《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》宿る覚悟と意志
「殘念ですが、それはできません」
「どうして?」
リックは、僕のいをにべもなく斷った。
でも、彼の眉はピクリとき、電界を通じて僅かなの機微をじる。
彼は死ぬ覚悟をしているけど、敵意はない。
発している殺意も表面上だけであり、心は違うようだ。
もうし、探ってみるか。
「どうやら、人質以外にも何かあるみたいだね」
「・・・・・・我等は、此処に來る前、エルバ様の特別な魔法が施されております」
「特別な・・・・・・魔法?」
聞き返すと、リックは「こちらをご覧ください」と自らの服の襟をしずらした。
わになった彼のには、星形のような印が付いている。
丁度、心臓がある場所だろうか。
「魔法の仕組みや詳細は知りません。しかし、この魔法が施された者は、位置と生死が遠くからでもエルバ様にわかるそうです」
彼はそう言って襟を正すと、苦々しげに顔を顰めた。
「そして、今日の日沒までに我等が一人でも生きていた場合・・・・・・人質は、皆殺されます」
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「な・・・・・・⁉」
リックの告白に、この場にいた皆が目を丸くした。
彼等・・・・・・狐人族の戦士達が家族、人、子供といった大切な人達を救うためには、ここで命を捨てるしかない。
戦士が一人でも生き殘りがれば、連帯責任で人質は全員殺される。
エルバ達にとって、今後の邪魔になるであろうアモンと彼を慕う戦士達。
彼等を捨て駒かつ死兵として、バルディアに送り込んできたわけか。
ふと自した戦士の顔が頭を過る。
彼は・・・・・・戦士達は、大切な人達を人質に取られ、慕うアモンを止むなく裏切り、敵地で命を捨てる任務に就いたのか。
その心中、察するに余り有る。
「・・・・・・何とか、何とかならないのか。君達がアモンを裏切り、自したとして人質が絶対助かるとは限らない。奴は・・・・・・エルバは、信じるに値するのか?」
僕達とリック達が戦っても、喜ぶのはエルバ達だけだ。
彼等を何とかしてあげたい。
人は、死んだら生き返らない・・・・・・二度と語らうことはできないんだ。
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生き殘った家族だって、自分達のせいで大切な人が亡くなったと思い悩むことになる。
そんな思いから、言葉が発するが、彼は嬉しそうに笑って首を橫に振る。
「リッド様。貴方は優しい方です。ですが、エルバ様は約束を守る冷酷な方であり、我等がどんな形であれ生き殘れば、人質は全員殺されるでしょう」
リックはそう答えると、悔しそうに泣き崩れているアモンに視線を向ける。
そして、「アモン様・・・・・・」と切り出した。
「人は、ろうとした人にしかなれません。ですが、必ずしも良い條件には恵まれるわけでもありません。しかし、ろうという強い覚悟と意志がなければ、その人には決してなれないでしょう」
「君は、まだ僕が何かをすと・・・・・・信じてくれているのか?」
問い掛けに、彼は目を細めて頷いた。
「はい。我等は、エルバ様の捨て駒ではありません。アモン様に道を示す、燈火とるのです。どうか、我等の覚悟と意志を引き継ぎ、部族長とって狐人族の未來をお導きくださいませ」
「リック・・・・・・⁉」
アモンが彼の名を呟いたその時、本屋敷の別の場所で音が連続で響いた。
「どうやら、他の戦士達もき出したようですね」
「く・・・・・・⁉」
父上は顔を顰めると、部屋に隠し置いてあった剣を取り抜刀した。
「ダイナス、ルーベンス! この者の相手は私がする。お前達は、直ぐに狀況を他の騎士達に伝達。狐人族の戦士達は、自すら厭わない死兵だ。全員討ち取れ」
「父上⁉」
指示を出された二人は、「畏まりました!」とこの場を後にする。
くそ、本當にどうにもならないのか。
「父上。彼等は、人質を取られているだけです。何か・・・・・・何かできることがあるはずです!」
「お前の気持ちはわかる。だが、リックを含めた戦士達・・・・・・いや、エルバの狙いが何か考えろ」
父上がそう言うと、リックが微笑んだ。
「さすがです、ライナー様。そう、エルバ様が我等に指示したのは自攻撃だけではありません。ナナリー・バルディアとファラ・バルディアの拉致です」
「な・・・・・・⁉」
絶句するが、彼は淡々と言葉を続けた。
「本屋敷に奇襲を仕掛けたのは、我等を含めて一五名。新屋敷には、二〇名の戦士が向かっております。早くしないと、大変なことになるでしょう」
「そうか。ならば、容赦はせん」
父上は、冷淡な眼差しをリックに向ける。
「帝國の剣と名高い、ライナー・バルディア殿。貴殿とこうして相まみえること、狐人族の戦士として栄でございます。ですが、手加減はいたしません」
「良かろう。ディアナ、カペラ、お前達は手を出すな」
「承知しました」
二人は父上の指示に頷くと、僕、アモン、シトリーを守るように構えた。
「參ります!」
聲を荒らげたリックは、両腕の爪をわにし、目にも留まらぬ速度で突進する。
その場をくことなく、父上は剣を振った。
次の瞬間、辺りにが吹き荒れる。
父上が、リックの両腕を落としたのだ。
「まだまだぁああああ!」
彼は怯まず、き聲すら上げずに咆吼し、足技を繰り出して父上に再び襲いかかる。
「リック、止めろ。もう止めてくれ」
アモンが必死にぶが、彼は止まらずに笑った。
「夢なき者に理想なく、理想なき者に計畫なし、計畫なき者は実行せず、実行なき者に功はあり得ず。故に、夢なき者に功はありません」
そう答えると、リックのが発する。
「アモン様、夢を・・・・・・理想を捨てず、信念を貫いてください。はぁああああ!」
僕の目の前で自したさっきの戦士と同じだ。
でも、リックの実力であれば、威力は先程の発とは比較にならないだろう。
戦慄を覚え、咄嗟にんだ。
「父上! 彼は、自する気です」
「・・・・・・!」
瞬間、リックの心臓を父上の剣が貫いた。
「リック殿。やはり、貴殿は最初から・・・・・・」
父上が剣を抜くと、彼は力なく両膝を突いて吐した。
「どうか・・・・・・アモン様のことを・・・・・・」
リックは笑顔でそう呟くと、その場で前のめりに倒れ込む。
そして、彼を中心としてだまりが出來ていった。
「うぁあああ! リック、ごめんよ。僕が・・・・・・僕が不甲斐ないばっかりに・・・・・・うあぁあああああ!」
アモンは、彼にすがりつき慟哭する。
でも、何も答えは返ってこない。。
「こんな、こんなことって・・・・・・う⁉」
慘劇と人の死を目の當たりにしたせいか、強烈な吐き気に襲われる。
「ごほごほ!」と嘔吐きながらも、僕の中には憤りが渦巻いていた。
許せるものか。
人の命を末に扱う、こんなやり方は絶対に許せない。
父上は納刀すると、リックの側にしゃがみ込み、彼の開いている目を丁寧に閉じた。
「狐人族の戦士、リック。貴殿のことは、生涯覚えておこう」
そう呟いた父上は、僕とアモンに視線を向ける。
「お前達、悲しむのも、吐くのも後にしろ。リッド、お前はディアナとカペラを連れてすぐ新屋敷に行け。お前の妻は、お前が守るんだ」
そうだ、リックは新屋敷に狐人族の戦士が二〇人向かったと言っていた。
それに、新屋敷にはファラだけじゃない。
萬が一に備えて移した母上もいる。
カーティスや第二騎士団の子達が警備に就いているから、早々後れをとることはないと思うけど、自攻撃となれば話は別だ。
何が起きるかわからない。
僕は口元を拭い、父上を力強く見やった。
「畏まりました。直ぐに向かいます」
「うむ。私も、ガルンに狀況を引き継いですぐに向かう。それから、君達二人は私に付いてきなさい」
「・・・・・・はい」
父上に聲を掛けられたシトリーは、絶の表で力なく頷いた。
でも、アモンは首を橫に振る。
「私も・・・・・・私も、新屋敷に連れて行ってください。私を慕ってくれた戦士を、一人でも説得したいんです。お願いします」
彼の瞳には、強い覚悟と意志が宿っていた。
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