《じゃあ俺、死霊《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。》28-3
28-3
「來やがったぞ……!磁力魔法だ!」
俺がぶと、ライラは待ってましたとばかりに呪文を唱えた。
「アンチ・マジック・シェル!」
掲げられたライラの両手から、白のが放たれた。直後に、セカンドの重力波が襲い掛かるが……俺たちが押しつぶされることはなかった。
「よし!ちゃんと防げてるぞ!」
「へへへ。任せとけって言ったでしょ!」
得意げに笑うライラ。このアンチ・マジック・シェルの魔法は、特定の魔法を無力化することができる。ただし、制限も多い。使用中、ライラは一切けないし、を移させることもできない。さらには一つの魔法に対してのみ有効と、およそ戦闘の最中に使えるような魔法じゃないんだ。
でも、それでいい。これはあくまで、俺たちを守るためのものだ。戦いの鍵となるのは、俺たちじゃない……!
「くうぅ……」
その鍵の一人、クラークは、膝をつき、剣を地面に突き立てて、なんとか重力に耐えていた。
「たはっははは!ちょっと本気を出しただけでこれかよ!そんなんでよく、このオレを倒すとか言えたもんだな」
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セカンドは傷ついた左を押さえながらも、歯を剝き出して笑う。
「ほんのちょっとかすり傷を付けただけでも、まあ上出來なのかもしれねぇな。誇っていいぞお前ら」
ひざまずき、首を垂れる恰好になっているクラークの頭を、セカンドはぺちぺちと叩いた。
「とりあえず、そこで寢とけや。その間に、殘りのザコを片付けてくるからよ」
セカンドが向いたのは、保護に包まれた俺たちだ……!
(ああ、當然そうなるよな。俺たちはここから一歩もけないんだから)
ライラの張った保護は、セカンドの磁力魔法のみを防いでいる。つまり、それ以外の魔法や、理攻撃には一切無防備ということだ。そして移もできないので、攻撃され放題だ。それは當然、俺も、ライラだって承知している。
(必然、お前は俺たちを始末しにやって來る……)
にやつきながら、セカンドが一歩踏み出した。そのとたん、二つの影がく!
「ふっ、ううぅ!」
「ぐ、おおおぉ!」
フランとペトラが、額に青筋を浮かべながら、何とか立ち上がった。とてつもない重力の中、けるのは二人だけだ。二人は背中を向けたセカンドに襲い掛かる。
「だから、うぜえって」
っ!セカンドがぐるんと振り向き、両手をデコピンのような形にした。奴が指をピンとはじくと、見えない衝撃波に吹っ飛ばされたように、フランとペトラが宙を舞う。
「ばっかだなぁ、おめえら。なんどやりゃ気がすむんだ?同じ手を食うわけねーだろ」
セカンドが手を振り下ろすと、二人はぐしゃっと地面に叩きつけられ、かなくなってしまった。
「フランさん、ペトラさん……!」
ウィルが悲痛な聲をらす。フラン……
「さあ、これで萬策盡きたか?殘念だったなぁ。なけなしの知恵を絞ったのによ」
今度こそ、セカンドはこっちに向けて歩き始めた。もう後十歩も進めば、俺たちの眼前だ。俺は歯を食いしばって、耐えた。
そう、耐えるんだ。奴に、こちらの思を諭させないように。顔に出てしまって、気付かれたら臺無しだ。だから今は、耐えるんだ……
「……マグナ・ダイアンサス!」
ついに、待ちんでいた聲が聞こえてきた。瞬時にセカンドが振り返る。だがすでに、やつの剣は振るわれている!
ガキィーン!
「くっ……そが。なんでてめえ、けてる……!」
「ちぃ……!」
ああ、惜しい!あと一歩のところで、黒い鱗に阻まれた。だけど、本當に惜しかった。あとほんのし、セカンドが気付くのが遅ければ。
「行ける……行けるぞ!クラーク!」
全を青白いに包まれたクラークは、剣を再び握り直した。これにはさしものセカンドも、泡を食っている。
「クソが!潰れてろ!」
セカンドが上ずった聲でぶと、クラークの周囲の地面が、ボコンと沈み込んだ。それだけの重力が、彼を襲っているということだ。それでもクラークは倒れない。それどころか、剣を振り回して、セカンドを後退させたのだ。
「な、なんでだ!お前は確かに、オレの力をけているはず!どうして潰れねえ!?」
「ああ……確かに、貴様の能力は発しているよ……」
クラークの顔は、真っ赤だった。とてつもない圧力に耐えているかのように。
「だったらどうして……」
「ふん……磁力をれるのが、貴様だけの専売特許だと思ったら、大間違いだ。僕は雷の勇者。貴様の力に対抗するくらいなら、僕にだって可能なんだよ……!」
「まさか……てめえ……!」
セカンドが目を見開くと、クラークは無理やり、顔に笑みを浮かべた。
「そうさ……貴様の重力に対抗するように、僕は斥力を発している……!」
「ば、バカじゃねえの。んなことやって、ただで済むと思ってんのか……」
セカンドが顔を引きつらせながらせせら笑う。それをクラークは一蹴した。
「だが、これで……貴様と、戦える!」
そう。クラークは、セカンドの重力と同じだけの力を、自らのに與えているのだ。押しつぶす力に対して、持ち上げる力を掛けて相殺するという、理屈もへったくれもない脳筋理論。それは、セカンドの言った通り、力と力にプレスされるようなものだ。當然、クラークのには想像を絶するほどの負荷がかかっているはず。
(どっちみち、長くは持たない!とっとと決めろ、クラーク!)
これこそが、俺たちの作戦の最終段階だった。クラークが雷魔法をもってして、セカンドの磁力魔法を破る。その為に、ずっとペトラとフランは弾戦を仕掛けていたのだ。
つづく
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読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
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