《【書籍化&コミカライズ2本】異世界帰りのアラフォーリーマン、17歳の頃に戻って無雙する》21章:トゥルーヴァリアントショー(8) SIDE 由依

SIDE 由依

テレビ局へは、海ちゃんの能力で明になり、三人手を繋いでの白晝堂々の侵だ。

白鳥の力を使えばこんなことをする必要はないのだけど、それでは相手に警戒させてしまう。

夜に忍び込むという案もあったが、晝間の方が電子的なセキュリティは緩い。

姿を消せるのなら、晝の方がきやすいのだ。

ちなみにシスティーナは優のお仕事で別行である。

システィーナの巨大ポスターが天井からつりさげられたエントランスホールを抜け、セキュリティゲートを飛び越える。

局員が呼んだエレベーターに乗り、目的の場所へと向かった。

迷路のような局を迷わず進む。

図面は頭にっているのだ。

私達がまず向かった先は、カズがいなくなった日にシスティーナの撮影が行われたスタジオ。

今は別の番組収録の準備中らしく、スタッフがバタバタと出りしている。

周囲の魔力や、何かヒントがないか、注意深く探ってみる。

「何かじる?」

「いいえ、何も」

「私もです」

だめか……。

ここは一度、私が一人で見に來てはいるのでみ薄だとは思ったけど。

あの時は白鳥パワーでったので、案人という名の監視役が一緒だった。

「あれ……?」

雙葉ちゃんが疑問の聲をあげた。

「ちょっとこっちに來てください」

海ちゃんの能力で姿を消すため、バニーガール姿の彼を挾んで三人手繋ぎ狀態の私達は、雙葉ちゃんにひっぱられるようにスタジオを出た。

ついた先は閉鎖されたスタジオだ。

ドアを封印するように、『改修工事中』というテープが張られている。

海外の事件現場なんかで見るアレだ。

私が以前來たときはなかったはず。

「ここに何かあるの?」

もし何かあるとするなら、私が前回來た時は「怪しまれないように」テープを張っていなかった?

「微かな違和程度なんですが……」

「手分けして調べてみましょう」

海ちゃんから手を離し、スタジオを見て回る。

きれいに並べられた機材の上にはうっすらとホコリがつもっている。

なくとも、改修工事をしているようには見えない。

の匂い……?」

バニーガール姿の海ちゃんが、くんくんと鼻をならしながら、スタジオをさまよっている。

「神中は嗅覚も鋭くなるんだっけ?」

「そうみたい」

うさぎの嗅覚って人間の何倍だっけ?

そもそもバニーガールがうさぎなのかは議論の余地ありだろうけど。

「このあたりからする」

海ちゃんが立ち止まったのは、スタジオのすみっこだった。

「ナニもないわね」

「匂いもちょっと古いじ」

「誰のかわかる?」

「さすがにそこまでは……」

「だよね」

から臭がするわけじゃない。

「カズの匂いが殘ってたりする?」

「ちょっと時間が経ちすぎててわからないかも。床からは洗剤の匂いがすごくて……。の匂いもそれに混じってかすかにじる程度なの」

「なるほど……」

ここで何かがあったのは間違いなさそうね。

怪我人が出ただけという可能もあるけど、それだけでわざわざスタジオを一つ封鎖する理由にはならないだろう。

「誰かいるのか?」

スタジオのドアがゆっくり開き、男の聲が響いた。

それと同時に、周囲の音が消える。

ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!

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