今年にって々あったから、あまりスクリーングに行けてなかったが……。

俺のも回復したし、ミハイルも戻ってくれた。

だからまた俺たち二人で、スクリーングへ通うことにした。

以前のように、同じ時間の列車で待ち合わせて。

もう二人は付き合っているし、婚約狀態だ。

古賀　アンナという、Ｌ●ＮＥアカウントは消滅したが。

代わりに、ミハイルという名前が追加された。

告白して以來、頻繁にメッセージのやり取りしている。

地元の真島まじま駅のホームに立ち、今から電車に乗ると彼に伝える。

すると數秒も経たないうちに返信が屆く。

『わかった☆　隣りの席を空けといてよ☆』

そのらしい文章を見て、思わずニヤけてしまう。

電車へ乗り込むとしばらく窓の風景を眺める。

ここまで來るのに、本當に長かった……。

辛かったけど、ちゃんと今がある。

真島駅から二駅離れた場所。

彼の住む、席むしろうち駅に列車が到著した。

プシューという音と共に、自ドアが開いた瞬間。

甲高い聲が聞こえてくる。

「おっはよ～！　タクト☆」

嬉しそうに微笑む一人の年。

白のタンクトップに、デニムのショートパンツ。

足元はきやすそうなスニーカー。

金のしい髪は、もう短くなってしまったが……。

それでも、彼の貌は健在だ。

小顔だからハンサムショートも似合うし、持ち前の大きなエメラルドグリーンが眩しい。

俺を見つけると、すぐに隣りへと座り込む。

太ももをビッタリとくっつけて。

そして、上目遣いで話しかけるのだ。

「タクト☆　久しぶりだね☆　あ、でも……オレ毎日、畫を見ていたから。あんまり時間をじないかな☆」

と照れてしまうミハイル。

自の小さなに手を當てて、思い出しているようだ。

ヤベっ！　俺まで思い出してしまう。

こんな目の前に、未來の嫁が座っているのに……何もしないだと！？

何とか彼に言い聞かせて、キスできないだろうか。

じっとミハイルのを、上から眺めていると。

彼に不審がられる。

「あれ？　タクト、どうしたの？　なんか今日は靜かだね？」

首を傾げる姿すら、小みたいで可い。

「す、すまん……久しぶりにミハイルと會えて、嬉しくてな」

「ホント？　オレも嬉しいよ☆　タクトに早く會いたかったもん☆」

今の一言で、俺に火がついてしまった。

ミハイルの肩を強く摑み、けないようにする。

一瞬、ビクッと肩を震わせていたが……なんとなく、俺が考えていることを察知したようだ。

「タクト……」

ピンクのが輝いている。

日曜日の朝だし、小倉行きだから。乗客はないほうだが……。

それでも何人か若者が、同じ列車に座っている。

しかし、俺は博多駅で大勢の人々に見られながら、キッスをした男だ。

これぐらい、もうなんてことないぜ。

ミハイルの背中に手をやりを俺に寄せる。

嫌がる素振りも見せず、従順にきを合わせてくれた。

そっと瞼を閉じて、待ってくれている……。

もう一度、あの時を再現しようとしたその時だった。

ミハイルがそっと俺から離れてしまう。

「ごめん、タクト……今のオレには、しない方がいいよ……」

「え？」

「あの日。博多駅で告白してくれた時、すごく嬉しかった。今でもがドキドキする……」

頬を赤くして、地面に視線を落としてしまう。

なんだ？　恥ずかしいだけなのか。

「それがどうしたんだ？」

「と、止まらないんだよ……」

「何が？」

「“あの日”が止まらないの！」

「……」

忘れていた。

ミハイルの知識は、お子ちゃまレベルだったことを。

その後、彼から詳しい説明を聞いたが。

どうやら、俺が原因のようだ。

博多駅で告白した後、抱きしめてキッスをわす……それもディープキスを１０分間も。

それ以來、毎日夢に出て來るらしい。

お花畑の中を、俺と仲良く手を繋いで歩いていると、いきなり迫られてしまい……濃厚キスが始まる。

というシーンが、脳で延々と繰り返されるそうだ。

そんな夢ばかり見るから“あの日”が増えてしまう。

月に１回レベルの“男の子の日“が、週に２回も起きるとか？

だから「今のオレは汚れている……」と落ち込んでいた。

いや、むしろピュアすぎでしょっ！？

「もうオレにキッスしない方がいいよっ！」

と涙ぐむミハイルくん。

ヤバい、そんな顔をされたら、尚のこと襲いたくなる……。

「ごほんっ！　ミハイル、落ち著け。今、お前に起きている現象は、男なら自然なことだ」

正直１６歳の男子高校生なら、異常だと思うが……。

「ホントにっ！？」

「ああ……」

「そっかぁ～☆　なら悪いことしてなかったんだぁ～　良かったぁ☆」

ちょっと、そんなことで善悪の區別をつけていたら、俺なんか極悪人だよ。

「別に悪いことじゃないさ……むしろ男なら、長したことを喜ぶべきだと思うぞ？」

「そうなの？　でも、あんまり回數が多いと困るよぉ……あ！　そう言えば、前にタクトへ相談した時、言ってたよね？」

「へ？」

「ほら、『制できる方法がある』って☆」

緑の瞳を輝かせて、俺の答えを待つミハイル。

上目遣いだから、どうしてもわれているような錯覚を覚える。

制できる方法だと？

そんなの教えなくても、自然と覚えるもんだろう。

だが、無垢なミハイルなら仕方ないか……。

しかし、どうやって教える？

そうなるとお互いが、にならないと。

はっ！？　そう言えば、一ツ橋高校の近くにボロいラブホテルがあったな。

一時間ほど、ご休憩と稱して、彼にの課外授業を始めるべきか？

手取り足取り使って……そのままベッドイン。

いかん、妄想するだけで間が発寸前だ。

結婚する前に、ミハイルの全てを知り盡くしてしまいそう。

それは俺の紳士道に反する行為。

仕方なく彼には、その場しのぎの噓をついておくことにした。

「いいか、ミハイル。俺は今１８歳だ」

「うん☆　知ってるよ☆」

「だが、お前はまだ１６歳だな？」

「そうだけど？」

「ならば、まだ教えることは出來ない。制する方法はな、１８歳を越えてからじゃないとダメなんだ！　よく１８歳未満止という、赤いのれんを見るだろう？　あれはそういうことだ。法律で決められているのだ！」

ごめん……ミハイル。

俺は小學生で覚えたけど。

取ってつけたようなウソだが、知識のない彼は驚いていた。

「えぇ！？　そうなの！？　じゃや１８歳まで、このままなの！？」

「うむ……対処法としては、俺とのキスを思い出さないこと、畫も見ないこと。あとはお前の好きな、ネッキーやスタジオデブリのアニメを見まくることだ」

「そんなぁ～　タクトとのキス畫は好きだから、何度も見ちゃうよぉ」

と口を尖がらせる。

「仕方あるまい。今できることはそれぐらいだ」

悪い、ミハイル。

結婚の準備ができたら、とことんに教えてやるからな。

いや毎日、俺が絞り出してやろう……。

※

「ところで、ミハイル。さっき言っていた畫の件だが……かなりバズっているらしいな。現段階で５００萬回再生されていると聞いた。それで姉のヴィッキーちゃんも見たのかな？」

一番、危懼していることだ。

なんせ可い弟を裝させて、會していたことをずっと黙っていたからな。

疑われる度に、どうにかごまかしていたが……。

「あ、それなら大丈夫だと思うよ☆」

「どうしてだ？」

「ねーちゃんって、ネットとか見ないタイプなんだ☆　お酒しか興味ないし。でもたまにテレビぐらいなら見るかな？　あの畫はテレビで放送されないでしょ？」

「そういうことか……」

ヴィッキーちゃんが、アナログ人間で安心はしたが。

しかし、例の畫は異常なほどに再生回數がびている。

テレビ局の人が、使わないことを祈ろう……。