《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》105 王宮舞踏會 2

フェリクス様は王の立場にあるため、王宮舞踏會に足を踏みれるのは貴族の全員が揃い終わった後になる。

そう説明されたため、フェリクス様と私は大ホールの隣にある控室で、侍従が呼びに來るのを待っていた。

けれど、待っている間にしずつ張が高まってきたようで、ぷるぷると指先が震えてきてしまう。

私は張をほぐそうと何度も両手の指を組み合わせた。

フェリクス様はそんな私の様子を見かねたようで、黙って私の手を取ると、彼の片手と私の片手の指を絡ませる。

「ルピア、落ち著かないようだね。こんな風に指を合わせると、張が緩和されるの?」

「ええ、いえ、いいえ」

自分の右手と左手で指を組み合わせると張がほぐれるのだけれど、他の方と指を組み合わせても同じ効果は得られないようだ。

というよりも、フェリクス様と指を組み合わせると、より張が高まるようだ。

そのことに気付いた私は、ふるふると首を橫に振る。

「きょ、今日はダメみたいだわ。だから、手を放してもらえるかしら」

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顔を赤くしてそう言うと、フェリクス様は私を見つめてきた。

「君には効かないようだけれど、私には有効のようだ。なるほど、指を組み合わせると落ち著くものだね」

フェリクス様の言葉を聞いた私は、驚いて彼に視線をやる。

彼をお相手に定めてからずっと、夢の形で彼を見てきたけれど、フェリクス様が自分を落ち著かせる方法は指を組み合わせることではなかったはずだ。

い頃から慣れ親しんだ作を繰り返すことで、落ち著きを取り戻すことができると思ったのだけれど、初めての作でも同じ効果を得ることができるものかしら。

彼の狀態を確認しようとじっと見つめていると、フェリクス様の頬が赤くなる。

それから、彼は観念したように目を瞑った。

「……いや、そうでもないな。指を組み合わせると落ち著くと思ったのは、私の勘違いのようだ。……君と手を握り合っているのだから、心臓の拍が速くなるのは自明の理で、落ち著けるはずもない。私の場合は、だが」

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彼の言葉を聞いて、フェリクス様は指を組み合わせる作で彼自が落ち著くはずはないと分かっていながら、私のために効果がある振りをしてくれたのだと気付く―――私を落ち著かせるために、私が普段取っている作に効果があるのだと、示そうとしてくれたことに。

まあ、それなのに私ったら彼の思いやりに気付くことなく、無粋にも真実を暴いてしまったわ。

彼の努力を臺無しにしてしまったことを申し訳なく思っていると、フェリクス様は絡めていた指を解いて、私の腰に両腕を回してきた。

それから、彼は正面から私を見下ろすと、言い聞かせるような聲を出す。

「ルピア、今日の舞踏會は私が君に見合う夫であるかどうかを示す場だ。それだけの意味しかないのだから、君が気負う必要はない。參加者の中には夫の毒を自ら吸い出してそのけ、10年もの間臥せていた勇敢で獻的な王妃の尊顔を拝したいと思う者もいるだろうから、顔くらいは見せてやろうという気持ちで臨めばいいのだ」

「まあ」

散々な言いようだわ。

そう思ったものの、私の気持ちを軽くするために、フェリクス様が敢えてぞんざいな表現をしたことは分かっていたため、ありがたいことだわと黙り込む。

すると、代わりにフェリクス様が言葉を続けた。

「それに実のところ、君とさほど差がないほど長いこと、私も舞踏會に顔を出していないから、久しぶりだという意味では私も同じだ。そして、私と君で優雅さを比較してみると圧倒的に君が上だから、無様さを曬すとしたら私の方だ」

「フェリクス様ったら」

彼は王になる者として厳しく躾けられてきたから、その作は誰が見ても優雅と思われるしいものだ。

そんな彼が舞踏會で無様さを曝け出す姿なんて、想像もできない。

突拍子もないことを言い出されたことがおかしくなり、ふっと小さく笑ったところで、笑みを浮かべられるくらい余裕が生まれたことに気付く。

「フェリクス様、張がほぐれてきたみたいだわ」

正直に報告すると、彼は穏やかに微笑んだ。

「それはよかった」

彼が頷いたところで侍従が現れ、時間ですと告げられる。

そのため、私はフェリクス様とともに立ち上がると、彼の腕に手を掛けて扉に向かったのだった。

フェリクス様とともに開かれた扉の先に向かって歩いていくと、大勢の貴族たちに出迎えられた。

私たちのし後を、別室で控えていたクリスタとハーラルトが続く。

思えば、私が舞踏會に出席するのは12年振りで、彼らと顔を合わせるのも12年振りだ。

王宮舞踏會を開くのは王宮で一番大きい大ホールと定まっており、天井からたくさんのシャンデリアがぶら下がっていた。

今夜はその全てに燈りが燈され、磨き抜かれた床や柱に付された黃金の飾りがきらきらと輝いている。

そして、華やかな裝にを包んだ紳士淑の皆様が會場を彩っていた。

初めのうちは張していて、皆の態度を確認する余裕はなかったけれど、しずつ落ち著いてきたため、數段高い場所に誂えられた椅子に座ったタイミングでさりげなく皆を見回す。

すると、誰もがぽかんと口を開けて私を見ていた。

「えっ?」

まさかそのような表を浮かべられるとは思っていなかったため、びっくりして見返すと、貴族たちは視線だけをかしてフェリクス様を見つめ、今度は信じられないとばかりにを引き結んだ。

「ええっ?」

どういうことかしら。

王宮の侍たちの手を借りたし、最新のドレスを著てきたから、驚かれるほどおかしな格好はしていないつもりだけど、どこかまずかったのだろうか。

それに、フェリクス様まで驚かれるというのはどういうことかしら。

貴族たちが驚く理由が分からなかったため、舞踏會は始まったばかりだというのに、私は既に失敗してしまったような気持ちになったのだった。

12/7(木)に【SQEXノベル】からノベル3巻が発売されます。

的な改稿をしました。WEB版とはける印象が変わってくるのではないかな、と思います。

〇加筆分

1 フェリクス、會話アップ講座を講する

界で多くの浮名を流している貴族を講師に迎え、ルピアとの會話をアップさせようとするフェリクス。けれど、ルピアがその様子をこっそり盜み聞きしていて……。

2【SIDEフェリクス】ルピアの刺繍と溢れる

ねえ、ルピア、君はい私のために「聖域」を刺繍してくれた。い頃、私に見えていた景をそのまま刺繍にしてくれたのだ。君の思い遣りの深さに打ちのめされて、聲を出すことも難しい。

3【SIDEハーラルト】僕の初と妖

清廉で、正直で、思いやりがある、誰よりもしい妖姫が、自らのを顧みずに代わりとなった狀態で眠り続けるから、僕は長い期間、この世で最もしいものを見続けることになった。ルピアお義姉様のような者が他にいるはずもないのに、基準にしてしまった不幸。かくして僕の妖姫は、神聖不可侵なる姫君となったのだ。

4【SIDE侍ミレナ】王と雙璧の奇行

王と兄の宰相、騎士団総長の3人は、仕事を中心に生活をしているタイプだ。そのため、ルピア様の人となりまで深く注意を払う余裕がなかったのだろう。けれど、一旦注意を払うと、誰もが察力がある有能な人なので、細かいところまで々と気付いてしまう。そして、ルピア様はその細かいところまで完璧に素晴らしいので、全員が打ちのめされて、床に這いつくばる結果になったのだ。

5フェリクスが贈れなかったルピアへのプレゼント

私室に見慣れぬクローゼットを見つけたルピア。開けてみると、ぎっしりとプレゼントボックスが詰まっている。驚く彼にフェリクスは、これらは全て彼から彼への贈りだと言う。

とっても素晴らしい1冊になりました。

ぜひぜひお手に取っていただければと思います。どうぞよろしくお願いします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾

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