《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》6話 ぷるぷる、俺は悪い怪じゃないのに

ヒロシマ〆アウト〆サバイバル、読んでくれた全ての人、昔からありがとうございます。

ぱんっ!!

風が、味山とアレタを笠巻きにしている虹の紐を弾け切る。

ごろん、ごろんと転がる味山。

ゆっくり立ちあがろうとして、それからその場に座り込んだ。

アレタが、音もなく姿勢を正してこちらを見下ろしていたからだ。

「ふ、ふっ、ふう~……こほん、いえごめんなさい、ついかっとなっちゃったわ、ほら? 戦闘中だったし、も使ってたし、わかるでしょ? タダヒト、あたし、別にあなたにこどもがいても何も気にしたりしないもの、揺とかしてるわけじゃないの。あたし達って実はまだ知り合って1年も経ってないじゃない? でもね? タダヒト、わかるでしょ? 貴はあたしの補佐探索者で、あたしはあなたの指定探索者なの。それって報告連絡相談の義務があるとは思わない? そういうがあるのならあなたの口から聞きたかったかな? ううん、別にね、怒ってるわけじゃないのだけれど」

噓つけ、怒ってるよ。

味山はまでこぼれかけた言葉を本能的に止める。

早口で淡々と、無表と笑顔を行ったり來たりするアレタ。

顔が良い分普通に怖い。

「……ぱぱ、あさまの名前を呼んだ? あさまが必要だった? あさまをみてくれた? ぱぱ、來たよ、これからずっといっしょだね、でもね、ぱぱ、このはだめだよ、サクヤ様みたいなお方達よりもつよいのに、とてもとてもよわい、強くて弱いのは、危ないんだよ……え? うん、わかった、変わるね、せらふ」

こちらも淡々と無表

ニホン人形の巧さと洋人形のような形の良さが合わさった

黒と金のじった髪は地面に垂れるほどに長い。

長い前髪の隙間から覗く大きなこぼれそうな瞳、これもまた片目が黒で、もう片方が蒼で。

「あ?」

異変。

すうっとその瞳が2つとも蒼へ。

そして髪も金に変わったかと思うと。

Advertisement

「あ。人の子、チース。貴方の熾天使、セラフです。いやほんとあなた天使使いすぎてワロタってじでしたが、そこは完璧で無敵の金際現れない一番星そのものであるセラフです、こう、良いじに神と異界の応用であれこれして存在を維持していたんですが、深淵の者のきまぐれでを得る事が出來ました、もう普通にセラフ達はどこにも行く當てないですし、セラフ達(零落神と熾天使)を墮としたのは人の子ですから、責任取ってくださいね。あ、眠いのでもうアサマに代わりますね、最強無敵、ニホン最大の霊山を押し返したマッスルも強い文武両道の熾天使、セラフがお送りしました~、寢ま~す」

怖い、なんなんだよ、この自由な奴。

一瞬で金の髪に変わったの髪はまた黒金のじるものに変わる。

が自由な奴は髪も自由なのかもしれない。

だが、セラフ。

今こいつは、自分の事をあさまとセラフと呼んだ。

それは――。

TIPS€ 警告・神種の存在を確認。目の前のは零落神”アサマ”と熾天使”セラフ”の混合転生

TIPS€ 警告・転生はいびつで危険だ、耳の化と”52番目の星”以外では対抗できない

「まじかよ」

「あ、う……せらふ、いつも勝手に出てくる。……えへへ、でも、いいや。せらふもぱぱに會いたかっのかな――あっあー、今セラフです、いやー定命の者よ、アサマかわいいでしょ? おとう呼びかパパ呼びかどっちか悩みましたが、定命の者の嗜好的は一般寄りであると仮定してぱぱ呼びにしました。ぐっちょいす、こういう選択にも気が利くのが熾天使クオリティなんですよね、あ、寢ます。……えへへ、またせらふ出てきちゃった」

「こわー……」

じっとりした微笑み。

アサマの黒と蒼の瞳が味山を見つめる。

白いワンピースのような服裝に、腰から生えた翼。

もうどう見てもまともな存在ではない。

TIPSの報や言からも認めたくないが……。

Advertisement

「お前、マジでアサマかよ……」

「え、へへ、はい、アサマです」

――逆さ富士・登頂

――特殊イベントの全てを攻略、逆さ富士の脅威を取り除いた

――神種・淺間大神、神種・セラフ――ロスト消失

あの日、あの時、己の全てを賭けて天邪鬼の謀からイズを救った2つの神種。

敵対し、何度も呪い殺されたクソ因習集団の親玉だ。

きっと、目の前のは善き者ではない。

己の弱さを他者に向け、弱さを攻撃に変えた悪だ。

きっとどこかの語ではアサマは許されない事を犯しているのだろう。

味山只人がたどり著くまでのイズ王國での悲劇の原因とも言っていい。

ただ一度、逆さ富士をどうにかした所で彼の犯した罪は消えない。

「……ぱぱ?」

無反応の味山に不安げに首を傾げるアサマ。

はきっと、悪だ。

それは間違いない。

だが――。

脳裏に焼け付くイズ王國の夜明け。

逆さに落ちる霊山と共に消えた、朝日に溶けるの姿――。

あの終わりの日、神のかき混ぜる大釜に煮られる翼の景。

「お前、良かったな」

味山只人はの頭をでた。

味山只人は英雄でも、主人公でも、悪を許さぬヒーローでもない。

と悪2つの狹間を行きかう凡人なりて。

「……あ」

ぽろ、ろ。

アサマの目からこぼれる

ヒトとして生きているときは流す事すら許されず、やがて流し方も忘れたそれを今、ここで。

「あの時、助かった。もうボコボコにはしねえよ」

「ううん……うち、わたしもごめんなさい……ぱぱ。會いたかった」

ぎゅっと味山へを寄せる

暖かい、秋の日差しの良い日のひだまりような溫。

腰の翼がジョジョに大きくなり、味山を包むように――。

「パパって、何かしら」

「うん、やっぱそうなるよね」

嵐がそこにいる。

空は青く、高い。秋空の下、

「あ、アシュフィールドこれはな、話すと長いんだ、的に言うと文字數では10萬字を超える可能がある。イズ王國編ってじでな?」

Advertisement

「あら、そうなの? アジヤマタダヒトさんのたのしい冒険譚って奴かしら? あたしの知らない語って奴? 覚えててほしいんだけど、あたし、とか自分1人だけで抱え込むとかそういうのあまり好きじゃないのだけれど、どう思う? タダヒト?」

「鏡の前で同族嫌悪って言葉を調べつつ、12月にお前が何したかもう一回思い出してほしいと思う」

「……それは、ほんと、すみませんでした……」

「ああ、いえいえ……で、その、アシュフィー……」

いけそうだ。

味山がもう無理やりぱぱから話題を変えようとして。

「で? そのパパって、何かしら?」

「振り出しかよ」

もうどうしようもねえじゃねえか。

味山が胡座を掻いたまま、うーんと唸って。

「う、う、う、くなァァ!! 化け!!」

「あ?」

ガチャ。

気付いたら周りを囲まれている。

中庭、だろうか。緑の芝生のが心地よいその場所。

黒服の格の良い者達何人も。拳銃を構えて味山達を囲んでいた。

「……あら、囲まれちゃったわね。どうする? タダヒト」

「……ぱぱに、銃を向けてる? は? にんげん、なにさまのつもり? ぱぱ、いつでも呪ってあげれるよ」

アレタとは味山と違ってけろっとしている。

味山は普通に、拳銃を向けられて怖かった。

當たると痛い、死ぬほどに。

「ひッ……さ、サキモリは!? サキモリはまだか!!」

「地下から報告!! 現在、サキモリの首都防衛班の半數以上が、テロリストの手に墮ちた式神と戦中!! 各地方に間引きに向かった攻略班の參集を急げ!!」

「貴崎凜を出せばいいだろ!! 異名持ちのサキモリじゃないと無理だ!」

「貴崎凜はあの特級指定封印に神汚染をけている疑固中だ……クソ!」

「こちら、護衛部隊……特級指定封印対象參號、及び正不明の人2名と接敵中……」

「神鏡に、2人とも寫っている……まずい……! 特級指定封印対象以外は2人とも神種だ!」

「最低でも、持ちじゃないと対抗出來ない……! だが、総理だけは、お守りする……!」

悲壯な面持ちで銃を構える彼ら。

奇妙な絵だった。

完全に包囲し、武を構え、絶対優位な位置にいる筈の彼ら。

包囲され、丸腰のはずの男一名、二名。

それなのに、優位なはずの黒服の護衛達の指は震え、聲は上ずる。

「ふうん……あの人が持ってる鏡、奇妙ね、あたしとその子は寫ってるのに、タダヒトは映っていないなんて」

「俺ってまさか、吸鬼だったりするのか?」

「あら、その辺詳しいのね。クスクス、どうしよう、あたし、もしかして貴方にを吸われたりするのかしら」

「ぱぱ、ダメだよ。こういうはね、そんな事したら多分喜ぶから、ドSのくせにドMの気質を併せ持つ……せらふがそう言ってる」

「あら、お子様の割に中々耳年増? そういう貴こそ、タダヒトを見る目……子供が親に向けるものじゃないと思うけれど」

「ぱぱはぱぱ。わたしはぱぱのおかげでうまれたの。ぱぱはわたしのぱぱなの」

「あは、なにそれ。本當に申し訳ないけど、彼があなたのパパであっても、あたしの補佐探索者って事に変わりはないわ」

「は? わたしのぱぱですけど?」

「は? あたしの補佐探索者ですけど?」

「お前ら一周回ってもしかして仲良いのでは?」

そして、包囲されてる筈のこいつらの方が余裕。

晝下がりの再放送バラエティでも見てる時のようなリラックス。

味山達がのんきにわちゃつくほど、黒服達は悲痛な表を深める。

「さて……と」

靜かにメンチビームを斬り合う2人のヤバ強の達を橫目に味山がく。

なんだかんだ々あったが、それでもたどり著いた。

「…………」

目の前には、彼がいた。

多賀。

あの終わった世界で味山にもう一度チャンスを與えた存在。

味山へ仕事を依頼した依頼人だ。

「ここからは話し合いの時間だな」

「タダヒト?」

「ばぱ?」

ざっ。

味山が立ち上がり、手を挙げたまま前へ。

「アシュフィールド、アサマ。大丈夫だ。ここからは友好的に大人の渉タイムだ。勉強しろ、俺のインテリジェンスな仕事を」

「「ああ……うん……」」

何故だろう。アレタとアサマがなんか似たような表、遠くを見つめる顔でこちらを見てくる。

味山は呼吸を1つ。

あたりを見回す。

向けられたいくつもの銃口、怯え、それでも死を覚悟した顔。

味山只人は考える。

無理もない、と。

きっと、こいつら全員ア(・)レ(・)タ(・)と(・)ア(・)サ(・)マ(・)が(・)怖(・)い(・)のだ、と。

「わかるぜ、お前達の気持ちも」

ざっ、ざっ。

足取りは軽く、あくまで朗らかに。

大事なのはこっちに悪意はない事を示す事だ。

味山は考える。

アレタやアサマ、あとはソフィにグレン。

ああいう特別な奴らは得てして警戒されるものだ。

それは仕方ない、嵐を呼んだり、呪いを扱ったり。それどころか若干なんか神種扱いすらされてる連中だ。

「ひっ……」

「き、來たぞ……」

「待て。まだ撃つな……撃つなよ」

その點、自分は大丈夫。

なんたってマジで只の凡人だ。

し、耳の化けの力や神の殘り滓からの借りの力が使えるだけ。

「よお、皆さん、いい天気だな」

だから、自分が最適だ。

彼ら、今怯える彼らの警戒を解くには自分しかいない。

無害、無力、清廉潔白の自分しかない、本気で味山はそう考えていた。

「と、止まれ……頼む、止まってくれ!!」

「おっと、ボディガードの方か? お仕事お疲れ様です。あー、勘違いしないでほしいんだ。俺は敵じゃない」

良いじだ。良いじに話が出來ている。

「よ、要求はなんだ……! なぜ、一どうやって……?」

黒服の1人が、聲を震わせる。

お、なんか話し合いに乗ってくれそうだぞ。

味山はにいっと友好的に嗤う。

スマイルは大切だ。社會の場でも結局想がいい奴がうまくやるものだ。

「ひっ……」

「わ、笑った……」

「う、うろたえるな……時間を稼ぐんだ……」

どうやらまだ皆張しているようだ。

よほどアレタやアサマが怖いらしい。

味山は、さらに張を解きほぐそうと言葉を巡らせる。

TIPS€ スピーチ・チャレンジ不可能 必要INT、技能ともに無し

TIPS€ お前に話し合いは無理だ

「黙ってろ、クソヒント。何を言ってんだ、お前は。こちとら元営業職だぞ」

「な、なんだ、1人でなんか言ってるぞ……」

「警戒しろ、自力で特級封印を解いた化けだ、何をしてくるかわからん……」

味山と黒服達の溫度差はどんどん広がっていく。

不幸なすれ違いがここにあった。

味山只人はここに至って、未だ自己への評価を過小に見積もりすぎている。

「いやいやいや、皆さん。銃なんか持ってどうしましたか? そんな騒なもの意味ないからやめましょうよ」

味山の自己認識では、にっこり微笑み平和と友好を訴えているつもりのこの言葉。

しかし総理を守る者達からすると――。

「ひっ……今、あいつ銃を捨てろって……」

「特級指定封印者からすれば、こんな銃、おもちゃも同然だ、とでも言うのか……!?」

「な、嘗めやがって……クソ……クソォ!!」

「ち、近寄るな……人間をなめるなよ。化け……!」

がたがた震えだすボディガード達。

彼らからすれば、今の味山の様子はさながら人語を介する化けが不自然に接しようとしてきているようにしか見えない。

「……あれ、なんか皆まだ固いな……」

元営業マン、味山は考える。

そうか、まだ皆張しているんだ。

後ろを振り返る。

英雄(アレタ)と神種(アサマ)が、(´・ω・`)こんなじの顔でこちらを見つめている。

多分、黒服たちはこいつらがよほど怖いのだろう。

味山は、ははーーんと閃いた。

つまり、この2人の安全とさらに友好的な態度を見せればいいわけだ、と。

「あはは、安心しろよ、いや、安心してください、皆さん。後ろの2人は皆さんに手出しはしません、俺がいる限りはね」

にっこり、完璧だ。

きっと友好度がバカ上がりした事だろう。

コミュニケーションの下手なバカが1人だけ満足した顔で笑みを浮かべる。

「今、なんて言った……!?」

「言葉から神種2の統制は俺が執っている……と、聞こえました……」

「バカな……神種を従えてる、だと……!?」

「で、ですが、事実、八咫鏡レプリカに映っている後ろの2名は、神妙な顔であの男を見つめたままきません」

「な、なんという事だ。神種に、組織があるのか……」

まだ固い。

味山はあきらめない。

だが、諦めないというのは得てしてあまり悪い結果を呼ぶ事もなくない。

「さあ、銃なんて下げて……友達になろう」

「隊長……! 封印対象がなんか言ってます!」

「ちくしょう、カイロに潛伏する吸鬼みたいな事言いやがって!」

「大丈夫です、隊長、怪しい気は奴にありません!」

だめだ、まだ心を開いてくれない。

味山は考える。

そして気づいた。

「あ……そうか、この格好はまずいのか……!」

考えたら、パンツ一丁で封印されてそのまま暴れ始めたのだ。

今、自分の恰好はよろしくない。

服だ。服を著ていないからきっと、今、皆心を開いていないのだろう。

だから、服を著ればいい。

でも、今、服は、ない――。

ドクン。

TIPS€ お前は魂の存在を認識した

TIPS€ お前の魂はそのに深く馴染んだ

TIPS€ お前は有史以來最も深く、耳の怪の業と向き合ってきた人間だ

TIPS€ 技能”耳の”から新たな技能が派生した

「あ……これ、出來るな」

そのは、保持者の願いを葉える。

不滅にして不定形、無意味にして無限。

只、純粋なおぞましい力そのものである耳の、味山只人は今や”耳の怪”を除けば最もそのの扱いに習した存在だ。

故に、長が唐突に訪れる。

式神をすら侵すを介しての他者への干渉技能”耳人形”。

そして、もう1つの新たな耳の力の可能

TIPS€ 新技能”耳の創作”獲得、その効果――

どろり。ぐにゃり。

イメージはシンプル、願いもシンプル。

服が、しい。

その願いに、そのおぞましいがこたえる、応えてしまった。

耳の化、それがふるまう力が、どんどん味山にひざまずいて。

「「「「……は?」」」」

「わお、すごい」

「ぱぱ、かっこいい……」

が揺らめく。

かと思えば、味山の表皮が変形する。

しゅるるる、巻かれるように、紡がれるようにが沸き、踴る。

次の瞬間には、もう――。

「おお、こりゃ……おいおいおいおい、便利だなァ」

黒い探索服。

味山の用する汎用の流通品、それを味山がいつのまにか纏っていた。

イカや、タコが周囲の風景に合わせて己の表のを変えるように。

味山のが、服を創り出し、変化した。

TIPS€ 【耳の創作】その効果――、の部分変化、変換、また壽命か経験點を消耗する事により、を増やす事も可能

TIPS€ 様々な技能、特とのシナジーを確認。

TIPS€ 警告・危険な技能。一定の使用回數を超える事で、特殊なイベントが強制的に発生する

「ドレスコードはクリアだな」

これでヨシ!!

味山が満面の笑みを浮かべて――。

「ば、化けっ――あっ」

パンっ!!

銃聲。

味山の新たな技能は、あまりにも絵面が悪すぎた。

「「あっ」」

男のを抉った銃弾。まだ赤いままのしぶき。

思わず引き金を引いてしまった黒服の1人。

黙したまま語らない小男。

怒り、それの走りを見せる英雄と神種。

「「……」」

嵐が、呪いが。

互いに目の虹彩からを消して。

「――はい、そこの2人、キレんなよ、今パーフェクトコミュニケーションの途中なんだから」

じゅるるるるる。

「タダヒト……でも、もう……」

「ぱぱ、こいつら、殺すね」

ブチ切れかけてる2人。

嵐が、呪いがうごめいて。

「アシュフィールド、アサマ。頼む、信じてくれ」

「……わかったわ、貴方に任せる」

「ぱぱ……はい……」

銃弾をけても死なず。そして神種にいう事を聞かせるその姿はまさに――。

「ば、けもの……」

「あ、ああ……」

「噓だろ……」

「あ、頭を、頭に銃弾を喰らったのに……」

その男は斃れない。

頭に銃弾を喰らった。

頭蓋は割れた、脳漿は炸裂した、なのに。

「いってー……でも大丈夫。大丈夫ですよ、皆さん、ほら、怖がる必要はないんだって」

ぺろり。

額から口元に流れるをぺろり。

もう治っていない箇所はない。

その男は、味山只人は今、黒服達にどのように映っているのか。

「この、ば、化けがああああああああああああああああああああ!!」

「撃て……撃てええええええええええええ!!」

「総理に近づけるなあああああああああ!!」

引き金にかかる指。

「――待てっ、諸君!!」

総理の聲、しかし。

TIPS€ 耳の能力を使用した事により、周囲の人間に恐怖と混の狀態異常を付與、一定のPOW値、対抗技能、一定以上の友好度がない人は無條件で敵対する

「「「「「「「ああああああああああああああああああああああ」」」」」」」

化けを目にした、してしまった者達にその聲は屆かない。

ばん!! どん!! ドンドン!!!!

硝煙。

「あ、ちょ……っ待っぎゃ!!」

無抵抗で撃ち抜かれる味山の

ドンドン、ドン!!!

銃聲は止まらない。

「待っ……ちょ、話聞いて、怖くない……ほら、怖くなっぎゃ!! 目えええ いって~!! あ、治った……ぐえっ、の、ど……あ、治った」

「ひ、撃て、撃て、撃ち続けろ!!」

銃聲は続く。

硝煙、怒聲、悲鳴。

アレタもアサマもじっとその様子を眺めたまま。

理由は1つ。味山只人の言葉を、願いを聞いているのだ。

「お、いほんと、話を、話を聞いてって……ぎゃ、腹……いてええ……おうえ……あ。治った。ぎゃ、心臓……おお、大丈夫だった、あ、やべ」

ひゅんっ。

撃ち続けられる銃弾は味山のをすり抜け始める。

恐怖で狂った手元の照準は甘く、流れ弾が。

「あ、バカ!! お前ら撃ちすぎ! 後ろに當たるって!! アシュフィールドとアサマに當たっ――」

「っ……」

「いた」

ひゅん、ひゅん。

アレタの頬と、アサマの髪のをかすめる。

赤い、黒い髪が地面に落ちる。

それでも、彼達はかない。味山の言葉をただ――。

「うちの子に當たるって言ってんでしょうがよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

「「「「「「「「「あ」」」」」」」」

どろり。

TIPS€ 耳の創作+耳の大力・発

味山が腕を振るう。

溶けて、まろびたが壁となり、大力を持って黒服達に投げつけられた。

「「「「「ああああああああああああああああああああ!!??」」」」

投網一投!!!

網のように広がったが、黒服達をがんじがらめに。

己の腕のをゲル狀に変異、網のようなを作り、それを怪の膂力で放り投げる。

もうその景は――。

TIPS€ うわやば

「うるせえよ、あークソ、やっちまった」

一網打盡になった護衛達。

もう味山と彼を遮るものはいない。

目を見開き、腰を抜かす書の男。

すっと立ちあがり、じっとこちらを見つめる小男。

「最初からこうすりゃよかったのか? あーでも平和的に行きたかったんだけどな」

ぼりぼりと頭を掻きつつ、味山がまたにいっと笑って。

「よお、久しぶり。多賀総理殿」

「味山……只人」

終わった世界で止まった時計、最悪の未來で殘った最後の2人が今、再び。

「話がある、総理殿。ここから先、8月31日からの報告だ」

「報告……?」

これだけは無くしていない。

パンツの隙間から取り出した黒い牛皮の手帳。

それは――。

「ねじ曲がれ」

「凍れ」

「ホ(・)ッ(・)ト(・)・(・)ア(・)イ(・)ア(・)ン(・)ズ(・)」

TIPS€ 警告――”級”の攻撃を確認、上方。

「あ?」

振り下りるのは、不可視の念、白い霜、赤い、

そして。

「PERK・ON NO・0013」

味山の本能が、今自分に振り下りているどの攻撃よりも、それに意識を裂いた。

「ロケット・フィンガー」

「や、ば」

ドスっ、ドスッ!!

地面に刺さった何か、それは、人の指のような――。

「BOMB」

それが破裂するのと、アレタ・アシュフィールド、アサマが上空からの襲來に反応するのは同時。

だが、その反応よりも早く。

黒いが、味山と総理の間に著地、落下して――。

「――ネガティブ、驚きました。ロケット・フィンガーのが効いていません。いえ、ヨキヒト、今の貴方に彼との戦は危険と判斷します、作は引き続き私が。ネガティブ、聞けません、勝手に始めますので」

黒い何かが、うごめく。

それは味山のと似たような不定形の作の後。

「融解結合、第三段階」

変形、あっという間にソレは姿を現して。

「おい、おいおいおいおい……マジかよ」

鎧。

黒い大鎧、ガスマスクの面、オオカミのような鬣。

そして、二枚の翼。

黒い巨人が、目の前に。

「シ(・)エ(・)ラ(・)0(・)、戦(エンゲージ)」

読んで頂きありがとうございます!ブクマして是非続きをご覧ください!

みなさまの推しのおかげで、このライトノベルがすごい2024に、凡人探索者、ダンワル共にランクインしました! 本當にありがとうございます!

重ねて恐れいりますが、現在、次にくるライトノベル大賞のノミネート決戦投票の対象にもっています。

良ければ下記URLから、凡人探索者とダンワルの応援頂ければ幸いです。

https://form.tsugirano.jp/

引き続き楽しんでもらえるように頑張ります。

    人が読んでいる<凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください