《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》新たな協力制
「ふむ。では、アモン殿。貴殿は、リッドの考えた策略に同意する……それで、本當に良いのだな?」
「はい。私は父、兄姉と決別し、部族長の座を簒奪する所存。どうか、バルディア家の力を私にお貸しください」
父上の問い掛けに、アモンは深々と頭を下げた。
いま僕は、新屋敷の來賓室で父上、アモンの三人だけで機を囲み、今後の方針を打ち合わせている。
狹間砦が侵攻をけているから、あまり悠長に話している時間はない。
でも、戦士達襲撃の後始末に加え、出発準備が整うまでにはし時間がかかる。
その間に、対グランドーク家の方針を簡単にまとめておこうとなったわけだ。
サルビアから狹間砦に狐人族が侵攻を開始したという報告をもらった時、僕はあることを閃いた。
アモンを旗に大義名分を掲げて、現狀のグランドーク家をバルディア家が壊滅させる。
その後、彼を部族長とした新制のグランドーク家を誕生させるという方法だ。
腐敗した制を一新するためには、現制における意思決定の仕組みを本から変えるしかない。
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グランドーク家を本から正して、良い隣人になってもらうためにはアモンが部族長となれるようバルディア家が支援するのが尤も効果的だろう。
重い空気が漂う中、「良かろう」と父上は頷くが「しかし、條件がある」と切り出した。
「……どのようなことでしょうか?」
顔を上げたアモンが、恐る恐る聞き返す。
「貴殿が部族長となれた暁には、當家に従屬するという『約』をこの場で結んでもらうぞ」
「そ、それは……」
アモンはたじろぐが、父上は眼をらせる。
「殘念だが、貴殿は斷れる立場にはなかろう。こちらとて、この戦にはそれ相応の犠牲を払わねばならんのだ」
部屋に沈黙が流れる中、僕はあえて咳払いをした。
「アモン。君が従屬すると約束してくれれば、狐人族の領地にバルディアの新たな生産拠點を建設することもできる。それに、領民達の生活水準を向上させることも約束するよ。限りなく同盟に近い、従屬関係と言えるかな。ですよね、父上?」
「うむ。加えて、これはアモン殿を守る意図もある」
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「私を守る……ですか?」
彼が首を捻ると、「そうだ」と即座に父上は頷いた。
「仮に、貴殿が部族長になれたとしてだ。ガレス達の支持者であった豪族達が、簡単に貴殿に付き従うわけがあるまい。最悪、貴殿が暗殺される可能も考えられる」
「……」
厳しく鋭い指摘に、アモンが息を呑んだ。
彼にも心當たりがあるのだろう。
「この戦に勝った暁には、ガレス達を支持していた豪族達の後始末も必要になるはずだ。その點は、我等が引きける。だが、その事をすため、貴殿には従屬してもらう必要があるのだ」
父上はそう言うと、凄んでいた顔をし綻ばせた。
「事が方落ち著けば、當家と協力して貴殿の理想を果たせば良かろう。従屬と言っても、軍事や外に関わる重大な意思決定以外の自治権は認めるつもりだ。それで良いかな?」
アモンは問い掛けにすぐに答えず、し間を置いて深い深呼吸をしてから父上の目を見據えた。
「畏まりました。改めて、よろしくお願いします」
「うむ。こちらこそ、よろしくお願いする」
二人は互いにを乗り出して固い握手をわすと、アモンがこちらに振り向いた。
「リッド殿のおかげで覚悟が決まった。改めてお禮を言いたい……ありがとう」
「こちらこそ。君とこうして協力制を結べたことは、嬉しい限りさ」
彼と握手をわしていると、父上がそれとなく目配せをしてきたので彼に気付かれないよう、目を細めて頷いた。
実はこの打ち合わせ、全て事前に通信魔法を介して行った父上との計畫通りに進んでいる。
父上が新屋敷に向かって來る時、通信魔法が使用できる団員を傍に置いてもらい、対グランドーク家の方針を父上と二人である程度決めていたのだ。
勿論、彼はその事を知らない。
彼がそのことにづいている可能はあるけど、今の様子だと心配はなさそうだ。
狹間砦に侵攻してきた狐人族……もといグランドーク家。
彼等に勝利できる保証はどこにもない。
それでも、ただ勝利するだけでは真の問題解決には至らないというのが、僕と父上の共通認識だった。
今回の侵攻を阻止できたとしても、狐人族のが変わらなければ、また新たな侵攻や問題が発生することは想像に難くない。
なら、どうするか? 答えは簡単だ。
グランドーク家のを変えるしかない。
それも、僕達に都合の良いようにできれば最良である。
だからこそ、父上は『約』を彼に提示したのだ。
暗殺からアモンを守る意図も噓ではないけどね。
帝國とズベーラのお偉い方々は、今回の問題を二家で解決するようにとお達しを出している。
仮にアモンを立てずに侵攻を退け、バルディア家がグランドーク家を滅ぼしてしまった場合、二家の問題では済まされず、國家間の問題になってしまう。
そうなれば、々とややこしい輩が出しゃばってくる上に、グランドーク家の跡目は誰になるのか? という新たな問題も発生してしまい、やはり問題解決には至らない。
様々な點を考慮すれば、アモンを狐人族の部族長としつつ裏でバルディア家が手綱を握ることこそ、両家両國がより良い関係を保っていける結果に繋がるだろう。
後々のことを考えれば、彼を立てることでバルディア家は『跡目爭い』に巻き込まれた……という主張もできる。
あと、通信機が存在しないという點も忘れてはならない部分だ。
僕や第二騎士団の一部の面々は、通信魔法で代用できるけどね。
この世界で一般的な報伝達方法は、馬や人の足を使った『手紙』だ。
つまり、帝國とズベーラの中央は、グランドーク家が國境を越えて侵攻した報がまだ伝わっていないだろう。
従って、短期決戦で全てを終わらせることができれば々と都合が良い。
その為には……と、考えを巡らせたところで僕はアモンの目を見つめた。
「さぁ、アモン。話がまとまった以上、後は勝つ算段だ。改めて、君が知っているグランドーク家の全てを聞かせてほしい」
「わかった。私の知っていること全てを、お二人にお話しいたします」
彼はそう言って頷くと、グランドーク家の予想される兵力、兵糧、戦略、注意すべき豪族の數など必要な報を教えてくれた。
話を聞く限り、簡単に勝てる相手ではないと改めて認識させられ、僕は息を呑んだ。
何せ、兵力がざっと見てもバルディア家の倍以上である。
やっぱり、正面からぶつかって勝てる相手じゃないだろう。
だけど、絶対に負けられない。
途中、カーティス、ダイナス、カペラ達を呼んだ。
そして、出発準備が整うまで時間の許す限り、僕達は軍評定を続けるのであった。
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