フクーベの治癒院で勉強中のウイカと、ミーリャ達と冒険中のオーレンと別行で、森の住み家を獨りで訪れたアニカ。

今日は、ウォルトさんにあることをお願いしにきた。

住み家に辿り著いてドアをノックすると、ウォルトさんが中から顔を出す。

「ただいま！」

「お帰り。お疲れ様」

「今日は、修練と冒険のおいに來ました！」

「お茶しながらゆっくり聞こうか」

招かれて、臺所に一直線。

私とお姉ちゃんは、修練のあとでもない限り、手伝わないという選択はない。疲れているときは、「回復するのは大切だよ」と手伝いを斷られる。

ウォルトさんのおかげで、お茶を淹れるのも上手くなった。他の冒険者にも褒めてもらえてるけど、まだまだだ。

お茶を淹れて、共に居間へ移した。

「冒険ということは、何かクエストをけたの？」

「ちょっと面白いクエストがあったので、けてみました！容は、『寶探し』です！」

「寶探し？珍しい依頼のような気がするね」

「指定された場所から寶を持ち帰るんですけど、寶が何なのか気になりませんか？Ｃランクのクエストなんで、めちゃくちゃ危険ではないと思うんですけど」

「気になる。寶が何かというのは、教えてもらえないんだね？」

「そうなんです！ちょっと不思議なクエストです！」

勢いよくテーブルにを乗り出すと、ウォルトさんはふいっと目を逸らした。

…ふふっ♪

を強調するアピールが効いてる。最近、待の長が始まった。まだまだ大きくなるから、楽しみに待ってて下さいね。

このには、ウォルトさんのが込もった料理から摂取した栄養が詰まっている。恩返ししないと！

口に出さなくても、好きなのはバレてますから～！

ただ、適度なアピールでないと私を見てくれなくなるので、匙加減が難しい。ウォルトさんは、出會った頃から変わらず照れ屋なのだ。

「寶を探すクエストって、何処に行くの？」

「ダンジョンです！『月炎(カタフーニャ)』って名前なんですけど、知ってますか？」

「知ってるけど、寶の存在は知らなかったよ」

「それなら、一緒に探せますね！」

「場所がし遠いから、弁當も準備しておこうかな」

「お願いします！あと、今日泊まってもいいですか？」

「もちろん」

やったね！

倒れるくらいまで修練を頑張ろう！多分、お姉ちゃんは忙しくて來れないけど、サマラさんやチャチャも來ないのかな？

もしそうなら、夜にドキドキ作戦を決行しよう……なんて考えていると、パッカパッカと軽快な音が聞こえてきた。

「これは、蹄の音…？」

「友人が來てくれたみたいだ。アニカにも紹介するよ」

「ありがとうございます！」

馬に乗った友人？それとも、チャチャが言ってたリリサイドとドナかな？

どちらにしても會ってみたいので、一緒に出迎えよう！

「ウォルトさん。音がどんどん近づいてきますけど、止まる気配が…」

「いつもこうなんだ。ドアを見てて」

「ドアですか？………うわぁ！！」

ビヨーン！と、ゴムのようにドアが室側にびた。この形は、馬の腳…？

元に戻ったところで、ウォルトさんがドアを開ける。

「ウォルトさん！お久しぶりです！」

「ヒヒーン！」

「お久しぶりです。遠いところまでお疲れ様でした」

私も外に出ると、白馬にがり槍を背負ったがいる。

「休まずに來ました！……ん？」

と目が合う。

「アニカ。こちらはボクの友人で、カネルラ騎士のテラさんだよ。騎馬は、カリーっていう名前なんだ」

「テラさん…と、カリー…」

ゆっくり歩み寄る。

これは…初めての覚。

「テラさん。こちらは、ボクの友人で冒険者のアニカです」

「アニカ…」

テラさんがカリーから降りて、互いに向き合って立ち……がっちり固い握手をわした。

「テラさん。初めまして！冒険者のアニカです！」

「アニカさん。初めまして！新米騎士のテラです！」

「カリーも初めまして！綺麗な並みだね～！」

「ヒヒン！」

「立ち話も何なので、中へどうぞ！」

「お邪魔します！」

「いや…。アニカ…。それはボクの臺詞…」

ウォルトさんのツッコミはほっといて、テラさんとカリーを招きれる。

私…いや、私とテラさんは瞬時に理解したのだ。

私達は、似たもの同士だと。

★

「ん～！味しいです！」

「相変わらず絶品ですね！お腹を空かせてきて正解です！」

「ヒヒン！」

「ありがとうございます」

修練するつもりだったけど、遠路はるばるテラさんとカリーが來てくれたので、先に食事をすることになった。

「ゆっくり話してて」とウォルトさんに言ってもらったので、料理を待っている間に互いの自己紹介は済んだ。

「ウォルトさんの言う『いつもお世話になってる騎士』の方がテラさんだったんですね！」

「私の方がお世話になってるけど！アニカならわかるよね！」

「わかりすぎます！」

「だよね～！」

ノリが合って、もう一人の自分を見てるみたいだ。格だけなら、お姉ちゃんより私に似てる。年齢もお姉ちゃんと同じ歳らしくて、急に姉が増えたような覚。

「今日は、ウォルトさんに何か用があるんですか？」

「修練の果を見てもらいに來たの！」

「修練って、騎士のですか？」

「うん！槍と魔法ね！」

「テラさんは、騎士なのに魔法使いなんですか？！すっごぉ～！」

「全然凄くないよ！どっちもまだまだだから！」

「まだまだが口癖になりますよね」

「なる。ならざるを得ないというか」

「わかります！」

「だよね～！」

気持ちがわかるなぁ。他の人達も、同じ様に刺激をけてることがわかって嬉しい。

わかってないのはウォルトさんだけ。

「アニカとテラさんの格が似てると思ってたのは、勘違いじゃなかったかな」

「そうなんですか？」

「會ってもらいたいと思ってたんだけど、理由もないのに會いに行くのもどうかと思ってたんだ」

「水くさいですよ！家にはいつでも遊びに來ていいんです！ウォルトさんの友人なら、誰でも歓迎しまするので！」

「今度、王都に行きます！」

「どんと來い！友達も一緒に來ればいいよ！」

「テラさんも遊びに來て下さい！その時が楽しみです！」

いやぁ。會話が楽しくて、食が進む進む！

それからしばらくして…。

「アニカ…。細いのにめっちゃ食べるね…。うっぷっ！！苦しい…」

「ヒヒン…」

「私はもっと大きく育てないといけないので！」

何を、とは言わないけど♪

満腹でダウンしたテラさんを居間に置き去りにして、ウォルトさんと一緒に後片付けを軽く終わらせる。

「この後は、修練するかい？」

「もちろんやります！テラさんも一緒に修練しませんか！」

「やる～っ！！やらいでか！」

「先に外で待っておくよ」

「了解です！」

「し、しまったぁ～！まだ直ぐにけない～っ！」

ウォルトさんはそそくさと家を出て行く。

「テラさんは、何で悔しがってるんですか？」

「アニカ…。私は悔しいの…！」

テラさんから『いつものくだり』について説明をける。

「なるほど！何回もやり過ぎて、読まれちゃってますね」

私の貫頭作戦と同じ轍を踏んでる。

「最後まで言わせてくれないんだよ！慣れって怖いねぇ～！」

「そういうときは変化が必要です！ウォルトさんは、學習能力が半端じゃないんで！」

「変化って…どんな？」

「そうですね…。目の前でいきなり著替え始めるとか！」

「ただの変態だよ！」

「テラさん…。あのウォルトさんの予想を裏切る必要があるんですよ？『み、見れニャい～！！』の表を見たくないんですか…？」

「それは見たい！」

「だったらやらなきゃ！ならやってやれ、です！」

「…よぉし！次は策を練る！」

お姉ちゃん達からは、私がこんなじに見えてるのかぁ～。…ちょっとおバカに映る。

とりあえず、テラさんもウォルトさんのことが好きだと直ぐにわかった。多分、テラさんも気付いてるだろうし。

だったら…四姉妹の三として、新たなライバルの出現を歓迎しようじゃないか！

「何かあった？」

心配になったのか、ウォルトさんが戻ってきてくれた。

「何もないですよ！いやぁ～、それにしても暑いですね！」

「ちょっ！？テラさん！？」

「どうかしましたか？」

「なんで急にぐんですか！？」

「食後で暑いので」

とぼけながら服をぎ始めたテラさんを見て、ウォルトさんはめちゃくちゃ焦ってる。即実踐に移す豪膽さに、『これは手強い』と思いながら、笑いが止まらなかった。

★

「ぶはぁ～！疲れたぁ～！そして、やられました！」

「私も、もうけません！」

「水を持ってくるよ」

２対１の模擬戦闘を終えて、ウォルトさんはカリーと一緒に住み家へ向かう。

私とテラさんは大の字で空を見上げる。更地は、ウォルトさんがこまめに魔法で草刈りしてるから、ふかふかで気持ちいい。このまま寢てしまいそう。

「アニカ、ありがと！魔法での援護は助かったし、騎士団ではできない戦法に気付けた！」

「こちらこそ！騎士のきは冒険者と違って、勉強になりました！」

騎士と一緒に闘うなんて、中々できない経験。

「起き上がれないくらいの完敗だけどね！」

「ウォルトさんは強くて、力お化けですから！」

「だよねぇ。……今日は、來て良かった」

「急にどうしたんですか？」

「アニカも……ウォルトさんのことが好きなんでしょ？」

「はい。テラさんもですよね？」

やっぱりわかるよね。

「そう！負けないよ！でも、良い子なんだもん…。変だけど、なんか嬉しくて」

「私もそう思いましたし、もっと手強いライバルいますよ」

「ウォルトさんはモテるよねぇ。絶対ライバルがいるってわかってた」

「後で詳しく教えますよ。一緒に泊まっていきませんか？」

「う～ん…。すっごく聞きたいけど、明日休みじゃないの。というか、私は訓練を休まないのが売りなんだ」

「じゃあ、今度王都に行ったら教えますね」

「ありがと！因みに…何人？」

「私の他に、３人います。全員強敵です」

「マジかぁ～！…気合いるぅ～！！」

話してると、ウォルトさんが戻ってきた。

「水どうぞ」

「「ありがとうございます！」」

「今からは、魔法の修練に切り替えましょう。アニカもいるのでし高度になりますが、２人ならできることも増えます」

「「はい！」」

「ところで、何が気合いったんですか？」

「げっ！？聞かれてました…？」

「そこだけです。言いたくないなら大丈夫ですよ」

「今は緒でお願いします！その、バレると思うので！」

「わかりました」

を潤して、テラさんと一緒に魔法の修練を始める。

「アニカの魔法は凄いね！さすが冒険者だなぁ！」

「テラさんも凄いです！」

テラさんは、ウォルトさんにしか魔法を習っていないらしい。つまり、滅多に會わないので、黙々と習ったことを反復してるということ。

それなのに、かなり魔法が磨かれていて、基礎がしっかりしてる。凄い努力家だとわかって尊敬する。

「武を扱いながら魔法を狙ったところに飛ばすのって難しいですね！コツとかありますか？」

「発する時の照準に誤差があるのだと思います。先ずは、かさずに飛ばすとわかりやすいです」

テラさんから槍を借りて、ウォルトさんは常時設置してる木に括りつけた的に穂先を向けた。

「見てて下さい。『氷槍』」

穂先から氷の欠片を飛ばし、見事真ん中に突き刺さった。

「すっごぉ～～！！めっちゃ遠いのに！」

「この修練から始めると良いと思います。炎でも同じです。近くから始めて、命中したらしずつ距離を遠くしていきます。次に、ゆっくりきながら確実に當てる修練をするといいです」

「なるほど！修行しますね！」

「剣よりも長い分、魔法攻撃も幅広くなります。たとえば…」

槍を真っ直ぐ天に掲げて、穂先で円を描くように回すと、放狀に氷が飛散する。かなり遠距離まで屆く魔法。

「こんなこともできますよ」

次は、の前で地面に立てるよう垂直に構えた槍を、グルグル回転させる。すると、徐々に地面が削れ始めた。

穂先から魔力の刃をばしてるんだ。

「このまま…」

ドーン！と前方に巨大な炎を放出する。

「どっひゃぁ～～！！」

「もう１つ見せますね」

頭上に槍を持ち上げて、グルグル回転させると、ゆっくりが浮き上がった。

「と、飛んでる！？」

「凄いです！！」

私たちが見上げるくらいまで昇っていく。

槍全から風魔法を下方に向けて噴出してる…。自分には魔法が當たらないように調整して…。

「魔法騎士を目指すテラさんなら、直ぐにできるようになります」

「だから無理ですって！！」

「あははははっ！頑張ってください！」

「アニカも他人事だと思って！！わかるでしょ！」

どこまでも私達と同じで笑ってしまう。

その後もいい汗を流して、充実した修練を終えた。

★

「汗をかいたから」とお風呂に向かうテラさんを呼び止める。

ウォルトさんは晩ご飯を作るために臺所に向かって、何故かカリーも後を付いていった。

聲は聞こえてないはず。

「テラさん」

「どうしたの？」

あるを渡す。これで、どうするかはテラさん次第。

居間で休みながら料理の完を待つ。

「アニカ。料理ができたよ」

「配膳します！」

ウォルトさんと一緒に料理を運び終えると、テラさんが浴室から出てきた。

「ウォルトさぁ～ん」

「はい、どうかしましたか…………いぃっ！？」

テラさんは、私とお姉ちゃん用の寢間著である小さな貫頭を著て立っている。

私より長が高いのに、わざと糸を解いて、更に裾を短くしたギリギリを攻めた格好。前を手で引っ張って、ギリ下著が見えないくらい。多分、後ろから見たらおが丸見え。

「この貫頭、かなり短くて」

「ちょっ…！テラさん！なんで、アニカの貫頭を？！いつも著替え持ってきてますよね！？」

赤くなって目を逸らすウォルトさんは可い。眼福、眼福！

「今日は忘れたので、アニカに頼んで出してもらいました！ちょっと裾を引っ掛けてしまって♪」

「そうですか！！それより大きいサイズもあるので、直ぐに著替えましょう！！」

「これで良いんですけど」

「ダメですって！風邪ひきますよ！」

かずに満面の笑みを浮かべるテラさん。慌てるウォルトさんの様子を見て満足げ。

私は貫頭を渡しただけで何も言ってない。それなのに、予想を上回る行を披してくれた。

貫頭を編んでくれたウォルトさんに気を使って、糸を解くのは私にはできない。本気合が伝わってくる。

明日、皆に強敵(ライバル)の手強さを伝えなくちゃ！