《家から逃げ出したい私が、うっかり憧れの大魔法使い様を買ってしまったら》甘いいたずら(コミックス4巻発売記念)
本日発売の!!!!コミックス4巻を!!!!ぜひ買ってください!!!!流星群もキスシーンも!!!!収録されている超絶最高の1冊です!!!!!!!!!
魔法學園での宿泊研修を控えた、ある日の放課後。
「ハッピーハロウィン!」
「…………は?」
元気にそう言って男子寮の部屋にると、ベッドに寢転がっていたエルは形の良い眉を寄せ、呆れたような視線を向けてきた。
これくらいはいつものことだし、気にせずにエルの側へ向かう。
「今日はね、ハロウィンっていう異國のお祭りの日なんだって! だからクラスのの子達と放課後に教室で集まって、仮裝をしてお菓子パーティーしてたんだ」
魔だったりだったり、幽霊だったり。みんな可らしい仮裝をしていてすごく盛り上がり、とても楽しい時間を過ごせた。
ちなみにわたしの貓の仮裝は、リネが用意してくれたものだ。貓耳をつけるくらいでいいと思っていたのに「ジゼルに著せる服に手を抜くわけにはいきません!」と徹夜して作ってくれた超力作で。
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お蔭で本當に可らしい姿になれて、エルにも見てほしいと思い、パーティー後にまっすぐやってきていた。
「どう? かわいい?」
寢転がったままのエルの前でスカートを持って、くるりと回ってみせる。
みんな褒めてくれたけれど、やっぱりエルに一番褒めてほしいという気持ちがあった、けれど。
なぜかエルは更に眉を寄せ、不機嫌を隠さずにいる。
「……お前、その格好でここまで來たわけ?」
「うん。教室を出て、歩いてここまできたよ」
「最っ悪」
「ええっ」
エルは大きな溜め息を吐くと、を起こす。
どうして最悪なんて言われたのか分からず困していると、エルはわたしの頬をぎゅっと摑んだ。
「お前さ、俺が貰うって言ったよな?」
「う、うん」
「俺と結婚するんだよな?」
「し、したいです」
「他の男にもこんな格好見せるとかムカつくに決まってんだろ、バカ」
そう言われてようやく、エルが何に対して不機嫌になっているのかを理解した。
確かに普段の制服よりはし足も出ているし、腕も出している。そんな姿をエル以外の男の子に見られたことに対して、怒っているらしい。
「ご、ごめんなさい、以後気をつけます……」
「ん」
そこまで考えていなかったことを深く反省して謝ったところ、エルは頬を摘んでいた手を離すと、くしゃりと頭をでてくれる。
どうやら許してくれたようで安堵しつつ、いつものように並んでベッドに腰を下ろした。
「で、ハロウィンって何すんの」
「わたしもよく分からないんだけど『お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ!』って言うんだって」
「ふうん」
エルは興味なさげにそう言うと、ベッドの側にあったキャンディを「ほら」と口に押し込んでくれる。
「ありがとう。あ、おいしいねこれ」
ころんと口の中でキャンディを転がすと、甘い苺の味が広がっていく。エルが最近よく食べているもので、とても甘い良い香りがする。
「で、俺には?」
「えっ?」
「菓子」
「まっすぐ來たから、換したお菓子は荷になるし全部リネに寮に持って行ってもらっちゃった……」
誰よりもエルはお菓子が好きだというのに、気が利かなかったと反省した。
てっきり「ったく何しに來たんだよ」と責められると思っていたのに、何故かエルはで綺麗な弧を描く。
そして次の瞬間には、視界がぶれていた。
気が付けばわたしはベッドに押し倒されていて、目の前には整いすぎたエルの顔がある。
「あ、あの、エル……?」
「それなら悪戯していいんだよな?」
確かにわたしはお菓子をあげられていないし、理論的にはそうなるのかもしれないけれど。これは想像していた悪戯と、大きく違う気がしてならない。
エルにしっかりと摑まれた両手も、鼻先がれ合いそうな距離にある顔も、何もかもが熱を帯びていく。
「お、お菓子が食べたいならわたし、今から寮に戻って持ってくるから──」
「返してもらうからいい」
どういう意味だろうと思った瞬間、エルとの距離はゼロになっていて、が重なっていた。
突然のキスに戸う間もなく、エルのが開く。
同時に「返してもらう」という言葉の意味も、ようやく理解した。初めてキスをした時のことを思い出し、慌てた時にはもう、遅くて。
「……っ」
慣れない覚に、びくりとが跳ねる。いっぱいいっぱいになって抵抗するも、以前とは違いしっかりと押さえつけられていて、逃げられそうにない。
それからは頭が真っ白になってしまって、解放された時にはもう、何も考えられなくなっていた。
「……あっま」
満足げに笑うエルの舌の上には、小さくなった真っ赤なキャンディが載っている。
恥で耐えきれなくなったわたしは押し倒された狀態のまま、エルから視線を逸らす。
「も、もうやだ……」
「嫌じゃないだろ」
口角を上げたエルは、わたしが本當は嫌だなんて思っていないことを分かっているに違いない。
その通りすぎて素直に頷くと、エルは「お前のそういうとこ、かわいいよな」なんて言って楽しげに笑う。
そしてわたしの頭についた貓耳を指先でつつき、エルはらかく目を細めた。
「ま、似合ってんじゃん?」
「……い、いまそれ言うのずるい」
「だってお前、なんだかんだ拗ねるし」
「拗ねないもん! それと、その、そろそろ離していただきたいんですけれども……」
「無理」
それからもエルは解放してくれなくて、しばらく甘い悪戯は続くことになる。
Xで募集した「ハロウィンのお話」「エルがファーストキスをリベンジするお話」を元に書きました、リクエストありがとうございました~!!!
本日、鷹來タラ先生によるコミックス4巻が発売です!
もう何がなんでも家逃げを好きな皆さまには買っていただきたいです。神です。ときめきが詰まっています。
宇宙一かっこいい眼帯エルが目印です!!!!!!
もう購して飾るだけで人生が潤います。
そして今回のSSはファーストキスを思い出すようなお話になっておりますが、4巻ではエルとジゼルが初めてキスをする回も収録されています(/// ///)♡
コミカライズのオリジナルで、とんでもないときめきシーンになっております。つまり小説と合わせて2パターンのファーストキスを楽しめるということです。最高です。
贅沢すぎる上にとにかくエルがかっこよくてジゼルがかわいくて全部神なので、ご購よろしくお願いします!
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