わない。この二人がいれば、空中にいる限り私の敗北はほぼないと言っても過言ではなかった。
「では、始めようか」
「ハッハァ!これはこれで楽しそうだなァ、オイ!」
「絶的の間違いではないかの?」
私が魔を発すると、空中に五つの魔法陣が浮かび上がる。見上げるジゴロウは楽しそうに笑い、源十郎はため息を吐きながらも大太刀と槍を構える。戦いの始まりは、私による闘技場全に及ぶ撃めいた魔から始まるのだった。
次回は10月9日に投稿予定です。
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