《T.T.S.》File.5 Worthless Road Movie Chapter 3-3

~2176年12月26日AM3:46 東京~

さて、何故T.T.S.の面々が斯様な手間を払って電気コンロなんてを確保するに至ったのか。

キッカケは、T.T.S.Masterから任務を拝命した直後に遡る。

DPトリガーの正が不明な以上捜索は困難になると判斷したT.T.S.の面々は、それを一旦放置して、取っ掛かりを探す意味でもわかる範囲から捜査を始めることにした。

ギルバートは、新人類組計畫Neuemenschheitherstellungplanの洩元を、紗琥耶とアグネスは記者會見を覗き見していた不埒な輩たちを、各々捜索する。

しかしながら、今し方初めて東京に降り立ったギルバートには、土地勘もなければツテもない。

故に、全ほぼ全てがナノマシンの紗琥耶が一部のリソースをギルバートのに付著させて共同捜索することとなった。

「なるほど。日本の警察機関の協力はほぼ見込めないんだね?」

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《絵ちゃんいないからねーほぼ無理》

「……やはり凄いね、彼の影響力は」

ハイウェイを走る車を自走で抜き去りながら、ギルバートはT.T.S.における絵の存在の大きさに服する。

《そりゃ違うわよあの子は。そこら辺のアバズレとは一味も二味も》

気のない紗琥耶の返答が、その何気なさ故に本音に聞こえて、ペストマスクの奧で男は首を捻る。

「彼の何が特別なんだい?」

もしかしたら、その“特別な理由”の中に、アプローチをかけるべき場所があるのかもしれない。

そう思って尋ねたのだが。

《処っぽいんだよね、あの歳にしてまだ。信じらんないでしょ》

「……そうか」

余りにも的外れというか、余りにも紗琥耶的な視點過ぎて、慣れていないギルバートはセンシティブな水向けに辟易とするばかりだ。

本來ならば息も吸えない風圧の中にあっても、ペストマスクで覆われた彼の呼吸はれることもない。

しばかり奔放が過ぎるな君は……と、ここでいいのかい?」

100k/hほどの速度で走っていたギルバートが足を止めたのは、ある新聞社の前だった。

21世紀の後半ごろから記録用を除いて紙面展開を完全に辭めた文字は、かつての印刷機のスペースを巨大なサーバーに置き換え、しぶとくも報センターとしての役割を続けていた。

《合ってる合ってる。したら付で社會部の南雲ってヤツに會わせろって言ってもらえる?》

「社會部の南雲。君の知り合いと伝えればいいんだね?」

《いや、一昨日私と寢たの奧さんにバラされたくないなら出て來いって言って》

「……わかった」

ギルバートは閉口するばかりだが、これは紗琥耶が自の癖を上手く活かしている証左でもあった。

なりに、要點を抑えた相手と寢ているわけだ。

無駄に小綺麗だが、所々黃ばみの目立つリノリウムの床が広がるエントランスホールにると、付の型と男型のアンドロイドがキッチリ同じタイミングと角度で深々と頭を下げる。

「「こんばんわ。本日はどのようなご用件でしょうか?」」

これまた全く同じタイミングで発された來客用の、しノイズの混じった言葉に、ギルバートはこの新聞社の現狀を理解する。

『もう30〜40年前の型だ。チューンアップさえされてない。まあ、新聞社なんて金のない所はどこもこんなものか』

時代の趨勢に、當然のように取り殘された古城のような高層ビルの一階は、遠い過去の人が思い描いた未來像のような、どこかノスタルジックな雰囲気が漂っていた。

こそ自然なものの、瞬きすらしない不気味な目のアンドロイドたちをペストマスク越しに凝視しながら、ギルバートは切り出す。

「社會部にお勤めの南雲記者にジェーン・紗琥耶・アークより言伝がある、とお伝えください」

僅かに視線を下げた型アンドロイドが、何事かを確認している間、男型アンドロイドはジッとギルバートを見つめ続けていた。

「南雲は知らないと申しております。失禮ですが、お客様のお名前を伺ってもよろしいですか?」

「そうですか。では南雲記者にお伝えください。“一昨日のジェーンとの睦事は奧様のお耳にることになるだろう”と」

すると、それまで沈黙を続けていた男アンドロイドから、今までと違うの聲が発される。

「お引き取りください。私はそのような脅迫には屈しません」

それは、間違いなく上階から通話してきた南雲の聲そのものだった。

「これはこれはレディ南雲。突然の訪問、誠に申し訳ございません。高潔なジャーナリストらしくご自分の不義を棚に上げて私を脅迫者と誹るその膽力、業腹ですが服いたします」

慇懃無禮は百も承知の謙りで膝をついての禮を決め、ギルバートはペストマスクの奧から男アンドロイドを睨みつける。

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