首長はそんな道を突っ切り事務所から出て行く。

事務所を抜けると人が二人余裕を持って並んで通れる幅のあるし長めの廊下が続いている。

こちらにもそこそこ人がいるな。

すると部屋から出た彼の姿を見るなり、廊下にちらほらいたの三分の二が彼の元へ近寄って來る。

どうやら彼が來るのを待っていたらしい。

しかしそれなら下に降りてるなり、呼ぶなりすれば良かった気もするが。

それこそ放送が出來る魔道とかありそうだし。

上司が戻るまで廊下で待っていないといけないのは辛いだろ。でも部屋は狹いし、別の部屋で待っていたら急ぎの書類の対応がさらに遅れるか。

いや、そもそも俺の相手なんかしていないでそっちを優先しろよっと思うけど。

そう思っていると首長は、足を止めることなく書類をけ取りながらそれぞれに指示を出している。

さすがに首長になるだけあって優秀なんだな。

彼の能力に関心しつつ、見ているとそのまま歩いて數分の部屋にる。

「(うーん、の部屋を覗くのは気が引ける。でも何か報が知れるかも……)」

敵視察中なのだから報を得ないと意味がない。

ましてや相手は首長の仕事部屋。聲は聞こえなくても何か報になるがあるはず。

これは仕方がないこと。そう！　報を得ないことには対策が出來ないのだから仕方がない！

そう自分に言い聞かせる。

そもそも仕事部屋なのだから何かがあるはずもない！

勢いをつけて扉を抜ける。

するとそこには──

「うふおっ　︎」

赤の何かが視界を塞ぐ。

慌てて『天眼』の距離をし下げる。

すると視界は戻り、首長の背中が映る。

ああ、勢いよくったから距離を間違えただけか。

「(ビックリした。いきなり視界が真っ赤になるんだもんなー)」

突然のことに慌てたが、原因が分かり一安心する。

そういえばダンジョンで初めて『千里眼』が発した時も似た反応をしたな。

久しぶりに起こした『千里眼』での失敗にふと昔のことを思い出す。

あの頃は能力の発の仕方も分かっていなかったから今回みたいに魔力が一気に流れてしまって、ゴブリンのがドアップになった。

今回見たいにゴブリンのの緑で……

「──？」

そこで違和を覚える。

『千里眼』でアップされたのはゴブリンの。だから緑。

今見ている首長のスーツは黒に限りなく近い紺。その下に見えるのは白のシャツ。執事の服裝に似ている。

そして髪は桃。

つまりは赤の要素がないのだ。

……俺は一なんの赤を見たんだ？

謎ではあるがそれらしい答えに見當がつかない。

まあ、どうでも良い分からないことなんて考えるだけ無駄か。

部屋の中は中央で互いに向き合っている上質な革で出來たソファ。その向こうに大量の書類が積まれた上質ではあるがシンプルなデザインの仕事機。

その席から見て左の壁には書類が置かれている棚。

首長をしている割には簡素だな。

でも俺もそこまで豪華な裝は好きではないし、むしろこんなじの簡素な方が好きだ。

俺の中でしだけ彼への好度が上がる。

首長はそそくさと椅子に座り、先程もらった書類と機に置かれた書類の山に向き合う。

あれ？　そういえばブライアンが來たから帰ったはずなのに、別に待っている訳ではないのか？

それとも今から來るのか？

もしその間にしでも仕事を進めるつもりならかなり仕事を詰めているな。

俺に會って帰るだけで七百三十メートルも移。さらにさっきもらった書類と既に積まれていた書類の処理。

これだけでも十分だと思うが、今から突班長ブライアンが來るらしいから恐らく報告だろう。

どれだけ働く気なんだ……

まだ怪しいと考えている彼だが、その仕事熱心には呆れと共に嘆の言葉を送りたくなる。