《【書籍化】その亀、地上最強【コミカライズ】》及第點……?
「みっ」
ほら、というじで肩の上に乗ったアイビーが僕のことを叩く。
張で完全に思考がフリーズしていた僕は衝撃にハッと意識を取り戻し、
なぜか中にるのは、アイビーも許されている。
本當なら生きや武なんかは持ち込んじゃいけないらしいだけど、なぜかアイビーは許可が出てしまったのだ。
王様から直々に言われてしまえば顔を上げないわけにもいかず、急いで上を起こす。
するとそこには寶石がちりばめられた玉座に座っている、一人の壯年の男の姿があった。
彼が、ヴェント二世……。
「此度の戦働き、誠に大義であった。ブルーノ達救世者がいなければ、王國は未曾有の危機に立たされていたことだろう」
「あ、ありがとうございます……」
その頭には玉座よりも大粒の寶石が象眼されている王冠を著けており、に付けているのは金糸の刺繍されている真っ赤なローブだ。
年齢は四十代後半くらいだろうか。
ストレスからかしだけ髪も薄くなっていて、顔にも今まで苦労した分だけのシワが刻まれている。
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正直見た目は豪華な裝飾品に似つかわしくない、しくたびれたおじさんのようなじだ。
けれどその瞳は思わず息が詰まるくらいに力強く、目力だけで人を殺せるんじゃないかと思ってしまうほどだった。
「救世者達はそれぞれが一軍に匹敵するほどの猛者揃いだったが、やはりその中でもブルーノとアイビーの勲功は、他に比類がないほどにすさまじいものであった。そして萬を超える魔の素材を戦後の復興に使ってほしいというその申し出もまた、今までに類を見ないものである」
僕達は魔王島とつながっている五つの港町を回りながら、皆を助けるためにひたすら戦い続けた。
そのため今回僕らが倒した魔の素材達は、とんでもない量になってしまっている。
話し合った結果、今回の戦いで得られた魔の各種素材の一部を、復興に充ててもらうことにした。
一部といっても、王様が言っているようにその素材の數は軽く萬を超えている。
その中にはその革が一枚金貨數枚もするような二等級・三等級の魔達も多く含まれているので、それなりの金額にはなっているはずだ。
しだけホッとした様子の王様を見れば、僕の予想がそこまで大きく外れてはいなさそうだった。
今回各領地が結構な打撃をけているみたいだし、困った時は助け合いだ。
それにここ最近、ようやく黒の軍勢で倒した魔達の素材の換金が終わった。
それを合わせるととんでもない金額(的に言うと、僕とアイビーがある程度散在し続けても一生かかって使い切れないような大量の額)になっているため、お金はそれほど必要としていない。
というか更に増えちゃったこのお金をどうやって使うべきだろうか……。
大金を持ったせいで人生が狂うなんてよくある話だから、よく考えなくっちゃいけない。
とりあえず仕送りの額、増やしてみようかな……。
って、今はそんなこと考えてる場合じゃなかった!!
「王國に暮らしている者として、當然のことをしたまでです」
「なるほど、ブルーノは勇士であるな」
「みいっ!」
「おっと、もちろんアイビーもだぞ。貴殿が人であったなら、勲章の一つでもあげられたのだがな」
そう言うとヴェント二世はいかめしい表をしだけ緩めた。
どうやら彼も、アイビーのかわいさに魅せられてしまったようだ。
「ごっほん! では改めて……ブルーノにアイビー、此度の二人の功績、正に比類なし。余は二人の戦働きに、褒賞を以て報いよう。勲章を與えるのは當然のこととして……他に、何か求めるものはあるか?」
「……」
僕はアイビーの方を向く。
するとアイビーも僕の方を向いていて、僕らは見つめ合う形になった。
通常であればここは、
『何もございません、陛下の心のままに』
と答える場面だ。
けれど『その答え方をしてはダメじゃ!』と事前にカーチャからは釘を刺されている。
なんでもそうなった場合僕はまず間違いなく爵位を與えられてしまうらしい。
そこから考えられるパターンはいくつかあるらしいけれど、僕が一度貴族分になってしまうと、王國に対して々な責任が生じてしまう。
そうなればまず間違いなく王國は僕を通してアイビーに々な枷をつけるようになるだろうとエンドルド辺境伯も言っていた。
そんな事態になることだけは、なんとしてでも避けなくちゃいけない。
なので僕は勇気を出して、ゆっくりと口を開く。
張からか、口の中がいつもの何倍もねばつくような気がしていた。
「一つ、お願いがございます」
「……申してみよ」
まさか本來の流れと違う言葉を言われると思っていなかったからか、ヴェント二世の眉がぴくりとく。
けれどその変化には気付かないふりをして、僕は用意していた答えをつっかえないように口にする。
「自分は自由をする冒険者で、今後王國に留まり続けるかもわかりません。なので対価は爵位や勲章ではなく、金銭で支払っていただけると助かります」
「ブルーノ殿、國王に対してそのような言い方は……」
「構わん。――わかった、そのように取り計らおう」
國王様は苦言を呈そうとした家臣の言葉を手で制すると、立ち上がった。
數段高い位置からこちらをジッと見下ろしながら、品定めをするような視線を向けてくる。
僕は心ではしビビりながらも、毅然とした態度を崩さずに頭を下げた。
「ありがとう、ございます……」
「みみっ……」
アイビーも僕とタイミングを揃えて、一緒にぺこっと頭を下げる。
そのまま退出を許され、無事に僕らの謁見は終わることになった。
しだけピリッとする場面こそあったものの、そこまで大きな問題はなく無事に終えることができた。
突然王様と會うことにあってし焦ったけど、一応及第點くらいは取れた……のかな?
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