《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》アモンとの會談
「・・・・・・改革だと?」
父上が眉間に皺を寄せ、訝しむように聞き返すと、彼はこくりと頷いた。
「恥ずかしながら、我が領地に住む狐人族は、近い將來その數が激減。部族として立ち行かなくなるかもしれません。その理由が、父のガレスと兄のエルバが推し進める大軍拡に伴う重い稅です」
グランドーク家の軍拡政治により狐人族の領民が困窮している報は得ていたけど、まさかがそこまで迫しているとは思わなかった。
父上は「ふむ」と難しい顔を浮かべる。
「続けてくれ」
「はい。それでは・・・・・・」
アモンは父上に促されるまま、狐人族の置かれている狀況。
グランドーク家の行っている軍拡政治の問題點を語り始めた。
狐人族が軍拡政治を推し進めるようになったのは、ガレス・グランドークが部族長になった時からだそうだ。
エルバ・グランドークが人して政治に関わるようになってからは、その傾向はさらに強くなったらしい。
そして、數年前。
軍拡政治を止めようとしていたガレスの実弟グレアス・グランドークが、反逆者としてエルバに斷罪されてしまう。
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同時期、反逆に加擔したとされる豪族達が一斉に処刑されたことにより、軍拡政治を止められる者が居なくなってしまったらしい。
ドワーフに次ぐ武作りの才能を持つと呼ばれた狐人族。
かつては、武だけに止まらず様々なを作。
獣人國だけはなく、帝國、教國トーガ、レナルーテ、バルスト等、各國に輸出していて取引量も多かった。
でも、今の取引量は當時より大分なくなっており、見る影もないらしい。
理由は、軍拡政治により、武製作にほとんどの生産力をつぎ込んでいるからだそうだ。
結果、狐人族の領民は領外から得られる収がなくなり、軍拡による重稅を強いられているとのこと。
だけど、そんな領地運営を行えば、いずれ立ち行かなくなるのは火を見るより明らかだ。
ガレスやエルバでもさすがにわかりそうだけどな。
そう思った時、僕が考えたこと察したのか、アモンが「ここまで、父と兄上が軍拡を進めるのには、ある理由があります」と切り出した。
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「それが、今から約二年後に開催が予定されている獣王戦です」
「獣王戦というと、獣王國を統べる王を決めるため試合ですよね?」
「はい。リッド殿の仰る通りです。父と兄上は、次回の獣王戦で獣王になれると考えているようです」
曰く、獣人族の各部族から尤も武力と知力を持つ者が選別され、勝抜戦を行う。
歴史上、死者が出ることもあるほどに苛烈な爭いであり、勝ち殘った者が『獣王』となり、獣人國を統べる王となる。
エルバが王とれば、各部族に王命を下すことが可能となり、狐人族が抱える問題を解決出來る算段が付くらしい。
彼は説明が終わると、首を橫に振った。
「確かに、兄上が獣王とれば現狀の問題は解決するかもしれません。ですが、その間に苦しみ、死んでいくのは領民です。そもそも、獣王というれるかどうかもわからない不確定なものを頼り、領地運営をすべきではありません」
「それで、バルディア領の運営方法を學び、アモン殿が改革をしていこうと考えた。そう言うことか?」
父上の問い掛けに、彼はコクリと頷いた。
「はい。ですが、正直に申しますと、私の考えは狐人族の中では『異端』とされています」
「……つまり、アモン殿とエルバ殿達では本的に領地運営に対する考え方が違う。言ってしまえば、狐人族でも派閥が生まれていると?」
「確かに、ライナー殿のご指摘の通り、私の行いに賛同してくれる者は増えております」
アモンはそう言うと、室にいるリックや護衛の戦士達を見回した。
「今回のバルディア訪問に付いてきてくれた戦士達は全員、私の考えに賛同してくれた者達です。しかし、殘念ながら、『派閥』と言える程ではありませんでした」
「その言い方だと、何か風向きが変わったのですか?」
僕が聞き返すと、アモンはを乗り出した。
「はい。バルディア家の皆様には大変失禮なお話にはなりますが、我が領に潛むとされる過激派の起こした前回と今回の襲撃事件。これについて、父と兄達が行った対応に否定的な意見が出て、私の支持者が急激に増えたのです」
その言葉に、父上が眉をピクリとさせた。
勿論、僕も良い気はしない。
でも、彼が続けた話はとても興味深いものだった。
アモンは、以前から苦しんでいる領民を救い領地運営の改善を図るため、サフロン商會とかに繋がりを持ったらしい。
クリスティ商會との繋がりも検討したそうだけど、ガレスやエルバ達の監視も厳しく、あえて遠方のサフロン商會を選んだそうだ。
そして、自を支持してくれる領民に様々な日用品や品の作を依頼。
サフロン商會に適切な金額で販売をしたり、食料と換していたらしい。
弱強食の思想とはかけ離れた草の活とも言うべき彼の行為は、すぐに狐人族の中で知れ渡ることになる。
父であるガレスや兄のエルバ達の耳にもり、嘲笑されたそうだ。
でも、呆れられた結果、逆に誰もアモンの行いを咎めなかったらしい。
後ろ指を指されても、彼は細々と著実に取引量を増やしてき、しずつ形にした。
時間と共に実績を積み上げていく、豪族の支援者も現れ始めたという。
更なる発展と取引量増加を目指していた折、姉のラファ、妹のシトリーと共にバルディアの領地運営を學びに行く機會に恵まれる。
意外にも、その機會を與えたのはガレスだったらしい。
アモンの行いに支持者が出て來たこともあり、無視できなくなったそうだ。
そして、彼等が訪問中に発生した『工房襲撃事件』から始まる、バルディア家との亀裂。
平和的解決をむ、會談の決裂。
狐人族の過激派による帝國でのクリスティ商會襲撃拐事件。
バルディア家の長、メルディ・バルディアの拉致。
立て続けに起きた橫暴の數々は、ガレスやエルバを支持していた豪族の一部も難を示したらしく、『バルディア家と爭えば爭う程、グランドーク家もとい狐人族全が將來的に弱化してしまう可能がある。ここは、無暗に爭わず慎重に事を運ぶべきだ』という主張が強くなった。
その結果、皮にもアモンの支持者増加に繋がったそうだ。
そうして、バルディア家と再び行われる會談の使者にアモンが選別された、ということらしい。
彼の話を聞く、僕の中ではある疑問が生まれていた。
「……アモン殿が此処にきた理由は理解しました。ですが、それだと反逆者として斷罪された『グレアス・グランドーク』殿と同じ道を辿ってしまうのではありませんか?」
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