《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》101 彼のためにできること 4

先日、フェリクス様に一人で散歩する旨を伝えたのだけど、彼が去った後にミレナから忠告されていた。

「今後、お一人で訪れる場所を國王陛下にお伝えしたりしたら、たまたま陛下と行き合わせる偶然が発生するかもしれませんよ」

まさかそんなことがあるはずないわ、と答えていたけれど、ミレナの予言通り、予想もしない場所で行き合わせてしまった。

滅多にない偶然があるものね、と驚きながらフェリクス様に質問する。

「フェリクス様、調理場にどうしたの?」

「昨日、晝食に食べた食を戻し損ねていたから、持ってきたんだ」

「王のあなたが? 自ら食を持ってきたの?」

絶対にあり得ない狀況を口にされ、理解が及ばずに目をぱちくりさせる。

通常であれば、それは昨日の食後に、侍の手によって履行される行のはずだ。

もしも履行されなかったとしても、王が自ら行う行ではないはずで、料理人たちが驚愕した様子を見せていることからもフェリクス様の普段の行でないことが見て取れた。

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ミレナを見ると、諦めてくださいとばかりに首を橫に振られる。

もう1度フェリクス様に視線をやると、満面の笑みで見返された。

「ルピア、今日は天気がいいから、溫室で食事をするのはどうかな。料理人たちに食べやすいをバスケットに詰めてもらって、花を見ながら食べるんだ」

「まあ、それはとっても素敵なアイディアね」

すごく楽しそうだわと思いながらも、ふと思い出したことがあってミレナの手元をちらりと見る。

「どうした? 何か予定があったかな?」

に私のためらいに気が付いたフェリクス様が尋ねてくれたので、ミレナが持っている茶葉の袋を見ながら答えた。

「いえ、そうではなくて、ミレナが懐かしい茶葉を手にれてくれたから、フルーツティーにして飲みたいなと思っていたの」

「そうか、私も甘いものは好きだから、ご相伴にあずかれれば嬉しいな。よければ、君がフルーツを選ぶ間待っているよ」

私が紅茶にれるフルーツを自分で選びたい気持ちと、その間彼を待たせることを申し訳なく思う気持ちの両方を読み取って、私が気にしないで済むようにさりげなく問題を解消してくれるフェリクス様に謝する。

私はどうしてもまだ遠慮してしまうところがあって、『誤解を生じさせないように思ったことは言葉にする』という約束を守れずに、言葉を呑み込んでしまうことがあるのだけれど、その場合はフェリクス様が正しく私の気持ちを読み取ってくれるのだ。

嬉しくなった私は、ブルーノに案されたフルーツ置き場で、フェリクス様の好みを考えた。

謝の気持ちを込めて、今日はフェリクス様の好きなフルーツティーを作ってみようと思ったのだ。

「フェリクス様は甘いものが好きだけれど、ただ甘いだけと言うよりも、獨特の後味が殘るものをより好むような気がするわ」

基本的にフェリクス様は食事を殘すことがないので、何が好かを推測するのは難しい。

そのため、この推測結果を導き出せたのは子どもの頃からこっそりと、私が夢を通して彼を観察してきた長年の隠によるものなのだ。

私はし悩みながらも3種類のフルーツを籠に盛ると、皆のもとに戻っていった。

選んだフルーツをカットしようと包丁を手に持つと、フェリクス様がぎょっとしたように目を見開く。

「ルピア、一何をするつもりだ?」

「ティーポットにれるフルーツをカットするつもりよ。カットする形と、ポットにれる量で味が変わってくるから、好みの味にするためには私がカットするのが一番かなと思って」

丁寧に説明すると、フェリクス様は納得したように頷いた。

「……そうか。君の好みの味通りに作るためには、君がカットするしかないのか。しかし、刃を持つのは……」

けれど、最後には何事かを承服できない様子を見せたので、誤解を正そうと彼の言葉を訂正する。

「ああ、いえ、せっかくフェリクス様がご一緒してくれるのだから、あなたの好みに合うような紅茶をれようと思って」

「私の好みだって?」

驚いた様子で目を見開くフェリクス様に、私は悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「ふふ、私は普段からあなたを観察していたのよ。だから、もしかしたらあなたの好み通りの紅茶をれられるんじゃないかと期待しているの。……あら、でも、10年も経ったのだから、味の好みが変わっているのかしら?」

その可能を考えていなかったわ、とはたときを止めると、熱心な様子で否定された。

「全く同じだ! この10年で私の好みは何一つ変わっていないから安心してくれ!!」

「まあ、そうなの?」

母國の料理のお師匠様は、たくさんの食事経験を積み重ねることで嫌いだった味にも慣れてくるから、年を取るごとに好きになるが増えてくるて言っていた。

フェリクス様の料理の好みがこの10年で全く変わっていないということは、ずっと同じメニューばかりを食べていたのだろうか。

不思議に思いながらも、忙しいフェリクス様を待たせてはいけないと考え、フルーツの皮をむく。

すると、フェリクス様は私にくっつくほど近寄ってきて、私がフルーツをカットする様子を飽きずにずっと眺めていた。

その際、奧歯を噛み締め、全に力がっていたため、リラックスするように言ったけれど、「努力する」と返されただけで、彼はずっとを強張らせていた。

その後、カットしたフルーツを茶葉とともにティーポットにれて準備を済ませると、ブルーノ料理長もランチを詰め終わっていたようで、笑顔で籠を差し出してきた。

隣にいたフェリクス様が素早く籠を手に取ったので、お付きの侍従たちが驚いた様子で籠を持とうとしたけれど、フェリクス様は軽い様子で手を振ると私を見た。

「準備はできたかな?」

「ええ」

私は笑顔で答えると、フェリクス様とミレナとともに溫室に向かったのだった。

溫室の中には、ガラスのテーブルと座り心地のよさそうな長椅子が備えられていた。

必要な準備が終わると、ミレナが退出していったので、溫室にはフェリクス様と私の2人だけになる。

彼が籠から食べを取り出して並べてくれる間、私はティーポットにお湯をれ、しばらく待ってからカップに紅茶を注いだ。

「ルピア、いただくよ」

フェリクス様は興味津々な様子で紅茶を眺めていたけれど、飲むように促すとすぐにカップに手をばす。

それから、彼は紅茶のと香りを確認した後、ごくりと一口飲んだ。

その瞬間、ぱあっと表が明るくなったので、紅茶を気にってくれたのだとすぐに分かった。

「ルピア、とても味しいよ」

わざわざ言葉に出してくれるフェリクス様を見て、ああ、彼は以前からこうだったわと思い出す。

フェリクス様は10年前も、「味しい」、「嬉しい」といった気持ちは、言葉にして伝えてくれていたのだった。

味しいと言ってもらえて嬉しいわ」

そして、私も同じように嬉しい気持ちを伝えていたのだったわ。

そのことを思い出したことで、なぜだか10年前に戻ったような気持ちになり、私は穏やかに微笑んだのだった。

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