《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》リッドの見解2
「あれ、そうなんですか?」
クリスは首を傾げた。
「うん。僕達は當事者な上、帝都と離れた辺境からの発信になるからさ。父上も帝都で頑張っているみたいだけど、なかなか大変みたい」
エルバ達が行った誤報の発信により、多くの人に先観が持たれてしまった。
こうなると、どんなに正しい報を伝えても言い訳がましく聞こえてしまう。
報発信者が當事者であれば、尚更ね。
でも、信用できる商會の言葉なら、多は聞く耳を持つはずだ。
「人の噂に戸は立てられない以上、噂の対策は新たな噂で上書きするしかないと思うんだ。クリス達の方がその辺はうまいでしょ?」
「承知しました。サフロン商會にも連絡して、正しい報の流布にご協力します」
「ありがとう。でも、くれぐれも狐人族の領地には暫く近づかないようにしてほしい。バルディア領を襲撃した奴らの所在も不明な上、エルバ達の行う挑発の矛先がバルディア家と関係が深い人達に向かう可能も十分に考えられるからね」
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「はい。その點も注意していますからご安心ください」
クリスは、白い歯をみせて自信ありげに頷いた。
帝都に続く道は、狐人族の領地とは真逆に位置しているから、襲撃される可能はかなり低い。
それに帝國で騒を起こせば、それこそ帝國と帝國世論を敵に回すことになる。
エルバ達が、會談決裂から今までのきで生み出した、彼等にとって好都合な今の狀況を自ら壊すような真似は、さすがにしないだろう。
そして、クリス達に『通信魔法』を扱える鼠人族三姉妹の末っ子、セルビアを同行させるのは、ラヴレス公爵家との商談を円に進めるためだけじゃない。
萬が一のことを考えての部分もあるわけだ。
「・・・・・・それに、私の側にはエマもいますから」
僕が考えていることを察したのか、彼は自の隣に座るエマに目をやった。
「はい。こう見えて、私は結構強いんです。そうですね・・・・・・なくとも獣化した私は、一対一でしたらディアナさんやカペラさんにも後れを取らないと思いますよ」
エマは八重歯を見せて微笑むが、すぐにハッとして「あ、今のは言い過ぎたかもしれません」と舌をペロッと出して可く會釈する。
「はは。わかった。二人にはにしておくよ。でもそっか。エマは貓人族だもんね」
自信が垣間見えた言から察するに、二人に後れを取らないというのは、彼の本心だろう。
し驚いたけれど、商売で大陸を回るクリスと商會には、常に危険が伴うはずだ。
加えてエマは獣人族だから、護衛としてそれぐらいの実力があって當然かもしれない。
「そうなんです。エマって過去に何度も盜賊を撃退しているから、実戦経験も意外と富なんですよ」
クリスが嬉しそうに補足すると、エマは謙遜するように首を橫に振った。
「いえいえ。私より、クリス様が放つ魔法の方が凄いですよ。突風で盜賊達が空を舞いますからね」
「ちょっと、エマ! あんまり余計なことを言わないの」
「へぇ、クリスは風の屬魔法を使うんだね」
そういえば、クリスが魔法を扱えると聞いたことはあるけれど、実際に見たことはない。
盜賊達を空に舞い上げる程の『突風』を起こす魔法か。
とても興味を掻き立てられるなぁ。
すると、何やらハッとして青ざめたクリスが、両手を前に出して勢いよく首を橫に振った。
「そんな大した魔法じゃありませんよ! エルフの大半が風の屬素質を持っていますね。私に限らず、エルフなら誰でも使える程度の魔法です」
「そうなんだね。でも、バルディア領にいるエルフはないからさ。今度、クリスの扱う魔法を教えてよ」
を前に乗り出すと、クリスが何やら観念したように俯いた。
「はぁ。畏まりました。では、ラヴレス公爵家との取り引きが終わって、時間ができましたらその時はお見せします」
「うん、クリスの魔法。楽しみにしてるよ」
期待しながら頷くと、僕は「それと・・・・・・」と話頭を転じた。
「本當に騎士団の護衛を斷るの? 父上からも了承をもらっているんだよ?」
ラヴレス公爵家に向かう帝國の移ではあるけれど、エルバ達と連してく帝國貴族が何か仕掛けてくる可能はある。
そのため、騎士団の護衛を以前から提案しているのだけれど、クリスからは丁重に斷れている。
「はい。有り難い申し出ですが、帝國でバルディア騎士団護衛の元に移とすれば目立ちますし、現狀だと変な噂も立ちかねません。対外的にあまりよろしくない上、ラヴレス公爵家の方々も警戒すると思います。大丈夫、クリスティ商會はそんなにではありませんからご安心ください」
クリスは、自信に満ち溢れた表を浮かべる。
「でも・・・・・・」と僕は言葉を続けようとしたが、彼は首を橫に振った。
「バルディア騎士団の皆さんは、領地の混とグランドーク家の対応で大変じゃないですか。それに、自衛できる力を持った商會に騎士団の護衛まで付けては、クリスティ商會をリッド様が依怙贔屓していると見なされかねません。どうか、ご容赦ください」
今までし違った毅然とした言葉に、クリスの意志が固いと改めて実する。
「わかった。この件はもう言わないよ。でも、何かあったらすぐにセルビアを通して連絡してね。彼を同行させるのは、そのためなんだから」
「はい、勿論です」と彼は微笑んで頷いた。
◇
クリス達との打ち合わせが終わり、宿舎を出ると外にはエレンとアレックス。
狐人族の子達が木炭車と荷臺が準備をしてくれていた。
「あ、リッド様。クリスさん!」
僕達に気が付いたエレンが、こちらに駆け寄ってきた。
「木炭車と荷臺の準備は終わりました。いつでも出れますよ」
そう言うエレンの顔は、煤でし汚れている。
「ありがとう。でも、エレン。顔がし汚れているよ」
「え⁉ す、すみません」
彼が慌てて顔を服で拭っていると、し丸みのある耳が頭に生えた小柄なの子がやってきた。
「リッド様。お待ちしておりました」
「セルビア。君もここにいたんだね」
「はい。いつでも出発できるように待機しておりました」
彼は、ペコリと頭を下げる。
セルビアは、第二騎士団の中で言葉遣いや禮儀作法がしっかりしている子の一人だ。
クリス達に同行させても、彼なら問題を起こしたりはしないだろう。
「あ、そうだ。改めて君に紹介するね。クリスティ商會の代表のクリスと彼を補佐しているエマだよ」
二人に目をやると、セルビアは「はい。よく存じております」と畏まった。
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