《【書籍化】左遷された無能王子は実力を隠したい~二度転生した最強賢者、今世では楽したいので手を抜いてたら、王家を追放された。今更帰ってこいと言われても遅い、領民に実力がバレて、実家に帰してくれないから…》114.第七王子は、なんだかんだ今をしてる
悪魔ナベリウスは、第七王子ノアと魔神ロウリィが、市連から帰ってこないのを心配し、彼らの様子を見ることにした。
ノアの影に、ナベリウスは自分の分を紛れ込ませておいた。
そしてノアが今居る世界へと、やってきたのだが……。
「ここは……カーター領、か?」
帝國化する前のカーター領だとわかった。
何もない草原がどこまでも広がり、遠くには魔うろつく、奈落の森(アビス・ウッド)があったからだ。
「なぜカーター領……? 確かノア様は、怠惰の試練をけてる……んだったな」
怠惰の試練。
名前から察するに、ここにいると怠惰のに捕らわれるということだろう。
しかし周りを見渡しても、別にノアをするようなものは見けられない……。
「む? あれは……」
1本の大きな樹の下に、見知った顔があった。
「ノア様……!」
ノアは仰向けになって眠っていた。
その隣には、人間姿のロウリィもいて……。
「あ……」
ロウリィはノアに腕枕してもらっていた。
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彼は実に幸せそうな顔をして、ノアに抱きついて眠っている。
ノアもまたまんざらでもない様子で、穏やかな寢息を立てていた。
【怠惰の試練にようこそ】
番人の聲が、ナベリウスの脳に直接流れ込んできた。
「おいこれはどういうことだ?」
【怠惰の試練の真っ最中だ。この試練は、當人にとって最も幸せな環境を、構築し、ここから出するという容だ】
「ここが……最も幸せな環境? カーター領が……?」
ここはただのカーター領だ。
どこが最も幸せな環境……。
「あ。そうか……ここは、靜かすぎるんだ……」
そう、ナベリウスの知るカーター領は、狂信者《りょうみんども》がいて、毎日どこかしらで騒ぎが起きていた。
ノアの周りには常に、イカレタ領民たちがいた。
だが……。
さぁあああ……。
穏やかな風が吹き、草原の草を揺らす。
「…………ノア様は、こういう靜かな環境を、んでいたのか」
思えば、ノアは最初から言っていた。
楽隠居したいと。
つまり……。
「ここは、ノア様の実力がバレなかった世界線ってことだな」
【然り! くく……ここは、左遷された無能王子が実力を隠し通せた世界! やつの最もむ世界! ゆえに! やつはこの世界から出ることは不可能!】
……なるほど、とナベリウスは納得する。
彼は、人と穏やかに過ごせる、こんな世界がみだったのだ。
そこは、リスタによって実力がバレなかった世界。
そのため、サラをはじめとした、ヤバい連中がノアの元に厄介ごとを運んでくることはない。
……だが。
「それで……いいのかよ、ノア様……」
ナベリウスはノアを起こそうと近づいて……やめた。
あまりに、ノアとロウリィが、幸せそうな顔で眠っているからだ。
「…………」
思えばノアは、カーター領に來てから苦労の連続だった。
やりたくない仕事をやらされ、やりたくないのに神にされてしまった。
……この、穏やかな時間が彼のみだというのなら、現狀は理想からあまりにかけ離れすぎている。
ここでノアを起こすことは、すなわち、また彼に辛い現実を味會わせることになってしまう。
【友人】二人が幸せそうに、眠っている……。
この世界を、果たして壊して良いか……。
「「くわー……よくねたわ~」」
「おまえら……」
ノアたちは自発的に目を覚まし、ぐいっと背びする。
「いやぁ、ひっさしぶりによく寢たなぁ」
「っすね~。のんびり過ごせたっすわ……ってどうしたのなべたん?」
いや……とナベリウスは首を振る。
「あれ、おまえなんでここに居るわけ?」
「……おまえらが來るのが遅かったから呼びに來た、んだよ」
「あ、そ。悪かったな。直ぐ帰るからよ」
……ナベリウスは、耳を疑った。
「の、ノア様……? 直ぐ帰る? ここを出るってことか?」
「おうよ」
「いやでも……この靜かな暮らしが、理想の世界なんだろ? 未練はないのか?」
ここに居ればなくとも、友人たちは幸せに暮らせる。
だというのに、ノアは出ていくと言った。
「あ? まあー……未練がないって言ったら正直噓になるけどよぉー……」
がりがり、とノアが自分の頭をかく。
何か言いたくなさそうだった。
一方でロウリィは微笑みながら言う。
「なんつーか、靜かすぎるんすよね」
「そうそれ!」
ずびしっ、とノアがロウリィを指さす。
「なんつーか、大ダーク帝國とかいう、悪魔の土地ってうるっせえけどさぁ……。なんつーか、あの喧噪も、ないと逆に靜かすぎて眠れねーんだわ」
……噓を言ってるようには、思えなかった。
「それになんつーかよぉ……ここには、あれだ。バカどもがいないからさ。なんつーか……なんつーか、まあ……その……」
がりがりがり、とノアが頭をかいて……。
「あー、もう! 調子狂うんだよ! あのイカレタ領民連中がいないとさぁ……!」
「ふふ、なんだかんだ言ってノア様、サラ様をはじめとした、領民たちに著がわいてるじゃあないっすか~」
「う、ううう、うるせえ!」
……そういうことか。
ノアは、領民たちを怖がり、煙たがってはいたけれど……。
でも、嫌いってほどではなかったのだ。
「それにここにゃ、ナベもいねえしな」
「は……?」
急に自分に話題を振られて、ナベリウスが目を丸くする。
「お、オレ様が……いない?」
「おう。ナベがいないとさー、ツッコミ役がいねーだろー。そこの白貓はポンコツだしよ」
「ひでーっすわ」
ロウリィとノアが笑ってる。
……知らず、ナベリウスも笑っていた。
「馬鹿な王子だ、まったく」
ナベリウスは勘違いしていた。
ノアは現狀を嫌って等居なかったのだ。
確かに、ノアは神扱いされるのを嫌がってるし、靜かに暮らしたいのは本心だろうけど……。
それでも。
左遷された先で出會った人たち、騒がしい暮らしに、著を持ってくれていた。
悪魔である、自分のことさえも……。
「な、なべたん泣いてるんすか?」
「ま、マジか!? えええー……どうしたんだよぉ、おまえよぉう」
はっ、とナベリウスは我に返る。
ぐしぐし、と目元を拭う。
「な、泣いてない!」
「「泣いてたじゃーん」」
「泣いてない! くそ! さっさとここを出るぞ!!!!!」
ノアがにっ、と笑うと、指パッチンする。
すると世界が々に砕け散った……。
「ノア様!」「よくぞご無事で!」
化け6人が、わっ、と近寄ってくる。
「わりーなおまえら。ちと遅れた」
「無事で良かったぜノアぁ……!」
「お、おう……駄馬兄。やっぱそのキャラきしょいわ……」
「弟ぉおおおおおおおお! うぉおおおおおおおお!」
ノア、そして配下の手には7つの寶玉が握られている。
ノアはそれを魔法で浮かせると、扉にはめ込む。
ごごごごご……と大扉が開いていく……。
「さて……と。おまえらはここで待機」
「「「なっ!? ど、どうして……!?」」」
がりがりがり、とノアが頭をかいたあとに、言おうとして……。
「「「なるほど! そういうことですね! 」」」
「うん、まだ何も言ってないけどぉ!?」
そんな彼らのやりとりを、ナベリウスは微笑ましく見ている。
ロウリィもまた、優しい笑顔を浮かべる。
「ノア様ってあれだな、見かけによらず、優しいやつなんだな」
「なーんだナベタン、今気づいたんすか~♡ そーっすよ、あの人は……まあ、クズだけど、悪人じゃあないんすよ」
今も、配下の連中が傷付かないようにと、置いてこうとしたのだ。
「んじゃ、行ってくるわ」
そう言って、ノアが一人で扉をくぐろうとする。
ぴょんっ、と貓姿になったロウリィが肩にのっかる……。
そして、黒犬姿のナベリウスが、後から続く。
「あ? おまえらなについてきてんだよ……? 邪魔だから帰れ」
『別に~。わたしはノア様が心配だから著いてくるんじゃあないからね! 勘違いしないでっすよ!』
『オレ様も別におまえがどうなろうがどうでもいいんだがな。勘違いするなよ』
ノアが実に嫌そうな顔をしながらも、はぁ……とため息をついた。
「馬鹿なアニマルズめ。勝手に著いてこい」
かくして、ノア、ロウリィ、ナベリウスは……。
最終決戦、神リスタルテのもとへと向かうのだった。
【★あとがき】
有名VTuberの兄、書籍版がいよいよ発売されます!
11/15にGA文庫から発売!
予約始まってます!
よろしくお願いします!
https://www.sbcr.jp/product/4815619374/
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