《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》3話 昔々、アレフチームで

「な……え……は?」

「あれ、なんか見覚えのある奴もいるな。おーい、西表! 俺だ、俺! 味山只人!」

今、この場にいる全員が目の前で起きた事の報を正しく消化出來ていない。

「あれ……反応が悪いな。ガラス張りだから聲が屆いてねえのか?」

「……噓でしょ」

先生がぼそりと呟く。

「い、西表……呼ばれているけど」

宮本がぎぎぎとぎこちないきで西表へ聲をかける。

「いや……そ、そう言われても……」

固まる大人達。

笑うべきか、恐るべきか。

自分がどう反応すれば良いのかもわからない狀況。

「お、おい……オレは夢でも見てんのか? なんだよ、アレ……」

「わ、分からない……怖くない、けど、怖くないのが怖い……」

「さ、さっき、あかりがパチパチしてよく見えませんでしたけど、頭、ていうか、首なかったり、え、耳が浮いてませんでしたか?」

子供達もまた乾いた口をぱくぱくしながらぼやくだけ。

「うーん、マジで無反応か。なあ、西表。さっきのヤバそうな奴らとりあえずこの棺にぶち込んだけどそれで良かったよな?」

「……な、なに? なんなんだ、君は?」

「お、良かった、聲は屆くんだな。なんなんだってお前……あ、そうか。バカか俺は。時間が戻ってんならお前は俺を知らねえ狀況か。えーと、ほら、さっきも聞いたろ? 今、西暦何年の何月だ? イズ王國の朝から何日経った?」

味山の質問。

猛獣を目の前にし、きを最小限にしている時のように西表が周りの人間に目配せしている。

宮本が靜かに小刻みに頷いた。

「……西暦2032年の3月。イズ王國解から2日後だ」

「2日!? てか、3月!? よし、よし、よしよし! 悪くない、全然悪くない! いや、8月まで時間はないがそれでも全然悪くない! 西表! すぐに伝えたい事がある! ーー8月に世界が滅ぶぞ!」

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「…………は?」

味山の言葉に西表が目を丸くする。

達からすれば當然の反応だ。

「あー、そうだよな、そういう反応になるよな。でも、待て待て。えーと、なんだ。えーと」

TIPS€ INT2、説明ロールに失敗。話技能なし、スピーチチャレンジシステム無理

上手く説明出來ない。

それはそうだ。

タイムスリップした事を他人に説明する機會なんて練習することもないのだ。

「あ、あの〜アレ、やっぱり早く封印した方がいいのでは〜」

「先生?」

「や、やや。だって、その〜いをもっていをせいすとは言えですね〜その……ほら、明らかにアレ、おかしいでしょう?」

「し、しかし、先生。彼は何か説明をしようとしています。そ、それに我々は彼がいないと、こ、殺されていました」

の先生の言葉に鳴上が反論する。

特別であるが、しかし常識と禮節を重んじる彼らしい言葉だ。

先生。

糸目のメガネ人は彼の言葉にうんうんと頷く。

「でも、アレ危ないですよ、どう考えても」

「ーー先生のいうとおりです。・鳴

かしゃん。

鳴上の目からハイライトが消える。

瞬間、先生を見つめる彼が腕だけをガラス窓の向こう、つまり。

TIPS€ 警告 の発を確認

「ーーあ? っ、マジか!?」

ドオオオオオオオオオオン!!

青い雷鳴、音を置き去りにして味山のいた所に落ちる。

「待て!! 何を勝手な事を!!」

「西表さ〜ん。今チャンスですよ〜厄介な2つの封印指定対象は大人しくなり、殘るのはあの凡人だけ、多分ですけど、ここにいるメンバーなら相勝ち出來ます」

「は?」

「指揮は私が取りますので〜西表さんもご協力頂ければ幸いです〜ねえ、みなさ〜ん」

「「「「はい、先生」」」」」

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気付けば。

生徒達が皆、先生の前に直立している。

「……先生、生徒達に何を?」

「教育と信頼の積み重ねです〜いをもっていをせいす。良い言葉ですね〜」

「なんか臭えのがいるなァ……」

「ーーヒッ!?」

ベタン。

強化ガラスに、男が張り付いている。

「ひっ」

「うわ」

「……ぁ」

先生、西表、宮本。

それぞれが小さな悲鳴をあげる。

人達をガラス越しに睨め付ける凡人。

黒焦げの、恐らく鳴上の雷は直撃したのだろう。

なのに、普通に焦げた煤だらけの顔で。

「お前さ〜なんかどっかで會った事あるか?」

ぎょろり。

白目がちな目は、メガネの糸目人へ向けられる。

「ひっ、やっぱり、生きてる……ひ、人違いでは?」

TIPS€ 先生の正は天邪鬼だ

ビキビキ、ばりん。

ガラスが割れた。

西表の権能は既に解けている。

「は?」

固まった先生。

勢いのまま、監視塔に飛び込む味山只人。

「人違いじゃねーじゃねーか!! ふざけんな!! たらこ!!」

「今はたらこじゃなゲバラァ!?」

どぎゃん!!

誰も反応出來なかった。

味山のドロップキックを顔面にモロにけた先生が吹き飛ぶ。

「わ、私、まだ、何もしてないのに……」

壁にベシャっと叩きつけられた彼、がくっと首を折る。

「あー、すっきりした。てめえなんか殺しても生き返るとか転生するとか言ってたなあ」

割と今回はいいじに進めれそうだ。

恐らくこの先の癌になる天邪鬼をすぐに見つける事ができた。

この後は、西表やニホンに未來の話をして、アレフチームと合流して、あとは、なんやかんやでーー。

「ぎゃははははは。素晴らしい未來が待ってんな」

酔いにまみれた男が笑う。

本人は割とうまくやっているつもりだ。

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つもりだった。

TIPS€ 耳の化・オーバータイム終了

ダンジョンの酔いと、耳の力の酔い。

そして、前回のイズ王國のクソ野郎との再會。

ノリノリになった味山はやらかした。

「そこまでだ、これ以上は見逃せない……」

強化された赤い空気の槍が、何本も味山を狙う。

「あ? オイオイオイオイオイ、西表、こりゃ何の真似だ?」

「……特級指定封印の対象には禮を言う! ありがとう! だが! だが、何故! 先生を襲った!? 頼む! 止まってくれ!」

「あれ……?」

味山が首を傾げる。

なんか、自分が思っていたテンションとサキモリの連中の反応にズレがある。

「先生!? 噓、そんな……」

「……止まれよ、化け

「それ以上、先生に近寄るのは許さない」

「ゆ、勇気、勇気を出すのですわ。……化けに報いを」

「……ん?」

なんか、めちゃくちゃに殺意を向けられている。

あれ? なんで?

酔いがし落ち著いてきた味山くん。

ここに來て、なんとなく自分の行いを振り返る。

1.多分ヤベエ奴扱いされて封印されていた所からそれをブチ破った。

2.でも、なんかヤバそうな奴らを代わりに封印した。善行。

3.その後、イズ王國でやらかしてたバカを見つけたのでぶちのめした。

4.天邪鬼は多分正を隠して、ニホン部に馴染んでいる。

IQ3000(自稱)を誇る味山の頭脳が回転する。

「西表、その話を聞いてくれねえか?」

「聞きたい……聞きたいさ! だが、理解してくれ! 君は、君はなんだ!? イズ王國の時もそうだったが、今はもうさらにどうしようもなく理解、出來ない!」

西表の顔が、くしゃくしゃになっていく。

あの最悪の未來で追い詰められていた時も同じ顔をしていたような。

まるで、敵を見つめる顔だ。

落ち著いて考えてみると、だ。

達の立場で考えてみると、自分のムーブはかなり――。

「……もしかして俺、今、ギリのギリで敵扱いされるじ?」

「「「「「ギリのギリじゃねえよ」」」」」

「ギャ」

ドオオオオオオオオオオン!!

雷鳴、、槍撃、狐火。

全ての攻撃が味山へ向けられ、直撃。

「ぎゃああおああええああ!?」

普通に吹き飛び、監視塔から転がり落ちる。

なんどか、転がり、跳ね飛び、棺にぶつかる事によりようやくストップした。

「いって〜。容赦ねえな、命の恩人に向かってよ〜」

「……噓、効いてない?」

「いや、手応えはあった……でも、命に屆いていない」

「なんなんですの、あの人、いや、化け……」

「わからない、だが1つだけ、強い……」

じゃるるる。

傷が治っていく。

「うわ、が出てんじゃん」

なんだあいつら、いきなり攻撃してきやがった。

し、ムカつく。

いや、大丈夫。

話し合いだ、話し合いが大事なんだこういうのは。

俺が未來からやってきた事を説明して、サキモリに協力。

その後、8月までにあの未來をなんとか回避するために。

「すまん!! 待たせた! 狀況は!?」

「げっ、イズ王國の時のアイツ、マジで封印解いてるじゃん」

「っ、だから俺は言ってたんだ! 封印じゃなくてバベル島の近海にでも沈めちまえばいいって!」

「化けめ……あの式神をなんだと思ってやがる……!」

今更なんかたくさん出てきやがった。

どいつもこいつも話を聞こうとしない。

イラッ。

だめだ、ダメだ。こんなところでイライラしてたら。

「いや、だから、俺さ、未來からやってきたんだよ、西表。えーと、なんだっけ、ほら、なんか、ド忘れしたけど、合言葉もあるんだ。……あれ? 待って、なんだっけ?」

「……総員警戒、第一種戦闘配置」

「宮本君?」

渉の余地はあるかもしれないが、すでにこちらの人員に被害が出ている。サキモリとして、あの封印対象をそのままには出來ない」

「お、おいおいおいおいおいおい、落ち著けって! も、もう手は出せねえから! そこの眼鏡! そいつやべえ奴なんだって! 生かしといたらマジでろくな事になんねえぞ」

「……貴崎先生を洗脳したって本當なのか?」

「あ?」

白髪のが監視塔の上から味山を見下ろす。

青い槍先を、震わしつつもその狙いは味山から外れない。

「き、貴崎先生は! お前を庇って今、大変な事になってるんだ! ご、ごはんだって食べないほどにおかしくなってる! 戻して、貴崎先生をもとに戻してよう……!」

「だめだ、エリン。あまりアレを刺激するな」

「熊野姉さんもアレに洗脳されてまだ意識を戻してねえ……さっき先生にしたように容赦なくなんかしたんだろ」

生徒達が聲を震わし、怒りをにじませる。

貴崎凜に熊野ミサキ。

共にイズ王國を攻略した探索の仲間。

「なんとか、……なんとか言って、言ってよ! 貴崎先生も、熊野さんも、アンタがおかしくさせて――」

「大変な事ってなんだ」

「え……」

怒りというのは冷める事がある。

時間の経過、他者からの説得。ほかには――。

「貴崎がどうしたって?」

「「「ひっ」」」

自分よりも遙かに強大な怒りを目の前にした時だ。

「な、なんだよ、今の覚、式神とか怪種よりも……」

「飲まれるなよ、神種を狩った化けだ。イズ王國の破壊者だぞ、普通じゃないに決まってる」

「え……わたしの覚がおかしいの? なんも、じないんだけど」

わらわらと増えてくるサキモリ達。

彼らを見上げる味山の耳にヒントが響く。

TIPS€ 貴崎凜は現在、イズ王國でお前を庇ったゆえに、サキモリの會議にて謹慎、処分となった

「――クソが」

脳裏に巡るのは、最悪の未來。

赤い空、ドアからひらひら舞う赤い探索裝

貴崎が、何を思って死んだのか。

こんな人の話を聞かない奴らの為に、貴崎が死ななくてはならなかったのか?

TIPS€ 耳の化の影響・特”異常存在”が追加されました

TIPS€ 人類屬からの評価にマイナス補正が発生します

味山只人は、凡人である。

間違えても聖人ではないし、勇者でもない。

もしかしたら善人でもないかも知れない。

恩義には恩義を。禮儀には禮儀を。

そして。

「西表波に、アカデミーの生徒會。この人數なら、やれるんじゃないか?」

サキモリの1人がぼそりとらす。

味山の脅威を理解できない側の人間らしい。

「お、落ち著けって。イズ王國を墮として、今、あのマレビトと短パンを再封印した奴だぞ、そんな簡単にやれるかよ」

「き、貴崎さんだって、あいつを倒せば俺の事を……」

「く、熊野さんが傷ついたのってあいつのせいじゃ……」

「――なんだ? 何か、妙だ……き、君達、落ち著き給え! 敵意じゃだめだ、我々は護國の輩、今はけん制だけでいい!」

「……妙だな、西表、私も彼らと同様にあの男が恐いのに、どうもいらつく。……はは、流石だ」

「宮本君、君まで……?」

明らかに様子のおかしいサキモリのメンバー。

西表がし焦り始める。

酔いと興

それだけでは説明できない、味山へのサキモリが抱く嫌悪と恐怖。

TIPS€ お前はおぞましいものに深くれすぎた

TIPS€ 特”異常存在”は特”凡人”と共鳴する

TIPS€ 特”恐ろしい人”が追加された

TIPS€ お前は他人から悪意を向けられやすくなった

「ろせ……」

伝染するのだ、恐怖と嘲りは。

「殺せ……」

「殺せ」

「殺せ!」

「殺そう! 國を守る為に!」

「そうだ! そうだ! 今なら、俺達ならやれる!」

「イズ王國だって、アサマだって本當は俺達の手柄だったんだ! それをあいつが!」

「なんだ、これは、何をした、いや、何が起きてるんだ……?」

おそらく、ここにいるサキモリで正気なのは西表だけだ。

耳の化

世界の枠を外れた到達點に行ってしまった味山。

世界の守護者たる選ばれたサキモリ達は本能的に嫌悪を示す。

だが、彼らは知らない。

目の前の男にそういうのは悪手だ。と。

これがもし、英雄の語ならきっと英雄はそれでも世界を人を守るだろう。

悪とののしられ、

だが、これは英雄譚ではない。

凡人探索者の語だ。

「あほらし」

敵意には、敵意を。

「やめた」

味山只人のプランが1つ終わった。

平和に話し合いとトークでサキモリとニホンに危機を伝え、協力する。

最初はそんなつもりだった。

でも、もう、やめた。

「考えたらよー、負けたお前らの拭いをしてやろうって言うのに、なんで俺がこんな気を遣わないといけねえんだ?」

「なんか言ってるぞ」

「わけわかんない事言いやがって、そうやって貴崎凜をだましたんだろ!」

酔いに呑まれ、異への嫌悪と憎しみに呑まれたサキモリに理的な反応は期待できない。

「面倒だ、もう、面倒だ、そうだ、そうだった、総理殿の依頼は確か、全部ぶちのめせだったな」

「く、來るぞ!?」

「特級指定封印対象

誰しもが、

だが、しかし。

味山はニイッと笑って。

「俺(・)た(・)ち(・)で(・)な(・)」

地面に手を。

「報酬・接続(リワード・オンライン)」

TIPS€ 実績・”逆さ富士、登頂”を確認、実績・”イズ王國の破壊者”を確認、実績・”神話攻略・アサマ”

TIPS€ リワード解放・《全員集合・効果・仲間をその場に無條件で呼び出します》

「アレフチーム、仕事の時間だ」

「「「「「「「は??」」」」」」」

どろり。

地面が溶けた。

闇が溶けたような景、渦巻く地面、そこから現れたのは――。

「え……?」

「へ? あれ?」

「ここ、どこ? 扉を潛ったと思ったらーー」

TIPS€ バベルの大よりアレフチームを回収、時間のズレによりお前と別れた直後のチームだ

赤い髪。

の髪。

金の髪。

いつもの3人と、無骨な裝甲車。

「えっ、アジーー」

「タダ? なんで、お前、さっきなんか急に上へーー」

「クラーク、グレン。あーって言って」

「……あー」

「あー」

素直に口を開けるソフィとグレン。

それに向かってーー。

「ソォイ!!!!」

「「ゲボッ!?」」

味山の掌に現れた赤いと灰

それがソフィとグレンの口の中に放り込まれて。

「は!? た、タダヒト!? な、な、何してるの!?」

「お、アシュフィールド、なんかすげえ久々に會った気がするな。元気で良かった……」

「え、な、なに? そんな、優しい顔……じゃなくて!! 今、ソフィとグレンに何したの!? なんか2人とも陸に上げられた魚みたいになってるんだけども!!」

「ーーは、ハハ」

「ーーひ、ヒヒ」

ぐらり。

「え?」

2人が立ち上がる。

口から吹いていたあぶくを拭い、頭をふり、笑いを噛み殺しながらーー

TIPS€ 特殊イベント"ワンスアポンタイムインアレフ".・完了

TIPS€ ソフィ・M・クラーク、グレン・ウォーカーの同期完了

TIPS€ 魂の形を認識しました。新しい耳の技能取得の可能が生まれました

「――ぎゃはは」

「ははは」

「イヒヒ」

味山が、ソフィが、グレンが、笑い出す。

渓流の荒野の延長に今、彼らはいる。

「ぎゃははははははははははははははは!! ヘイ!!」

「ははははははははははははははははは!! へい! ヘイ!!」

「イ一ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!! へい!! ヘイ!! ヘーイ!!!」

ぱん、ぱん、グッ。

3人が向かい合い、肩を組み、手を鳴らし、打ち合い、回転。

スロースロー、クイッククイックスロー。

素敵なステップを友人と。

「「「イエエエエエエエエエエエイ!!!!」」」

満面の汚い笑顔で、3人が笑う。

「……3人がおかしくなっちゃった」

遠巻きに1人、ポツンと殘されたアレタ。

何もわかっていないのは彼だけ。

1人ぼっちで、そのステップを見つめーー。

「アシュフィールド!! お前なに、ボケッとしてんだ! こっち、こっち!」

でも、もう英雄は1人にはなれない。

「アレタ、ワタシの隣! ワタシの隣空いてるよ!」

「センセ! 鼻の下! がしたらマズイ顔になって……ぶほ! ブスすぎーーかへっ」

ソフィに鳩尾を蹴られたグレンがぐらりと崩れるもなんとか立ち上がる。

「ほら、アシュフィールド、早く円陣円陣!」

「え、ええ……なんなの、もう……」

そういいながらも、まんざらではない顔で円陣に參加するアレタ。

唯一記憶を持ち越していない彼だが、なんかよくわからないけどチーム全員揃ったからヨシになった。大型犬かな?

「よし、上出來だ、アジヤマ、さっそく合流出來て何より」

円陣を組んだまま、ソフィが素直に味山をほめる。

同期した記憶、魂。

合流だ。

「あの渓流も居心地悪くなかったすけど、なんかずっと視線をじてたっすからね。やっぱ自分のが一番っすわ」

グレンもまたニコニコ顔で肩を組んだまま、喋る。

「え、えっと、あたし正直何がなんだかあまりわからないのだけど……で、でもチーム全員揃ったって事よね? え、へへ、良かった、ほんとに……」

し涙ぐんだ目と聲でアレタが聲をらす。

「いや~すまん、々あったがこれで全員集合だな。うん。あーそれで、皆、さっそく相談なんだが……」

「ああ、みなまで言うなよ、アジヤマ。ニホンの説得と説明だろう? ふむ、々方法は考えている。だが、まずはここは1も2もなく友好かつ紳士淑的に話し合いの場をだね――」

「あーそれなんだけど、クラーク、すまん、ソレたぶん無理だわ」

「え」

・鳴

「呪式、起

「神よ、私に大悪を滅する力を」

「こんこん、こんっと」

雷が、呪いが、青い槍の投擲が、狐火が。

する教師を傷つけられた生徒達が、その元兇へ攻撃を放った。

「すげえ……學生がやったぞ!」

「お、俺達も続け!」

持ちは遠距離攻撃、それ以外は近接戦闘を、――を?」

盛り上がるサキモリ、しかし、一瞬で異変に気付く。

「――それで、タダヒト。これ、どんな狀況?」

世界は、その英雄を忘れている。

しゅる、しゅる、しゅる。

嵐だ。

嵐が全てをけ止めていた。

「あ……」

ぺたん。

異常存在を前にしてなお、折れなかった鳴上。

が腰を抜かした。

雷を放った若き才能。天候の力を司る彼がいち早く、その過ちに気づいた。

世界はすぐに、思い出すだろう。

現代最強の異能、忘れられた52番目の星が誰を指すのかを。

「あー、すまん、アシュフィールド」

「もう、説明してよ、説明を」

を尖らせる彼。アレタ・アシュフィールドが掲げた右手の先には球狀の嵐が。

生徒達が放った攻撃は全てそれに吸い寄せられ、け止められ、弄ばれている。

なんの苦労もなく。

夜歯を磨くくらいの労力で。

「……アジヤマ、察するに、……これ敵対ルートって奴かい?」

ソフィがじとーとした目つきで味山を見つめる。

「はい、ダメでした」

「マジか~」

曇りなき眼でうなずく味山に、がっくりとソフィが肩を落とす。

「まあまあセンセ、落ち込まないでっす。タダがやらかす事なんてある程度予測してたじゃないすか。賭けは俺の勝ちっすね。タバコごちになりまーす」

「はあ~仕方ないか……じゃあ、作戦変更で」

じゃきっ。

ソフィがため息をつきつつも、武骨なショットガンを肩に擔ぎ。

「え、そ、ソフィも、そんな簡単にやる気なの? 狀況理解できていないのあたしだけ? えっと、まあ、いきなり攻撃してきたのあっちだし、いいのかな」

「アシュフィールド」

「え、何、タダヒト」

味山只人は考える。

この狀況でアレタに戦ってもらう方法、言葉を。

TIPS€ 説得ロール開始――

だが、本人に説得や話の技能はない。

味山はまっすぐ、アレタを見つめて。

「な、なに、タダヒト、そんなまじめな顔で……え、えっと、なんだろ、あ、あたし、なんかおかしな事――」

嵐で攻撃をけ止めたまま、いじいじと空いたほうの手で髪をり始めるアレタ。

味山の視線はアレタのストーム・ルーラーへ。

やはり、規格外の力だ。

「すまん、あとで絶対説明する。――だから、今はお前(の力(ストーム・ルーラー))が必要だ」

「――は、はい」

肝心なところを伝えないままに、伝わってしまった。

アレタがぴっと背筋を正してこくこく頷く。

TIPS€ 説得ロール・ファンブル判定、あーあ

「な、なんなの、アレ」

「お、おい、アカデミーの子、持ちもいるよな……」

「か、雷をけ止めた……?」

慄くサキモリ。

今彼らは絶対に敵に回してはいけない連中を敵にしてしまった。

「さて、諸君、殘念だが荒々しい仕事の開始だ。今回はタフなネゴシエーションになりそうだね」

「いつもの事っすね、気にしないっすよ」

「いやーすまん、あいつら思ったよりムカついてさあ。でもまあ、俺達ならできるだろ」

「よくわからないけど、いいわ、降りかかる火のは払わなきゃね」

最前の探索者達が、今、ニホン最奧、ヨモツの國からサキモリを見上げる。

「タダヒト、仕事の目標は?」

「とりあえず目の前の話を聞かない連中をのめして、地上に出ようぜ、ここ空気悪いし、それでいいか、クラーク」

「異論はないよ、プランAはもうダメか。プランBに移ろう」

「プランBなんかありましたっけ?」

「ないね、そんなの」

軽口をたたきつつ、アレフチームが4人そろって相対する。

目標、前上方。

「味山只人、いや、違うな」

味山が言葉をいったん止める。

アレタを、ソフィを、グレンを視界にれて。

目標、ニホン閣府直轄外局・中央怪種指定即応対策本部”サキモリ――Ver2.0ニホン。

アレフチームVSニホン。

「――アレフチーム、探索開始」

――開戦。

読んで頂きありがとうございます!ブクマして是非続きをご覧ください!

凡人探索者1巻、2巻、まだ読んでない方いたら是非チェックしてみてね。

ダンワルも1巻、2顔出てます。異世界ものだよ。オススメです。

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