――カ……チャ

「ようこそ……あぁ、菜さん……おかえり」

「ユウタさん！」

菜は長い間忘れていた人であったが、その名前はすぐに出てきた。それはこの懐かしい店の中での環境が、今まで通りの挨拶が菜の中から自然と口からその名が出てきた。

「久しぶりだね、元気してた？」

「はい……あっちの世界で」

菜が向こうの世界の話を切り出そうとした時、ユウタはその発言を手で遮った。

「ゴメン……あんまりあの時のことは思い出したくないんだ」

「そ……そうですか、ごめんなさい」

確か、ユウタは小夜が一緒に向こうの世界へと連れていったはずだった。

最後までその姿を見ることは出來なかったが、ユウタはずっと小夜の傍に付き添ってくれていたのだろうと考えていた。

菜はその後のことを、ユウタの機嫌を損ねない程度に何があったのかを聞いた。

最終的には、サヤの能力が盡きたことによって、ユウタの存在も同じように消滅していったとのことだった。

「あら、菜ちゃん。お久しぶりね」

「――冬さん！！」

ユウタと話していると、カウンターの奧にある従業員向けの部屋から冬が聲をかけた。

そして自分の存在を驚く表から、心配した表へと変わる姿を見て、冬はその菜の不安を払拭するように笑いかけた。

「いいのよ……菜ちゃんは私のこと心配してくれていたんでしょ？本當に心配かけさせちゃって、ゴメンね？」

「いいえ、そんなことないですよ！？私も、あの世界で獨りぼっちだって思ってたのに、冬さんがいたことを知って、どんなに嬉しかったか……」

菜のその言葉に、冬は嬉しそうな表をした。その時、冬自はあまり記憶がはっきりとしていたなかったが、から離れた時に自分がいる狀況を把握できていた。

そのことを告げようとしたが、またしてもこの場に新しい人が登場し、話の流れを途切れさせた。

「――あぁ、やっと來たか。待ちくたびれたよ」

「小夜ちゃん！？」

「久しぶりだね……アンタも頑張ったね……っていうか、アタシのこと忘れてたんじゃないの！？」

「そんなことないよ！？今の流れから言っても、小夜ちゃんのこと忘れるわけないじゃないの。それに、小夜ちゃんは”最後”まで、私のこと気にしてくれてたんでしょ？」

ラファエルが、小夜のいたもう一つの世界から戻ってきた時に聞いた話を菜は思い出していた。

あの時の気持ちは、エレーナたちがあの世界からいなくなったとき以上の衝撃を菜は心の中にけていた。

小夜は菜からの言葉とその勢いから、いまの言葉に噓はじないとホッとしていった。

「……そう。まぁ、アタシもあっちじゃ隨分と長い時間を過ごしたから、アンタを待つ時間なんてあっという間見たいなもんだったよ」

「小夜ちゃん……」

そして小夜は、菜に近付いていく。

「まぁ……なんだ……その……あれで……」

「……小夜ちゃん？」

「お帰り……菜」

そう言って小夜は、菜のに抱き著いた。

そして、菜と小夜の顔には、我慢することもなくのままに涙が流れていた。