《気になるあの子はヤンキー(♂)だが、裝するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!》477 三時間目、あすかの場合
二人目のサブヒロイン、北神 ほのかとも契約を解除できた。
……というか、本人は何とも思っていないだろう。
教室にはまだミハイルが殘っているが、トリップしている際中だ。
彼が正気を取り戻すまでは、意思疎通が取れない。
今はただ待つことにしよう……。
もしまたキスをしたくなったら、10分以に抑えないとな。
そんなことを考えながら、ひとり廊下を歩いていると。
トイレの近くで、何やら人だかりが出來ていた。
「ねぇねぇ、あすかちゃん。テレビに出るって本當なの?」
「ドラマ化で主演って、すごくない!?」
「同じ高校に蕓能人がいるなんて……考えられないよぉ」
たくさんの子生徒が、一人のを囲んでいる。
姿はよく見えない。
蕓能人? そんな奴がこの高校にいたっけ?
首を傾げながら、男子トイレへとっていく。
小便の前に立ち、ズボンのチャックを下ろす。
瞼を閉じて、數秒間リラックスしていると……。
となりにも生徒が並んだようだ。
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鼻息を荒くしながら、用を足している。
かと思ったが、違う。
何も音が聞こえてこない。
「ふぅー! ふぅー!」
俺は瞼を閉じているから、相手の顔が見えないが。
すごく興しているようだ。
「ねぇ……ちょっと、無視するんじゃないわよ」
ん? オネエ言葉なのか?
まあ、今時。珍しい喋り方ではあるまい。
尿切れが悪いなと考えていたら、また隣りの奴が話しかけてきた。
「ちょっと! アタシがわざわざ話しかけてあげてんだから、こっちを向きなさいよ! タクヒト!」
最後の名前でようやく、目を開いた。
俺のことを『タクヒト』と言い間違えるのは、一人しかいないからだ。
ゆっくりと相手の顔を見つめる。
「お前……あすかか?」
そうだ、すっかり忘れていた。
三人目のサブヒロイン、自稱蕓能人の長浜 あすかだ。
艶がかった長い黒髪。そして、眉の上で綺麗に揃えたぱっつん前髪。
日本人形みたい。
「アタシがあすかじゃなかったら、誰になるのよっ!?」
ゴスロリの赤いドレスを著て、俺を睨んでいる。
相変わらず、自己主張の激しいだ。
「すまん、気がつかなかったんだ……」
「あんたねっ! この蕓能人であるアタシを置いて、トイレに行くとか。バカじゃないの!?」
「いや……ここ男子トイレなんだけど?」
尿切れが悪いので、今もチャックは閉じていない。
つまり丸見え狀態なのだが、あすかはお構いなしだ。
「アタシは蕓能人だからいいの!」
「関係ないだろ……」
「関係なくない! タクヒトはアタシのガチオタなんだから、黙っていうことを聞けばいいの!」
怒りを通り越して、呆れている。
そして、排尿中に聲をかけるのは、マジでやめてほしい。
生きた心地がしない。
※
とりあえず、手を洗ってから男子トイレを出ることに。
もちろん、子のあすかも連れてだ。
初めて會った時も、男子トイレに侵してきたからな。
他の生徒たちが被害をけていたら、トラウマで退學しかねない。
人気のない廊下に向い、改めて彼の話を聞く。
「それで……トイレまでって來て、何か用があったんじゃないのか?」
俺がそう問いかけると、急にしゅんとこまる。
「あ、あの……お、お禮を言いたかったのよ! でも、タクヒトったら。ここ最近學校に來なかったでしょ?」
「まあな、通事故とか……々と忙しくてな。それでお禮ってなんのことだ?」
「忘れたの? タクヒトが書いてくれた自伝小説よっ! 今、売れに売れて、自費出版なのに100萬部を超えたらしいの!」
すっかり忘すれていた……。
長浜 あすかという蕓能人も、頼まれて書いた小説も。
「そ、そうなんだ。良かったな」
「なによ、その反応? 嬉しくないの!?」
「だって俺はゴーストライターだし、売上もあすかや事務所の社長のもんだろ?」
「でも、タクヒトが頑張って書いてくれたのは、事実でしょ!」
「否定はしないが……」
頼まれて書いたものだし、特に思いれが無いのも事実だ。
「じゃあ、喜びなさいよね! あんたとアタシの合作よ! おかげでテレビドラマ化が決まったのよ? ローカル放送だけどね!」
「ほう」
ローカルねぇ……。
鼻で笑うと、あすかがそれを見逃すことはない。
「今、バカにしたわね! 全國的にも人気なのよ? おばあちゃんの家を改築するために、頑張る孫アイドルとして!」
「……」
そうだった。それを聞いたら、また涙腺が崩壊しそう。
あすかというアイドルは、い頃に両親に捨てられ、おばあちゃんに育てられた。
また、おばあちゃんをするがあまり、ボロい家を改築することが夢だったのだ。
そのために、アイドルとしてブレイクする必要がある。
「それでね、アタシの本を読んだ全國のおじいちゃん、おばあちゃんがしたらしいわ。『あすかちゃんみたいな孫がしかった』とか、『推しにしたいけど、演歌歌手がいい』とかね!」
やっぱり、かわいそうなあすかちゃん。というテーマがけたのか?
そりゃ高齢者は、泣くよな……。
てか、同で売れたのでは?
もうあすかというより、おばあちゃんの方が人気じゃね?
俺はそこに気がつき始めたが、あすかは構わず、自慢話を続ける。
「それでね、講演會の依頼が殺到しているのよっ! どんな風に育てたら、あすかちゃんみたいになれるかってね!」
「うぅ……」
辛すぎて涙が溢れる。
「別に泣くほどじゃないでしょ? でも、タクヒトに謝しているわ……そのおばあちゃん家の改築費が、無事に貯まったから」
珍しく、頬を赤らめて視線を床に落とす。
「そうか。なら良かったな、あすかも蕓能人として人気が出たし、おばあちゃん家もリフォームできるんだ。ボットン便所をウォシュレットトイレへグレードアップできるじゃないか」
これでおばあちゃんの膝にも、負擔がかからないだろう。
「そっちの夢は葉えられたけど……蕓能人としては、まだまだよっ! だいたい、ガチオタのあんたがアタシより、バズってんどうすんのよ? 一般人のくせして、博多駅で大々的なパフォーマンスをしちゃってさ! 」
「いや……あれは、仕方なくだ。あれは、事故に近いものだ。むしろ、バズってしくない映像だ」
俺がそう説明しても、あすかは納得がいかないようだ。
顔を真っ赤にさせて床をダンダンっと踏み始める。
「なによ? 人気が出て天狗になってるの!? タクヒトが言ったんじゃない? 畫アプリの『トックトック』を使って踴ればバズるって!」
「あ……」
そう言えば、こいつが所屬しているアイドルグループ。
もつ鍋水炊きガールズの事務所に呼ばれた際、売れるにはどうしたらいいか? と雙子みたいなアイドル。
右近充うこんじゅ 右子みぎこちゃんと左近充さこんじゅ 左子ひだりこちゃんに、アドバイスを求められた。
ダンスも歌も、トークも下手。
しかし、あのアプリを使えば、素人でも簡単にバズれる傾向がある。
特にを出すれば……。
と彼たちに教えていた。
「あれから、アタシたちはみんなで中學校の時に著ていた制服や服、ブルマとか水著を著て、踴りまくったわよ! でも全然、再生回數がびないし……腰振りダンスのしすぎで、ヘルニア手をする羽目になったわ!」
どんだけ踴ったんだ?
「す、すまん……。上手くアドバイスできなくて」
「でも、右子と左子が二人で撮った日常の畫はなんでか、バズったのよ! 『気取らない二人が可い』とか『この二人だけを見ていたい』とか。意味わかんないわっ! センターはアタシなのに!」
それは、視聴者の意見が一番當たっているのかも。
センターのあすかは、自己主張が激しいが。いざ本番になると、ド張の素人レベルだし。
でも、右子ちゃんと左子ちゃんは、質素な顔だけど控えめなところが、らしい。
「結局、もつ鍋水炊きガールズは事実上の解散よっ! 右子と左子だけ、獨立したユニットを組んで、『トックトック』で活しているわ……でも、アタシだって負けないんだからね! 今回のドラマで優として、売れてみせるわ!」
「そ、そうか……」
「ていうか、タクヒトってさ。ゲイならゲイだって、最初から言いなさいよっ! ノーマルだと思ってし好意を抱いていたのに!」
と頬を赤くするあすか。
今さらだよな……。
「すまん」
「別に差別する気はないわっ! ただゲイでも推し変だけは、許さないからねっ! これからは夫婦でアタシを推しなさい!」
ふざけるな、俺の嫁は俺だけが推しなんだ。
まあ々あったけど、あすかもちゃんと前へ進めている気がするので、良しとしよう。
サブヒロインとしては、小説に描く機會がなかったけど……。
とりあえず、おつかれさま。
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