《気になるあの子はヤンキー(♂)だが、裝するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!》

怒り狂ったヴィッキーちゃんは、ウイスキー瓶を部屋中に投げ飛ばし、全て々に割ってしまった……。

ミハイルの説得もあり、どうにか落ち著きを取り戻したが。

依然と俺を睨んでいて鼻息が荒い。

蛇に睨まれた蛙のように、俺は黙って正座するのみだ。

「ねーちゃん。タクトの話を聞いてあげてよ! ほら、こうやってスーツまで著てくれたんだよ?」

「……それがどうした? あたいが知りたいのは、なぜミーシャがの格好を、させられていたかってことだ。それもあたいが一番嫌いなブリブリになっ!」

と語気を強める。もちろん、俺を睨んで。

確かに彼の言う通りだ。

俺たちのや結婚の前に、そちらの説明が先かもしれん。

「そ、それに関してですが……すみません。俺のわがままです……ミハイルが先に告白してくれたんですが。俺が『男とは付き合えない』『だったら付き合える』と言ってしまったことで、ミハイルが真にけて、裝しての子として振舞ってくれたんです」

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と説明し終えたところで、ヴィッキーちゃんの反応を見ると。

怒り狂うかと思ったら、驚きのあまり固まっていた。

「なっ……そんなことで、の格好をしていたのか?」

「はい。俺が悪いんです……最初からミハイルをれる覚悟がなかったので」

「じゃあ、ミーシャがよくの服や下著を買っていたのも、化粧品が部屋にあったのも、坊主のためだってか?」

「そうです」

「意味がわからん。男同士だろ……じゃあ、あれか。なんか知らない薄いエロ本。男同士のマンガ。あれも関係あるのか?」

そこだけは完全否定しておく。

「それは全然、関係ありません。ただの趣味だと思います」

「……」

一年間も隠していたので、報量が多すぎたようだ。

ヴィッキーちゃんは混しているようで、黙り込んでしまった。

怒りよりもショックが強かったようで、頭を抱え込むヴィッキーちゃん。

それを見たミハイルは再度、話し合いを試みる。

俺とミハイルが並んで座り、ローテーブルを挾んで、反対側にヴィクトリア。

「訳がわからん……。大ミーシャ、お前はそいつが最初から好きだったのか?」

そう指摘されると、彼の頬は一気に赤く染まる。

「う、うん! その學式でタクトに『可い』って言われてから……」

弟の素直なカミングアウトに、驚きを隠せない姉。

口を大きく開いて、ミハイルの顔を指差す。震えながら。

「たったそれだけで、男を好きになったのか? それはつまり同っていうやつだろ? あたいは親父とお袋が死んで、本當にお前を大事に育ててきたんだぞ。なのに、裝してまで坊主と付き合いたかったのか?」

「ごめん……オレは裝しても、しなくても本気だったよ。ねーちゃん」

「なっ!?」

ついに言ってしまったな。

俺があれこれいうより、弟に告白された方がよっぽど辛いだろう。

黙り込むヴィクトリアを見て、俺は好機と見た。

隣りに座るミハイルへ耳打ちし、俺に合わせるように頼む。

お互いの顔を見つめ合い、頷くと座り直し、正座になる。

「あのっ! 弟さんを々と傷つけたことは否定できません。でも、俺の気持ち……いや俺たちの気持ちは一緒です! それは今後、二人で一緒に生きること。結婚です! ミハイルの唯一の家族、ヴィクトリアさんにだけは、それを認めてしいんです。お願いします!」

そう言って、俺が頭を下げると、続けてミハイルも自の姉に気持ちをぶつける。

「ねーちゃん。オレ、本當にタクトが大好きなんだ! オレたちを、結婚を許してしいの!」

深々と頭をさげる彼を、隣りから覗いて見たが涙を流していた。

どれだけ、時間が経ったのだろう。

ヴィッキーちゃんは沈黙を貫き、何も答えてくれない。

「だ、大事な弟だったんだ……父さんと母さんが事故で死んだ時は、絶したよ。このまま、どこかへ逃げようかとも思った。でもまだいミーシャが、あたいのスカートの裾を摑んできたから、踏みとどまることが出來た。親父が殘した店を死にもの狂いで、盛り上げようと頑張った……つもりだった」

顔を上げると、ヴィッキーちゃんの瞳は涙でいっぱいだった。

「それがどうしたっ!? その弟がどこぞの知らない野郎と結婚だと? だいたい、坊主は男のミーシャが好きだと、ほざきながら、裝させていたじゃねーか! ミーシャの気持ちを無視して。自分ののため、を否定してるじゃねーか!」

返す言葉が見つからない。

の言っていることは、紛れもない事実。

俺は男のミハイルと付き合うことが怖くて、のアンナを、安心を選んだ……。

「そんな奴に、結婚なんて許すわけないだろっ! とっと帰れ、このクソ野郎!」

「……すみません」

「いいから、早く帰れ! 帰らないと坊主をぶっ飛ばすぞ!?」

「はい」

分かっていたことだ。

今日は帰ろう……あくまでも、今日はだ。

また何度でも、挨拶に來たら良い。

ヴィッキーちゃんが音を上げるまで、持久戦だ。

立ち上がり、深々と頭を下げると。俺はその場から立ち去る。

去り際にヴィッキーちゃんがぶ。

「ミーシャ、塩をまけ!」

だがこちらも負けるわけにはいかない。

いつか必ず、ミハイルを頂く。

覚悟を決めて、玄関へ向かい、紳士靴を手に取ると。

慌ててミハイルが追いかけてきた。

「た、タクト! もう帰っちゃうの?」

「ああ、仕方ないさ。今日は帰るけど、まだあきらめてない。次を考えている」

「タクト……オレもねーちゃんに認めてもらうように、頑張るよ!」

互いの顔を見つめ合い、揺るがないを確かめる。

「そう言えば、タクト。なんか忘れがあるよ?」

「へ?」

「このなんか重たい、紙袋だよ」

と彼が差し出すまで、存在を忘れていた。

親父がくれた『すみ酒』とかいうやつだ。

これさえあれば、どんな厳しい親でも結婚を許してくれる……とかほざいてたな。

どこがだよ、とツッコミたいぜ。

「ああ、それな。親父が用意してくれてさ。結婚を認めてもらえるようにって、『すみ酒』ていうらしいんだ。今回はけ取ってもらえなかったけど」

悔しさから、歯を食いしばる。

「そうなんだ……タクトのお父さんも、オレたちを応援してくれているんだ」

実の姉に反対されたことが、よっぽど辛かったのだろう。

目に涙をいっぱい浮かべている。

そして追い打ちをかけるように、リビングからヴィクトリアのび聲が聞こえてきた。

「な~にが、すみ酒だ。バカヤロー! そんな安酒でミーシャと換か? 絶対け取るか! さっさと帰れ、コノヤロー!」

酷い言われようだな。

でも、大事な弟のことだ。

時間をかけて、ヴィッキーちゃんに認めてもらうよう、頑張ろう。

ゆっくり立ち上がると、ミハイルから紙袋をけ取る。

「ミハイル。今日はこんな形になってしまったけど、また挨拶に來るから」

「うん……待ってるね、タクト☆」

その一言で、心に火がついたぜ。

何度でもやってみせる、今の俺たちなら乗り越えられる。

必ず。

する未來の嫁に背中を向けて、カッコよく立ち去ろうとした……その時だった。

「あ、ちょっと待ってタクト」

「え?」

「そのお酒ってウイスキーなの?」

意外な質問に、アホな聲が出てしまう。

「う、うん……そう聞いたけど。どうしてだ?」

「だってさ。せっかくタクトのお父さんが用意してくれたんだから。もらっておこうかなって。今のねーちゃん、あんなに怒っているけど、ウイスキーは大好きだから☆」

「そういうことか……いや、気持ちは嬉しいんだがな。すみ酒ってのは、結婚を許してもらえる前提で相手に渡すものらしい。だからヴィッキーちゃんが反対している間は、あげたくても渡せないんだ」

俺がそう説明すると、彼はうなだれてしまう。

「そっか……」

「ま、まあ、いつか渡せる時がくるよ。なんか親父が言うには、『ザ・メッケラン』の60年ものらしくてさ。ウイスキー好きなヴィッキーちゃんなら、喜んでくれるさ……」

言い終えた瞬間、背後に人影をじた。

右手が妙に軽いなと思ったら、持っていた紙袋が無い。

「あれ? 酒が……」

と言いかけている際中だが、背中にプニンと気の悪いが伝わる。

コレは宗像先生に近い、巨ってやつでは……。

「どこへ行く!? 我が家族よ!」

そう言って強く抱きしめるのは、先ほどまで、俺を罵倒していたヴィッキーちゃんだ。

「え……?」

「先ほどまでの無禮を許せ……。1回は反対しておかないと格好がつかないだろ、姉としてな。許そう、ミーシャとの結婚を。坊主に任せた、いやタクトよ」

「……」

噓だろ?

たかが、ウイスキーの1つでする弟を渡すのか。

「わーい! やったー! ありがとう、ねーちゃん☆」

「ハハハッ! あたいは最初から、タクトなら許すつもりだったさ。裝でも何でも好きにしろ!」

ヴィクトリア、最低な姉貴だった。

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