《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》クリス達の出発
「バルディア家に來る時にお世話になった方々ですから、よく存じております。クリス様、エマ様。改めて、セルビアと申します。本日より、よろしくお願いします!」
「こちらこそよろしくね。セルビア」
クリスとエマが優しく答えると、彼は嬉しそうに目を細めた。
彼達のやり取りが終わると、顔が綺麗になったエレンが手を挙げる。
「えっと、よろしいでしょうか?」
「あ、ごめん。それで、木炭車と荷臺は準備完了なんだよね?」
「はい。それで、故障時のことを兼ねた人員なんですが、予定通りトナージ君を同行させたい思います」
エレンはそう言うと、木炭車を整備しているゴーグルを掛けた男の子に目をやった。
狐人族のトナージは、エレンとアレックスに技者として將來有と太鼓判を押されている子だ。
木炭車は、故障時の事を考えて、技者である狐人族もしくは猿人族の子を一人は必ず同行させている。
そして今回、その一員に選別されたのがトナージというわけだ。
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勿論、これにはエレンとアレックスの思も絡んでいる。
帝都に行った際、トナージはクリスに々なお店を案してもらう予定にもなっているのだ。
エレン達は、バルディア家に仕える前、大陸をあちこち転々としていた時期がある。
その時々で、學んだ技や得た発想というのは、今とても役にやっているそうだ。
トナージの將來を見據えれば、とても良い機會になるだろうと、エレン達は言っていた。
「それなら、一緒に行けば良いんじゃない?」
話を聞いた時、そう提案すると、エレンは自分の尖らせた口の前に人差し指を立て、その指を舌打ちに合わせて橫に振った。
「リッド様。それじゃ、駄目なんです。自分の目で見て、じて、考え、悩んで、閃かないと進歩はありません。まぁ、可い子には旅をさせろというやつですよ。ボクとアレックスがいると、ついつい頼って何でも聞いてきますからね。ボク達が側に居ることで、トナージ君の長が止まってしまう・・・・・・そんなことだって時にはあるんです」
エレンは「ふぅ」と息を吐くと、さみしそうにどこか遠くを眺めた。
「そ、そうなんだ。エレン達も々と考えてくれているんだね。じゃあ、僕から言うことは特にないよ」
こうして、狐人族のトナージがクリス達の乗る木炭車の整備士として同行することが決まったのである。
「リッド様。トナージ君の同行は予定通りで問題ありませんか?」
木炭車の整備に沒頭しているトナージを見つめて回想にふけっていたけれど、エレンに聲を掛けられてハッとした。
「あ、うん。問題ないよ」
「畏まりました。では、木炭車はいつでも出れますよ。あと、クリスさんとリッド様の打ち合わせの間に荷も荷臺に積み込み終わっています。念のため、再確認されますか?」
エレンが尋ねると、クリスは首を橫に振った。
「いえ。ここに來る前に確認は終わっていますから、私達が持ち込んだ荷を荷臺に移して頂いたなら問題ないと思います」
クリスはそう言うと、畏まってこちらに振り向いた。
「では、リッド様。クリスティ商會はラヴレス公爵家との商談に向けて出発します」
「うん。よろしくね」
僕は頷きながら右手を差し出すと、彼はその手を力強く握り返してくれる。
両陛下に初めて獻上する時も、クリスはしっかりと商談を功させてくれた。
きっと、今回も彼なら大丈夫だろう。
その時、「リッド様!」と名前を呼ばれた。
反応して振り向くと、ダナエとディアナがこちらに走ってやってくる。
「二人とも、どうしたの?」
聲を掛けると、ディアナが息を整えて會釈する。
「申し訳ありません。メルディ様を見られませんでしたか? 木炭車を見たいと仰せになって、あちこち走り回っている間に見失ってしまいまして・・・・・・」
「え? 僕は今ここに來たばかりで見ていないけど・・・・・・誰か見た?」
そういえばこの間、メルは帝都に行くクリスにお土産をお願いして、見送りたいと言っていたっけ。
周りの皆に尋ねると、エレンが手を挙げた。
「さっき見ましたよ。いつものクッキーとビスケットを連れて、宿舎の屋上から木炭車を見てみるって仰っていましたけど」
「屋上⁉ ありがとうございます。すぐに向かってみます」
「もう、メルディ様。勝手にあちこち行っては駄目ですと、いつもあれだけお伝えしておりますのに!」
ディアナとダナエは焦った様子で一禮した。
最近のメルは、以前にも増して足が速くなっている。
普段の武修練や騎士見習いの子達に混ざって行う武修練の賜だろう。
でも、こんな弊害が出ているとは知らなかったな。
兄として、し申し訳ない。
「あはは。いつもごめんね」
彼達のきに合わせて僕も頭を下げるが、顔を上げると二人の姿はなかった。
「・・・・・・あれ?」
「リッド様。お二人とも、急いで行っちゃいましたよ」
クリスは、宿舎に向かって走る二人のメイドの後ろ姿を指差した。
「あ、本當だ」
騎士団上がりのディアナの足が速いのは當然だけれど、意外にもダナエも俊足だ。
メルとの追いかけっこがダナエの足を結果的に鍛えているのだろう。
今度、ダナエにしいを聞いてみようかな。
ふと上を見上げると、宿舎の屋上から僕達に向かって手を振るメルの姿が目にった。
でも、クッキーとビスケットの姿は見えない。
きっと、メルの足下にでもいるのだろう。
そう思いながら、僕はメルに手を振った。
クリス達が乗り込んだ木炭車は荷臺を牽引して、第二騎士団の宿舎から帝都に向けて出発。
その際には、宿舎の執務室で事務作業をしてくれていたファラとアスナ、カペラも出てきて皆で見送った。
この時、ファラは僕と目が合って嬉しそうに目を細める。
良かった、しは機嫌が直ったみたい。
そう思ったのも束の間、彼はすぐにハッとして、プイッと視線を逸らしてしまった。
その仕草は、見ている分にはとても可らしい。
まだ、ご機嫌斜めらしい。
苦笑していると、やり取りを見ていた周りの皆は「毎度、ごちそうさまです」と目を下げていた。
何故?
見送りが終わると、ファラとアスナはレナルーテの文化を中心とした蕓事の練習があると新屋敷に向かった。
ファラは、僕に最後までツンとしていたけれど。
まぁ、そんなところも可いけれどね。
彼達と別れると、僕はディアナとカペラと宿舎の訓練場に移する。
今日のお晝から、第二騎士団のとある子達に協力をお願いして特殊な訓練を行う日でもあったからだ。
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