《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》100 彼のためにできること 3

フェリクス様は一國の王だ。

彼にしか判斷できない多くのことがあるはずで、ものすごく忙しいことは言われなくても分かっていた。

そのため、私が目覚めて以降、私のために多くの時間を使ってくれていることを、ずっと申し訳なく思っていた。

その日、いつものように私の部屋を訪れてくれたフェリクス様を見上げると、これまでのことについてお禮を言う。

「フェリクス様、これまでたくさん散歩に付き合ってくれてありがとう。おかげで、私にも力がついてきたわ」

フェリクス様は私の言葉を聞くと顔をほころばせた。

「それはよかった」

どうやら機嫌がよさそうねと安心しながら、私は勇気を出して次の言葉を口にする。

一歩、一歩。まずは散歩からよと思いながら。

「それで……、今後はこれまでよりも長い時間をかけてお散歩をしようと思うの。あっ、もちろん調を見ながらで、決して無理はしないわ!」

話をしている途中で、フェリクス様が心配そうな表を浮かべたので、慌てて無理はしないことを補足する。

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「ただ、いつもあなたの時間を奪っていることが申し訳ないから、今後はできるだけ一人でお散歩をするつもりなの。あっ、もちろん騎士を付けるし、きつくなったらすぐに休憩するわ!」

言いたかったことを口にしたところ、フェリクス様が驚いたような表を浮かべたので、々と対策を考えていることを付け加えた。

できるだけ気を遣って話をしたつもりだったけれど、配慮が不十分だったようで、フェリクス様はショックをけた様子でかすれた聲を出す。

「ルピアは私が邪魔になったのか?」

「もちろん違うわ。今言ったように、もうし長めにお散歩をしようと思っただけよ。でも、フェリクス様が忙しいのは分かっているから、一緒だとどうしても急いで切り上げなければいけない気持ちになってしまうの。だから、今後は長いお散歩をする時は、フェリクス様抜きでやるのはどうかなと思って」

分かってほしくて丁寧に説明すると、今度は別の質問をされる。

「ディアブロ王國に戻るために力を付けるのか?」

「いいえ、舞踏會に參加するために、力を付けておきたいと思ったの。できることならもう付きをよくして、見苦しく見えないようにもしたいわ」

正直に答えると、畳みかけるように質問を重ねられた。

「これ以上? 君は今でも完璧にしいのに、これ以上しくなったら、何とかして君と話をしたいと考える連中が、舞踏會で列をなすんじゃないかな」

前半部分は聞き流すとしても、後半部分は想定外のものだったため、私は驚いて尋ね返す。

「えっ、皆さんと話をするために、私は舞踏會に參加するのよね?」

それなのに、フェリクス様は私が貴族たちと話をすることを、困ったことだと考えているのかしら。

私の発言の正しさを認めたのか、フェリクス様はそれ以上反論してこなかった。

代わりに、暗い聲でつぶやくとがっくりと肩を落とす。

「……君の可らしい聲を他の者にも聞かせるのか」

その言葉を聞いて、このところずっと困っていたことが、心の中で言葉になる。

『どうしよう。次々に口に出されるフェリクス様の本音はあからさま過ぎるわ』

私はどうすればいいか分からなくなり、頬を赤くしたまま口をつぐむと、先日、私室でフェリクス様と話をしたことを思い返した。

―――10年前のフェリクス様と私は、思っていることをお互いにほとんど口に出さなかった。

そのため、相手の気持ちを取り違えてしまい、誤解を生んでしまった。

その反省を踏まえ、二度と同じことを繰り返さないよう、今後はできるだけ気持ちを口に出していこう、とフェリクス様と約束をした。

したのだけれど……。

そして、その際にフェリクス様は、『今後、私は機會を見つけては、思っていることを全て口にする』と宣言していたけれど……。

きっと、思っていることを全て口にするというのは、こういうことではないはずだ。

心の中でしているべきを一から十まで言葉にすることでは、絶対にないはずだ。

フェリクス様はそれほど大きな気持ちを込めていないのかもしれないけれど、私は聞いているだけで気恥ずかしくなるのだから困ってしまう。

そのうえ、褒められる狀況に慣れていないので、上手い返事をすることもできない。

そのため、ここ最近はずっと、申し訳ないと思いながらも聞こえていないふりをしているのだ。

フェリクス様は優しいから、全て分かったうえで見逃してくれているのだろう。

「……分かった。力を付けるのは君のためになることだ。そのことを否定することは私にはできやしない。けれど、ミレナと騎士たちを必ず同行させると約束してくれ」

しばらく沈黙していたフェリクス様だったけれど、やがて諦めたようにそう返してくれた。

嬉しくなった私は、笑顔で彼に約束する。

「ええ、約束するわ!」

「ありがとう、し安心できたよ。それで、今後はどのあたりに散歩にいくつもりだい?」

フェリクス様がれてくれたことが嬉しくて、私はぺらぺらと今後の計畫について彼に語った。

私の後ろでは、ミレナが何か言いたそうな表で私を見ていたけれど、私がその表に気付くことはなかった。

數日後、私は満を持して調理場に顔を出した。

10年前に私を溫かく迎えれてくれた人々に、私は元気だということを伝えたくて、馴染み深い人々と順に顔を合わせることにしたのだ。

初めはギルベルト宰相とビアージョ総長。

それから、護衛騎士のバルナバ。

今回は、料理長のブルーノだ。

10年ぶりだし、調理場はいつだって忙しいから迷だろうし、彼らがせっかく作ってくれた料理を私は殘しがちだから顔を合わせづらいし、と訪問しない理由はいくつも見つかったけれど、思い切って調理場に足を踏みれる。

皆の反応が分からなくて、びくびくしていたのだけれど、ブルーノ料理長を始めとした料理人たちは私に気付くと、歓聲を上げて取り囲んでくれた。

「王妃陛下!」

「ああ、ご心配しておりました! 何と、立って歩けるまでに回復されたのですか?」

「10年振りにお姿を拝見して安心しました! お立ち寄りいただきありがとうございます!!」

初めはこまらせていた私だったけれど、歓迎されていることが分かると、おずおずと皆を見上げる。

「あの、皆に心配をかけて申し訳なかったわ。それから、食事を殘してばかりでごめんなさい」

「とんでもないことです!」

ブルーノは驚いた様子で私の言葉を否定してきた。

彼にとって、食事を殘されることは1番悲しいことだろうに、そのことを微塵もじさせない態度に謝する。

私は彼が作ってくれた料理を思い浮かべながら、これまでの謝の気持ちを言葉にした。

「いつも私のために、特別のお料理を作ってくれてありがとう。あなたが私のために開発してくれたふわふわの白パンは私の好になったわ。おかげで、しずつ食べる量が増えてきて、今では白パンを丸々1つ食べられるようになったの。それから、キノコりのサラダも大好きだわ」

つらつらと好について語っていたけれど、話している途中で、ブルーノは私が魔であることを知らないはずだと思い至る。

そうであれば、私がずっと眠っていたことを知らないはずだから、その間、私の料理はどうなっていたのかしらと気になった。

「あの、ブルーノ、この10年間の食事は……」

下手なことは言えないから、ブルーノに話をあわせようと考えたのだけれど、彼は言い差した私を見て心配そうに眉を下げた。

「はい、ここ何年もの間、王妃陛下の食事にはスープだけを提供させていただいておりました。そのため、量的にも栄養的にも足りていないのではないかと、心配していました。しかし、本日お元気な様子を目にすることができ、非常に安心しました」

スープ?

聞いたことがない話が出てきたため、先を促すつもりで尋ねるような言葉を口にする。

「そのスープは」

「はい、毎回材料を変え、栄養を考えて作っておりました。そのため、いつも飲み干してくださることに、嬉しさと安堵をじておりました」

まあ、ということはフェリクス様が代わりに飲んでくれていたのかしら。

彼は律儀に、私が魔であるというを最小限の者たちの間で守ってくれていたのね。

ありがたいことだわと謝していると、正にそのフェリクス様の聲が響いた。

「やあ、ルピアじゃないか、偶然だな」

びっくりして振り返ると、食を持ったフェリクス様が調理室のり口に立っていた。

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