《じゃあ俺、死霊《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。》28-4

28-4

「だああぁぁ!」

クラークが力任せに剣をフルスイングする。

「クソッ!」

セカンドは腕を黒い鱗で覆ったが、衝撃で腕ごと吹き飛ばされそうになっている。明らかに、さばき切れていない!

(闇雲に魔法を使えば、奴は警戒して、黒炎を展開してくるかもしれん)

戦いの前、ペトラが語ったことだ。

ペトラいわく、セカンドがる黒炎は、魔法すらも燃やしてしまうという。あれを出されたら最後、理も魔法も、奴には効かない。俺たちは攻撃手段の一切を失って、一気に苦境に立たされることとなるだろう。

(だからこそ、奴の油斷をう必要があった)

最初から全力で仕掛けては、奴も當然それに応じようとするだろう。だが、こちらが闇雲に突撃を繰り返したら?

(奴は必ず、私たちを嘲ろうとするはずだ。あいつは他者を見下すことを、何よりの愉悅としているようだからな)

そして、ペトラの読みは當たった。あいつらはペトラやクラーク、フランをいたぶり、弄ぼうとした。だが、そこが勝利への閃だ。

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(奴が絶対の自信を持つ、磁力魔法。俺たちが破れるはずがないと思っているその力こそが、最大のチャンスなんだ……!)

奴は、俺たちの罠に掛かった。最強のカードを切ったつもりだろうが、逆に俺たちは、それを待ち構えていたんだ!

「うおおぉぉぉぉぉ!」

クラークは今までの怒りをぶつけるように、怒濤の勢いで剣を叩き込む。セカンドにこれ以上力を使わせない気だ。実際セカンドは、鱗でを守るのがいっぱいだ。黒い鱗が何枚もはがれ、辺りに散らばっている。

キィーン!翻ったクラークの剣が、ついにセカンドの腕を弾き飛ばした。奴のが無防備に曬される。チャンスだ!

「クソがっ……!」

だがセカンドも食らいつく。鱗をに集中させ、分厚い盾を作り出す。あれだけ厚くされたら、クラークの突きでは貫けない!さっきはペトラの力も借りることで、ようやく小さな傷をつけたくらいなのに……

「……貴様は」

「あ……?」

「貴様は、僕を、舐め過ぎだっ!」

バチバチバチィ!クラークの剣に、青い電撃が迸っている。その剣を、思い切り突き出した。

「くらえぇぇえぇぇぇ!」

ガッ!鱗に突き立った剣先が、発したかのようなを放つ。

「ぐああぁぁぁぁ!」

バラバラと鱗をまき散らしながら、セカンドがぶっ飛んでいく! 

「や、やった!今のは効いただろ!」

俺は思わず小躍りしたい気分だった。するとライラが、上げていた腕を下ろしたじゃないか。俺はびっくりしたが、ライラは満面の笑みを浮かべている。

「磁力のまほーが消えたよ!あいつ、まほーを維持できなくなったんだ!」

「へ?お、おお!そういうことか。あんだけぶっ飛ばされたんだ、當然だな!」

クラークの渾の一撃は、さしものセカンドでも耐え切れなかったと。いい気味だ!がっくりと片膝をつきながらも、クラークも安堵の笑みを浮かべている。

「磁力をれるということは、なにも重力に対抗するしかないわけじゃないってことだよ。剣に磁力を帯びさせて、あいつに引き付けることも可能なのさ」

「ああ、なるほど……それで急に威力が強くなったのか」

「それに、剣が鱗を貫いた瞬間に、ありったけの電撃をもぶっ放してやったんだ。いくらい盾を持っていても、黒焦げになる威力だよ」

「うわ、それは痛そうだ」

「ふん。この程度、あの男には手ぬるいくらいだ」

確かにそうかもな。腐っても、セカンドは勇者。それも伝説の勇者だ。これくらいでくたばったとも思えない。それに、死なれても困るのだ。まだロアとコルトの呪いが解けていない。焦げている奴をふんじばってから、呪いの解き方を吐かせねえと。

俺が奴へと近づこうとした、その時……

「っ!!!気を付けろ!」

え?俺は踏み出そうとしたまま直して、目だけを聲の主、ペトラへと向けた。そのペトラは、まっすぐ一點を見つめている。

「なんだ、あれは……?」

あれ?ペトラの視線の先には、大きな黒い塊が転がっている。なんだ、あれ?あんなもの、さっきまでそこになかったぞ。それに、妙だ。その黒い塊、よく見ると節のついた足や、ゴツゴツした腕が見える。何かの生きの……死骸か?

「どうしてあんなものが、急に……」

「……嫌な予がする。おい、誰でもいい!あれを破壊しろ!」

「え、え?死骸をか?」

「そうだ!急げ!」

よ、よく分からないが、とにかくペトラに従おう。俺は焦って仲間たちに振り返る。だが……すでに、時は遅かった。

「イーター・ケルベロス!」

ズ、ズズズズ。

な、なんだ……?死骸がどす黒くなっていく。すると、死骸がびくりといて、苦しそうにいたじゃないか。びっくりした、死んでなんていないぞ。だけど、どうして急に……?

「ふぅー……やれやれ。まさか、コイツまで使う羽目になるとはな」

え!?俺たちは、張り詰めたように直した。いち早く立ち直ったのは、クラークだ。

「な……なぜだ!僕の一撃を喰らって、どうして立てる!」

クラークが驚愕の表ぶと、ペトラが苦々し気にこぼす。

「イーター・ケルベロス……他者の生命力を吸い取り、自らの命とする、闇の魔法だ」

「命を、吸い取る……?」

なら、まさか……まさか!

俺は震えながら、そいつの方を向く。奴のは、すっかり元通りになっていた。傷の一つも見當たらない。首をゴキゴキと曲げてから、奴は憎悪の籠った目で俺たちを睨む。

「あー。やってくれたな、カスどもが」

ボウッ。

復活したセカンドの周りを、黒い炎が舞った。

つづく

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読了ありがとうございました。

続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。

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