《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》バルディアの暗雲
化けを見破る訓練が終わると、カペラとダン達は第二騎士団の宿舎に帰り、僕はディアナと一緒に馬車で本屋敷の帰途に就く。
現在、父上が不在のため、本屋敷の管理を一応任されている関係上、最近は新屋敷よりも本屋敷で過ごすことが多くなっている。
尤も、執事のガルンがほとんどやってくれるから、特にすることはないけれど。
なお、ファラとアスナは、本屋敷の出りを自由に許可されている。
數名であれば、侍であるダークエルフのダリアやジェシカ達もファラと一緒であれば出り可能だ。
本屋敷には、帝國やバルディア領の重要な報が保管もされており、人の出りは厳重に管理されている。
そうした報を守る危機管理の都合上、ファラがバルディアに嫁いでくるにあたり、新屋敷が新造建設された経緯もある。
僕やファラが本屋敷に泊まっても、新屋敷の管理はカペラ。
清掃はメイド達がしてくれるから問題はない。
時折、メルが新屋敷に泊まりに來ることもあるからね。
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本屋敷に到著すると、あたりは夕闇に覆われつつあった。
「思ったより遅くなったなぁ。でも、夕食には間に合ったね」
攜持している懐中時計を確認すると、夕食には、まだし時間がある。
「はい。まだ、々時間があります故、さきに浴をされてはいかがでしょうか?」
「そうだね。結構、汗を掻いちゃったからそうするよ。ディアナもって來て大丈夫だよ。夕食の時間には、食堂に行くからさ」
実は、彼。
お風呂、もとい溫泉が大好きなんだよね。
非番の日でも、新屋敷、宿舎、本屋敷の溫泉の浴許可を出した時は、目を輝かせていたものだ。
まぁ、僕の専屬護衛で々と気苦労を掛けているからね。
これぐらいの特権は、ディアナに合ってもいいだろう。
「お心遣いありがとうございます。では、お言葉に甘えさせていただきます」
「うん。じゃあ、また後でね」
ディアナの提案をけれ、本屋敷にると、僕はディアナと別れてすぐに溫泉に向かった。
以前、クッキーが掘り當てた溫泉は、本屋敷、新屋敷、第二騎士団の宿舎、騎士団用とそれぞれに引いている。
おかげで、いつでも屋敷で溫泉が楽しめるようになっていた。
勿論、本屋敷で働く人達用の溫泉もある。浴槽はし小さめだけれどね。
でも、溫泉を楽しむには十分な大きさだろう。
溫泉で一日の汚れと疲れを洗い落とすと、そのまま食堂に向かった。
「あれ・・・・・・? メルは?」
見渡すと、いつも食堂に一番乗りしているメルの姿が見當たらない。
「それが・・・・・・クリスティ商會の見送りから帰った後、調が優れないと仰せで、部屋でずっと橫になられているそうです」
教えてくれたのは、先立って食堂に居たディアナだ。
「え・・・・・・⁉ クリス達が出発したのは午前中だけど、ずっと部屋に籠もっているの?」
目を丸くして聞き返すと、彼は「はい」と顔を曇らせ頷いた。
「ダナエからの報告だと、診察のため、サンドラ様を呼ぼうとしたらしいのですが、メルディ様が暫くすれば良くなると、頑なに止められたそうです」
「えぇ? それで、ダナエは?」
メルが、サンドラの診察を頑なに拒否した、だって?
確かに、彼には『狂気的』なところがあるけれど、さすがにメルにそんな対応はしないだろう。
ダナエだって、それがわかっているから、彼の診察に依頼しようとしたはずだ。
「ダナエは、メルディ様の部屋の前で待機しております。今のところ、変わった様子はないそうなのですが、屋敷の皆で心配しているようです」
ディアナの顔は曇ったままだ。
報告をけたメルの言は、何か解せないな。
「わかった。食事の前に、メルの様子を見てくるよ。ディアナは、ここに居て。ファラが來たら、僕がメルの部屋にお見舞いに行っていると伝えてほしい」
「畏まりました」
彼が返事をすると、僕は足早にメルの元へ向かった。
◇
メルの部屋が見えてくると、扉の前に控えているダナエがこちらに気付いた。
「あ、リッド様」
彼は、畏まって頭を下げようとするが、「そのままでいいよ」と聲を掛けて制止する。
「それより、ディアナに聞いたけれど、メルがずっと寢込んでいるって?」
「はい。サンドラ様の診察をけるよう勧めたのですが、しすれば良くなると、頑なでして。いつもはこんなことないのですが・・・・・・」
ダナエは心配そうに、扉を見つめた。
部屋の中にいるメルが気がかりなのだろう。
それにしても、ディアナの報告通りか。
まさか・・・・・・⁉ ふと脳裏に嫌な予が走る。
「と、ところで、メルがサンドラに人実・・・・・・じゃない。研究に協力したとか、そんなことあったかな?」
メルは僕同様、屬魔法の発に必要な屬素質を全て持っている。
加えて、魔法を教える先生は僕と同じサンドラだ。
そんなことはしないと思うけれど、何かの拍子にたがが外れる。そんなことも、萬が一あるかもしれない。
でも、ダナエは、はてな、と首を傾げた。
「いえ、そのようなことはありません。むしろ、魔法の授業は特に積極的で、ナナリー様のこともあり、サンドラ様のことはとても信頼されているご様子でした」
「あ、そうなの? じゃあ、僕の思い過ごしか・・・・・・」
そうだよね。
サンドラが、いくら魔法と研究が大好きといっても、人としての分別はわきまえているはずだ。
疑ってごめんよ、サンドラ。
心の中で謝罪を述べ、をなで下ろしていると、ダナエがきょとんと目を瞬いた
「・・・・・・? 思い過ごしですか?」
「あ、ごめん。こっちの話。でも、サンドラのことを信頼しているなら、余計に解せないね」
「はい。まるで、いつものメルディ様じゃないみたいです」
彼の一言で、脳裏に電流が走った。
「ねぇ! クッキーとビスケットは、メルと一緒にいた?」
「え? あ、そういえば、今日はお晝から見ていませんね。多分、屋敷のどこかには居ると思うのですが・・・・・・」
ダナエの返事を聞くと、僕は「ごめん!」と彼を押しのけて扉を強く叩いた。
「メル、僕だ! るよ」
「え、リッド様⁉」
驚きの聲を上げるダナエを振り切り、ベッドに駆け寄ると、メルが隠れるように被っていた布団をはいだ。
「メル。ちょっと、ごめんよ!」
「えぇ⁉ 兄様、どうしたの?」
メルは目を丸くするが、僕は直ぐさま『電界』を発して気配を探る。
そして、愕然とした。
彼は、メルじゃない・・・・・・スライムのビスケットだ。
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