《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》106 王宮舞踏會 3
もしも私がフェリクス様に恥をかかせる存在だとしたら、舞踏會に出席したのは間違いだったわ。
そう考えてこまっていると、フェリクス様が片手を上げて開催の挨拶を始めた。
「久方ぶりの舞踏會にもかかわらず、多くの參加者があることを嬉しく思う。今宵は我が妃の快癒を祝うものだ。これより王宮舞踏會を開催する」
そんな短い言葉とともに、6年振りに王の名で開かれた王宮舞踏會が始まった。
舞踏會に參加する目的は、新たな人脈作りと舊知の友人たちとの流だ。
それなのに、フェリクス様は挨拶の中でそのことに一言もれることなく、私の健康のみを話題にした。
「王の挨拶としては短いけれど、あれでよかったのかしら。貴族の方々は10年もの間、公の場に現れない妃のことを訝しく思っていたはずよね。だから、はっきりと妃が快癒したのだと明言したのは正解なのかもしれないわ」
王が妃の話題にれたことで、私の存在はトピックにしていい公のものだと認められたのだ。
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私もフェリクス様も、何も後ろ暗いことはないと証明するために舞踏會に出席しているのだから、注目されることは願ったり葉ったりではないだろうか。
―――そう、私が舞踏會に出席した目的は、私は元気で、フェリクス様と仲良くしていることを皆に知ってもらうためだ。
私は王の毒を吸い出した際に自らのに毒をけ、寢込んでいたことになっているので、もう十分元気になったのだと伝えるために。
それから、私は自分のの上を恨んでおらず、王と仲が良いのだと伝えるために。
私の役割を果たすべく、できるだけにこやかな表を浮かべていると、私の隣に座っていたクリスタとハーラルトが立ち上がり、階段を下りてダンスフロアに進み出た。
基本的に舞踏會の始まりでは、その場で一番分が高い男がダンスを踴るものだけれど、私は妊婦で踴れないし、フェリクス様も踴るつもりはないようだ。
そのため、王弟と王妹の2人がダンスをしたのだけれど、それは夢のようにしいものだった。
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ハーラルトはフェリクス様そっくりの貌の持ち主だし、背筋をばしたとても綺麗なダンスをする。
一方のクリスタも文句なしので、堂々とした姿勢で難しいステップを難なく踏んでいた。
「2人ともダンスがとても上手だわ。何て魅力的なプリンスとプリンセスなのかしら」
心して弟妹を褒めると、フェリクス様は「ああ」と短く相槌を打った。
どうやらあまり関心がないようだ。
憂げな様子で頬杖を突くフェリクス様を、貴族たちがちらちらと橫目で見ている。
先ほどの挨拶も非常に短いものだったし、どうやらフェリクス様はこの10年の間に舞踏會が嫌いになったようだ。
直近の6年間、フェリクス様は王宮舞踏會を主催しなかったし、參加もしなかったとのことなので、舞踏會を嫌いになるよっぽどの理由があったのだろう。
それは一何なのかしらと考えていると、貴族たちが次々と挨拶をしにきてくれた。
皆は至尊の立場にあるフェリクス様が久しぶりに舞踏會に參加したことに興しており、その喜びを伝えてくるのだけれど、同じくらい熱心に私を気にかける様子を見せてくれる。
「國王陛下、このような華やかな場で再びお姿を拝見することができ、喜びに打ち震えております! 今夜は王宮舞踏會を開催くださり、誠にありがとうございました! それから、王妃陛下におかれましては、私どもの前にお元気なお姿を見せていただきありがとうございます! 臥されている期間があまりにも長かったため、臣下の一人として心より心配しておりました」
「私ども臣下の役割でありますのに、勇敢なる王妃陛下が王の毒を自ら吸い出され、かつそのにけられたと聞いて、毎日、神に王妃陛下のご無事をお祈りしておりました。神が私の祈りを聞いてくださり、王妃陛下の快癒の一助になれたのだとしたら、外の喜びでございます」
「國王陛下も長いこと王妃陛下のご調を心配されていましたから、これでしはご安心されることでしょう」
先ほど、私を見た貴族たちがぽかんと口を開けた姿を見て、大きな失敗をしたような気持ちになっていたため、暖かい聲を掛けられたことが嬉しくなる。
けれど、どうしても先ほどの貴族たちの態度が気になり、以前お茶會で一緒になったご夫人にこっそり尋ねてみた。
「先ほど、皆様は私を見て驚いていたようだけれど、何か不合があったかしら?」
「不合など、とんでもないことですわ! 実のところ、病み臥せっていたはずの王妃陛下が若くおしかったので、驚愕していたのです。王妃陛下のお若さは10年前と全く変わりませんし、おしさはさらに磨きがかかりましたわ」
その言葉を聞いて、そうだった、私の年齢は皆が思っているよりも12歳も若かったのだわと思う。
それから、痩せたが魅力的だと言われるこの國のの基準には、結婚當初の平均的な付きをしていた頃よりも、痩せてしまった今の方が合致しているのかもしれないと気が付いた。
先ほどの皆の態度に納得しながら、次々に貴族の方々と言葉をわしていくと、やはり誰もが私に暖かく対応してくれた。
嫁いできて初めの半年間、貴族の方々と言葉をわしたことはあるし、多くの方は親切にしてくれたけれど、ここまでではなかった気がする。
どうしてこれほど親切にしてもらえるのかしらと不思議に思っていると、隣に座っているクリスタが小聲で獨り言を呟いた。
「お義姉様に対して悪くない態度だわ。お兄様が6年間も舞踏會に參加しなかったことが効いているようね」
一どういうことかしらと顔を向けると、聲を聞かれたことに気付いたクリスタが慌てた様子を見せる。
「あっ、今のは何でもない獨り言よ!」
「クリスタ?」
尋ねるように名前を呼ぶと、クリスタは困ったように視線をそらして、何度も瞬きを繰り返した。
けれど、すぐに観念した様子でぼそぼそと呟く。
「ええと、お兄様には私が言ったことを黙っていてちょうだいね」
クリスタはフェリクス様が貴族たちと談笑しているのを確認すると、顔を近付けてきて小聲で囁いた。
「実は6年前の舞踏會で、貴族の1人がお義姉様に否定的な発言をしたのよ。いくら王を庇ったとしても、4年も臥せっているようでは、王妃としての務めを果たせないってね」
「それは仕方がないことだわ」
納得して頷くと、クリスタは信じられないことを聞いたとばかりに目を見開いた。
「お義姉様、ちっとも仕方がない話ではないわよ! お義姉様はお兄様の命を救われたのよ。そして、ずっと苦しまれていたのよ。それ以上何一つむべきではないわ」
そう言ってもらえてとても嬉しいけれど、王妃の役割は多岐にわたるから、私にもっともっととむ者がいても不思議ではない。
そう思って返事ができないでいると、クリスタはさらりと衝撃の事実を伝えてきた。
「もちろんお兄様も同じように思われたようで、その場で激高されたの。控えていた騎士の剣を抜いて、その伯爵の元に當てたのよ」
「えっ!?」
激高したレベルが想定をはるかに上回っていたため、びっくりして目を見開く。
そんな私に向かって、クリスタは真剣な表で続けた。
「それから、お兄様はぎらりとした目で伯爵を睨みつけると、恐ろしい聲で迫ったの。『では、自らのをこの剣で刺し貫いてみよ! 貴様は瀕死の重になるだろうが、それでも臥せることなく貴族家當主としての役割を果たせ! 自らの言葉くらい実行してみるんだな』って」
その時の景が脳裏に浮かんでくるように思われ、慌ててクリスタに尋ねる。
「ギルベルト宰相はその場にいなかったの?」
宰相であれば、フェリクス様が正しい王道をいくことをんでいるので、彼を諫めるはずだ。
そう期待して質問すると、クリスタは大きく頷いた。
「もちろんいたわ。『伯爵、ダンスの要領で一歩踏み出せば、綺麗に剣がに刺さりますよ』と冷靜にアドバイスしていたわね」
何てことかしら。ギルベルト宰相まで理を失くすなんて、一どのような狀況かしら。
「ビ、ビアージョ総長は」
こうなったら常識派の総長に期待するしかないわ、と恐る恐る質問すると、クリスタが先ほどと同じように力強く頷く。
「ええ、総長も冷靜に、『陛下、心臓の位置からずれております。あと2センチ右側に寄せてください』とお兄様にアドバイスしていたわ」
「何てことかしら!」
なぜだか分からないけれど、3人が揃っておかしくなっていたようだ。
呆然としてクリスタを見つめると、彼は優雅に肩を竦めた。
「結局、その貴族は恐ろしさに気絶して前に倒れ込んだのよ。その際、お兄様が構えていた剣が首をかすめて出したものだからさあ大変! そこからは大混よ。ご婦人方が何人も悲鳴を上げて気絶するし、他の貴族たちは大きな足音を立てながら周りをうろつき回るし、騎士たちは誰も止められないし」
「ああ」
くような聲を上げると、クリスタは諦めなさいとばかりに首を橫に振った。
「だからね、その場でお兄様が今後二度と王宮舞踏會には參加しないと宣言した時、誰も何も言えなかったの。ちなみに、あの夜のことは『の舞踏會』という呼稱で、今も語り継がれているわ」
いつも読んでいただきありがとうございます!
12/7発売のノベル3巻に、書店特典SSを付けてもらえることになったのでお知らせします。
対象店舗は、アニメイト様、とらのあな様、メロンブックス様、電子書店様です。
活報告に詳細を記載していますので、覗いてみてください(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
〇本作品が「つぎラノ」にノミネートされています。
どなたでも1人1回投票できるので、応援いただけたら嬉しいです!!
★投票はこちらから★
※「か行」から「誤解された……」で探してもらうとスムーズです!
https://form.tsugirano.jp/
12/6(水)17:59までの投票となっていますので、どうぞよろしくお願いします✧˖*(*´ー`*人)
【書籍化】勇者パーティで荷物持ちだった戦闘力ゼロの商人 = 俺。ついに追放されたので、地道に商人したいと思います。
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