《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》アモンの戦士達
顔を上げて周りを見渡すと、室は黒い煙に包まれており、來賓用に裝飾された裝は見る影もない。
「う・・・・・・うぇ、ごほごほ・・・・・・」
気持ちがし落ち著いたせいか、人が自した事実を理解して吐き気に襲われる。
でも、すぐにあるがその吐き気を止めた・・・・・・怒りだ。
僕は口元を袖で拭うと、に手を當て目を瞑る。
狐人族がこの會談で何か事を起こす可能は考えていた。
だからこそ、相手の気配を察知できる電界を常時発していたし、騎士団長のダイナス、副団長と同等のルーベンスにも同席してもらったんだ。
だけど、まさか戦士が自を仕掛けてくるとは。
でも、何個か疑問がある。
自した戦士が言い殘した言葉と発の威力だ。
戦士達が獣化した姿は尾が三本だった。
以前、アモンが獣化した時と同等の力を持っていたはずだ。
目を開けて、傍にいる二人を見やった。
あれだけの力を暴走させたにも拘わらず、至近距離にいた僕、傍で震えているシトリー、呆然としているアモンは生きている。
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魔障壁を全力で展開したから防げたのか、それとも・・・・・・。
「リッド、無事か」
考えを巡らせていると、背後から父上の聲が聞こえた。
「はい。問題ありません」
返事し、傍で目を潤ませ、震えているシトリーに優しく微笑んだ。
「もう、大丈夫だよ」
「うぅ、あり・・・・・・がとう」
彼は消えそうな聲を発して、目を伏せた。
安否確認をする父上の聲に、次々に返事が聞こえる。
良かった、どうやら皆無事らしい。
をなで下ろした時、立ち込める黒煙の中からディアナとカペラがと現れ、僕の前に出た。
二人とも、黒い煤で服や顔が汚れている。
「リッド様。お気持ちは理解できますが、あのような危険な真似はおやめ下さい」
「ディアナさんに同です。私も肝が冷えました」
二人は、後ろにいる僕をジト目で睨む。
気持ちはわかるけどね。
でも、しょうがないじゃないか。
気付いたらがいていたんだからさ。
「あはは。心配かけて、ごめんね」
誤魔化しがてら頬を掻いていると、シトリーの傍で項垂れて呆然としていたアモンが、ふらふらとした足取りで立ち上がった。
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「どうしてだ。どうして、こんなことを・・・・・・」
彼は黒煙の中、無表に佇む狐人族の戦士を睨んだ。
「お前は知っているんだろう。どうして・・・・・・どうして、こんなことをしたんだ」
アモンの慟哭に答えるように、リックは獣化する。
その姿は、襲撃犯のクレアと同じ、尾の數が五本の白狐だ。
「全ては・・・・・・ガレス様とエルバ様のご指示です」
「な・・・・・・」
アモンは絶の表を浮かべた。
「やはり、そうか」
リックに答えたのは、前に出てきた父上だった。
その手には、グランドーク家からの親書がある。
さっき、アモンから渡されたものだ。
「これには、こう記されている。『バルディア家は、再三に亙り要求した獣人族の解放を斷固としてけれない。そればかりか、使者である『アモン・グランドーク』を殺害したこと。許しがたい事実である。従って、グランドーク家は三男アモン・グランドークの仇討ちと奴隷解放を目的とし、バルディア家に領地戦を布告する』、とな」
父上は読み上げると、アモン、シトリー、リックを順番に見やった。
「・・・・・・尤も、アモン殿とシトリー殿の様子を見る限り、この事は知らされていなかったようだがな。全く、舐めた真似をしてくれる」
やっぱり、そういうことか。
つまり、この會談は最初から茶番だったというわけだ。
帝國に宣戦布告ではなく、両家だけ行う領地戦を布告というのも小賢しい。
狙いはバルディア家のみと公言して、帝國全を敵に回さぬよう政治的な配慮。
逃げ道を確保する目的だろう。
「そ、そんな・・・・・・」
アモンが力なく歩き出して父上に駆け寄った。
「そんなはずはありません。私は、父のガレスから預かった親書に目を通しました。確かに、お伝えした容が記載してあったんです」
「・・・・・・では、ご自分の目で確認してみなさい」
必死の形相で縋ってくるアモンを憐れに思ったのか、父上は優しく諭すように親書を渡した。
彼は即座に目を通すが、愕然とし真っ青になると、両膝から崩れ落ちて項垂れる。
「く・・・・・・うぐ・・・・・・」
辺りに、アモンの悔しさを噛み殺すような震えた聲がれ聞こえる。
「アモン様。貴方は、捨て駒にされたのです」
獣化したリックが、淡々と告げた。
「・・・・・・リック。君を含め、戦士達はアモンを支持していたんじゃないのかい。どうしてこんなことをしたんだ。襲撃事件の時を振り返ってみても、君の彼に対する忠誠心が噓とは思えないんだけどね」
一連の自攻撃に、違和を覚えていた。
そもそも、父上がアモンからけ取った親書を見た時點で、攻撃を無言で仕掛ければ良かったはずだ。
わざわざ怒號を上げて襲いかかるなんて、奇襲の機會を自ら潰している。
勿論、それが有効な時もあるけど、こちら側の護衛がいる以上、全く合理的では無い。
僕の目の前で自したあの戦士。
彼は死の直前、「ありがとうございます」と言っていた。
あれは、シトリーとアモンを守った事に対する言葉としか思えない。
「リッド様の言う通りです。私を含め、戦士達は皆、アモン様の理想を今も支持しております」
リックはそう言うと、「ですが・・・・・・」と首を橫に振った。
「我等の『主君』は、狐人族の部族長であるガレス様です。グランドーク家に仕える戦士である以上、主君の命令は『絶対』です。それは、此処に居る皆様もご理解してくれるでしょう」
「そうか。でも、本當にそれだけなのかい? 君の本心がそれだけとは、思えないんだよ」
電界を通じて彼からじる気配は、強い意志。
決意や覚悟と言えるものだ。
でも、わずかに焦りのような、不安も伝わってくる。
「何か、ガレス達に弱みを握られているんじゃないのか」
リックは無言だが、眉をピクリとかした。
どうやら、図星らしい。
アモンが青ざめたままふらふらと立ち上がり、彼を見つめた。
「まさか・・・・・・ディジェと子供達に何かあったのか?」
「・・・・・・アモン様、その『まさか』でございます。私の妻と子供達の命は、ガレス様とエルバ様の手のにあります。しかし、私だけではありません。今回、アモン様に同行した戦士達全員、家族、人、一族郎黨。それぞれに大切な者の命が握られております」
「父上と兄上は、そこまで・・・・・・そこまでするのか」
アモンが顔を顰めて歯を食い縛る。
リックを含め、戦士達の言にこれで合點がいった。
彼等は、アモンを支持していたけど、彼等を目障りとじていたエルバやガレスに、これ幸いと捨て駒として使われたわけだ。
「なるほどね」と呟き、僕はディアナとカペラを押しのけて前に出る。
「アモンとシトリーには計畫を伝えず、噓の方針を伝える。そして、事前に計畫を伝える戦士達には裏切れないよう、大切な人を人質としたわけか。敵を欺くにはまず味方から・・・・・・ね。素晴らしいよ。実に素晴らしいかつ確実も高い、合理的なやり方だね」
「その通りです」
リックは淡々と頷いた。
込み上げてくるを抑えるため、僕はあえてニコリと微笑んだ。
「でも・・・・・・気にらないな。そのやり方は、実に気にらない。どうだろう、リック。君・・・・・・いや、君達全員。こちら側に寢返らないか?」
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