《乙ゲームのヒロインで最強サバイバル 【書籍化&コミカライズ】》277 子爵領に迫るもの

北の都と言われるダンドール辺境伯領。元から易の中心地として栄えてはいたけれど、數年前から用の変わった商品が並ぶようになった。

新しい化粧品や服類に生活雑貨。當初は新し好きな冒険者などにれられただけだったけど、すぐに貴族の令嬢や騎士などに広がり、比較的裕福な若いを中心に大いに支持をけるようになった。

「……そう言えば、あのドワーフの防屋さんに々勧められたわね」

「そうなんだ」

「アリア……あなたが履いているのもそうでしょ」

アリアは本當にそういうことに興味が薄いわね……。

とにかく、それまでお化粧品と言えば香油と白、下著はドロワーズ系で、田舎の村では十歳超えるまで下著なんて無いのが當たり前だったのに、今では貴族用のお高いから平民用の安価なまで、誰でも求めれば手にるようになった。

その最初のを作ったのがダンドール家。噂ではまだ十歳にもなっていなかったお嬢様だと言われているそうね。

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私たちが到著したこの地は、ダンドール領から數日ほど南に下った小さな子爵領。

一つの街に二つの宿場町。あとは十個の村と大きな綿花畑が広がるだけの、本來なら男爵領としても手狹な、元々ダンドール家の直轄地だったみたいね。

アリアが調べた限り、ダンドール家の家臣である準男爵が代理領主として治めていたこの地は、ダンドール家の新しい製品を作る土地だったが、この地を新しい若い子爵の領地とした。

「……ほんに、おひいさんには贔屓にしてもろうて、儂らは皆、おひいさんが王妃様となるの、ほんに楽しみにしとったんだが、おひいさんがこの地のご領主様になるなら、儂らも盛り立てていかあかんなぁ」

宿場町の天のお爺ちゃん(サマンサの子世代)がしみじみとそう言っていた。

かなりお年寄りのお爺ちゃんよりずっと年上のサマンサは、宿場町に到著すると同時に酒場に突撃しようとして、アリアのペンデュラムで拘束されていた。

「サマンサ。呑むのなら何か食べながらにして」

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「また大量の羊か! 鬼嫁じゃ!」

……これも平和ってことなのかしら?

とりあえず、元々直轄地で、仕事を與え、何度も顔を出していたせいか、あのお嬢ちゃんは領民から慕われているみたいね。

ちなみにこの『ロヴィーノ子爵領』の領主は、元王子様なのだけど、もしかして領民は顔も知らないのではないかしら?

まあ、事が事だし、彼らの代では貴族として表舞臺に上がることは無いでしょうね。それでも、私とアリアと悪魔との戦いで死んでいた可能も高かったから、もされず生きているだけでマシでしょう。

もっとも、王都の人間を皆殺しにしようとした私が言えることではないけどね。

「スノー。私は冒険者ギルドに顔を出すけどどうする?」

「あのお婆ちゃんは?」

戻ってきたアリアにそう言われて、私はいつの間にか姿が見えなくなったお婆ちゃんの存在に首を傾げる。

「サマンサも歳だから今日は近くで宿を取ってもらう。勝手に呑んでいると思う」

「まあ……いいんじゃない?」

そう言えばそうよね。アリアがサマンサを普通の老人のように扱っていて、そちらのほうに驚いてしまったわ。

「それより、こんな小さな宿場町に冒険者ギルドがあるの?」

「基本的には領主のいる街にあるけど、こういう宿場町にも、急連絡用の設備を置いた派出所がある」

「へぇ……」

遠話の魔道は、貴重なアダマンタイトを使うから高価なのだけど、価格は通話距離に比例するらしく、こんな小さな領地では領都にあるギルドに王都と通話できる程度のが一つだけあるらしいわ。

でも、それは通話をする場合で、魔學園にもあった短文を送るだけのなら、ミスリルを代用としてこんな宿場町にも置けるそうよ。

まあ、軍事資だから誰でも買えるわけでなく、一般人は國家の許可が必要になるけどね。

「ここだ」

そんなことを話しているうちに、私たちは冒険者ギルドの派出所を見つけた。

なんと言うか……ただの民家ね。中にると中年の男職員が一人だけいて、行商人らしき男が職員と話をしていた。

ギルドの派出所は、旅の冒険者や領民や旅人が倒した低ランク魔の魔石の買い取りもしているのですって。魔石を売るだけならし割高になるけど、冒険者登録もいらないしね。

この行商人も魔石を売りに來たのか、依頼でもするのかしら? そう思い様子を窺うとそんな和やかな雰囲気ではなさそうね。

「――だから、いい加減なんとかしてくれっ」

「ですから、そういう話は衛兵の詰め所か、ご領主様にでも言ってくれないと」

「言ってはいるが、隨分経つじゃないか!」

「兵士の數にも限りがありますしねぇ……。ダンドールのほうから騎士様でも來てくれるのを待つしかないと思いますよ」

「それはいつになるんだ!?」

「一応、ご領主様も依頼は出してくれているのですが、ける人がいないのですよ」

「……どうしたの?」

面倒ごとになりそうだけど、話が終わらなそうなのを察してアリアが聲をかけると、職員より先に行商人が振り返る。

「お嬢さんたち、冒険者か? だったら山賊どもを片付けてくれっ」

「ちょっとあなた、若い娘さんたちに何を言っているんですかっ!」

ギルドを無視すると言うよりも、若い二人に山賊退治を押しつけようとした行商人に、常識のある職員と言い爭いを始めていた。

まあ仕方がないわ。アリアは可いから。

「〝どうしたの?〟」

「「――!?」」

も聲音も変えず、ただ繰り返したアリアの言葉に二人が直する。たぶん、ランク3の魔でも直するのではないかしら……。

「実は……」

職員さんが教えてくれた。

この辺りでは最近、山賊が出沒しているらしい。山賊なんて、畑が貰えなかった農家の穀潰しか、農閑期の農村の副業かと思っていたけど、話に割り込んできた行商人によると、力のある奴がいて、かなり統率されているみたいね。

要するに山賊とは名ばかりの、兵士隊か傭兵団みたいな連中が、旅人なんかに目もくれずに商隊ばかりを襲っている。

この領地がかなり儲けていることを知って、完全に狙ってきているわねぇ。

本當に山賊(・・)なのかしら……?

この領地にも兵士はいるけど、この小さな子爵領では數は限られているから大変でしょうね。人數の兵士だけで街道の巡回なんてしたら、統率された山賊に返り討ちに遭ってしまうかもしれないから。

ダンドール家も娘や元王子様のために騎士隊くらいは付けているはずだけど、彼らにしても、二人の警護が優先されるし、そちらの數も多くない。

一応、お嬢ちゃんは冒険者ギルドにも依頼を出しているけど、一度ランク2の冒険者が返り討ちになってしまってからは、ランク3の冒険者も二の足を踏んでいるような狀況だと職員は話した。

「スノー」

「はいはい」

仕方ないわね……。他人を信用していないくせに、他人を放っておけないのだから。

私は正直どうでもいい。手から離れた玩に興味はないの。

でも……あなたがそうしたいのなら、私は地獄の底でも喜んで行くわ。

「その依頼、私たちがける」

アリアがそう言葉にすると職員と行商人が驚いた顔をしたけど、アリアがランク5のタグを見せると目を見開いて沈黙した。

それに……他人とは言ったけど、まるで他人でもないわね。私もお姫様にはし借りがあるから。

次回は山賊討伐です。

書籍七巻は、來年1月予定です!

悪魔公3も発売しましたので、見かけたらお手に取ってみてくださいね。

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