《ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~》第三百五十三話 アラタ王の茶番

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第三百五十三話

アーカイトは肩を怒らせ、床を踏みぬかん勢いで廊下を歩く。そして父であるアラタ王が待つ部屋に向かった。宴の途中であるが、アラタ王に抜け出してくるように言われたからだ。

「父上、ここですか」

重い扉を開けてアラタ王が指定した部屋にると、そこは狹い部屋だった。窓もなく家も椅子が一つ置かれているだけ。扉も分厚くほかに部屋もないため、誰かが聞き耳を立てることは不可能。アラタ王が談に使用する場所だった。

アーカイトが部屋の中を見回すと、部屋には二人の人影があった。椅子に座るのは、白髪に王冠を戴くアラタ王の姿だった。そしてその前にはフードを被った者が一人、膝を付いて頭を垂れている。顔は伏せているため見えなかったが、丸みを帯びたつきからであることが分かった。

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「よく來たな、アーカイト。まぁこっちにこい」

アラタ王が右手で手招きして、アーカイトを右橫へと招く。

「さて、アーカイトや。ロメリアはなかなかやるようだの。まさかあの狀況からガンガルガ要塞を落とすとは思わなんだ」

アラタ王は椅子に座しながら呵々と笑う。

「笑っている場合ですか、もはやロメリアを処刑することは、できなくなったのですよ」

「そうだな。処刑するどころか、追加の補給と援軍を送ったばかりだからな」

アラタ王の指摘に、アーカイトは顔を顰めた。

ロメリアの勝利の報告を聞き、國ではロメリアを支援すべきだという意見が多勢を占めた。アーカイトは反対したが周囲に押し切られる形で、ヴェッリを始め國に殘っていたロメリア二十騎士に五千人の兵士と補給資を與え送り出した。國のロメリアの手勢を追い出すことに功したが、ロメリアを支援するなどはらわたが煮えくり返る思いだった。

「なぜ私の言う通り新たな將軍を送り、ロメリアを更迭してくださらなかったのです。これではロメリアの功績を認めたことになってしまいます」

「無茶を言うな。そんなことをすれば、連合軍の前で我が國の不和をさらすことになる。そうなれば各國がき出すぞ。ロメリアを亡命させ、我が國に攻め込んでくるかもしれん。もちろん、ロメリアを先頭にしてな」

アラタ王の指摘にアーカイトは二の句が告げられなかった。それが事実になればライオネル王國は勝てない。ロメリアは國民と兵士に絶大な人気がある。ロメリアが先頭に立って攻め込んでくれば、進んで道を開けるだろう。

「ロメリアは大きくなりすぎた。もはや政治的にやり込めることは出來ん。別の方法をとる」

「別の方法?」

「決まっておろう。暗殺よ」

アラタ王が顎で跪くを差す。どうやらこのはアラタ王子飼いの暗殺者らしい。

「しかし父上。ロメリアの周りには、アルビオンを始め二十騎士が護衛としてついております。功するとは思えません。それにロメリアを暗殺すれば、我々が殺したと疑われます」

アーカイトはアラタ王の軽はずみな行を止めようとした、

もちろんアーカイト自、ロメリアを殺せるものなら殺したい。しかし王家とロメリアが反目しあっていることは周知の事実。ここでロメリアが暗殺されれば疑いの目は王家に向く。ロメリアは兵士や國民に人気がある。場合によっては國が割れるに発展するかもしれない。

「國におる時はそうかもな。しかし遠征の地であればまた別よ。アーカイトよ、ロメリアを脅威と思っているのは我らだけと思うか?」

「それは、どういう意味でしょう?」

「我らと同じく、連合軍の各國もロメリアを危険視しておる。奴らとて、ロメリアが敵になることを警戒しているはずだ」

アラタ王に指摘され、アーカイトははたと気付いた。各國の王族や將軍達は、ロメリアが軍勢を率いて自國に攻め込んで來ることを想定しているのだ。

「ですが我々がロメリアを暗殺すれば、不和を突き各國が我が國に侵攻してくる。父上が先ほどおっしゃったではありませんか」

「だから、我らが殺したことにしなければよかろう。ロメリアを警戒した他國が、ロメリアを暗殺したことにすればよいのだ。適當な証拠を造すればそれでいい」

「しかしそんな茶番、他の國が信じるとは」

「いいや信じる。茶番と分かっていても、各國は乗ってくるはずだ」

語るアラタ王の目には確信のが宿っていた。

「今回の遠征では、どの國も被害が大きすぎた。ディナビア半島が手にったとしても足りん。そこに他國がロメリアを危険視するあまり、暗殺すればどうなるか? 戦爭の功労者であるロメリアを暗殺したとなれば、これは明確な裏切り行為。ロメリアの復讐を掲げてその國に攻めり、手にれた國を山分けするだろう。我らの仕業と気付いていても乗ってくる」

アラタ王の言葉を聞き、アーカイトはなるほどと納得する。

どの國も利益はしい。見えいた噓と分かっていても、大義名分があれば乗ってくる。それにこの方法ならば、我が國は被害者だ。ロメリアの死は逆に國の結束を強める働きを持つ。

邪魔者を排除しつつその罪を他者に著せ、さらに利益を得て自國を強化する。たった一手でいくつもの効果を生み出していた。

「濡れを著せる相手だが、ハメイルは同盟があるから無理として、ヒューリオンとフルグスクも無理か。殘るはヘイレントとホヴォス。まぁホヴォスが順當か。あの國は各國の恨みも買っているようだしな」

アラタ王は連合軍の名前を指折り數え、ホヴォス連邦に濡れを著せると決めた。

「しかし父上、肝心の暗殺が功するとは限りません。失敗すれば我々の関與が見します」

「安心しろ、仕込みは済んでおる。ロメリアの元にはシュピリを潛り込ませてあるからな」

シュピリと言われ、アーカイトは誰のことか分らなかった。だがすぐにロメリアにつけただと思い出す。

「あんなのが役に立つのですか?」

アーカイトは眉間に皺を走らせた。覚えているのは世間知らずの小娘だという印象しかない。ロメリアの悪評を吹き込めば簡単に信じたが、逆に言えばすぐに他者に作される主がないことの証明でもある。

「立たんだろうな。あれは素直で、そして馬鹿な子供だ。今頃ロメリアに取り込まれておるだろうよ」

「では、どうやって」

「おい、見せてやれ」

疑問に思うアーカイトに対し、アラタ王はひざまずくに聲をかける。するとそれまで伏していたが顔をあげ、フードを外して素顔を曬す。

の顔を一目見て、アーカイトの疑問は一瞬にして氷解した。

「なるほど、確かにお前ならばロメリアを殺しきれるだろう。行け! 我らの前にロメリアの首をささげよ!」

アーカイトが命じると、は右手をに當てて恭しく頷いた。

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