《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》狹間砦に向けて
「うん……うん、わかった。ありがとう、サルビア」
(とんでもないことです。では、また何か報告がありましたら連絡いたします。以上、通信終わります)
報局のサルビアとの通信魔法が終わると、小さく息を吐いた。
いま、僕が居る場所は木炭車で牽引されている荷臺の中だ。
荷臺と言っても、真ん中には振で倒れないよう固定された機が置いてあり、會議ができる工夫がなされている。
この場には、僕の他に父上、カーティス、アモン、カペラ、ディアナと錚々たる顔ぶれが揃っていた。
理由は勿論、狹間砦に向かうまでの間も軍評定を行うためだ。
「狹間砦のサリアから報局に戦況の報告がありました。現狀、クロス率いる守備隊が善戦。グランドーク家が率いる軍の侵攻を狹間砦の前で食い止めているとのことです」
そう言うと、皆から安堵したような聲がれる。
でも、僕はすぐに「ですが……」と続けた。
「グランドーク家は、まだ戦力に余力があり、このままではいずれ砦は陥落するだろう……と、クロスは判斷しているそうです。加えて、グランドーク家の軍のきは、まるで何かを待っているようようにも見えるとのこと」
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「そうか。リッド。お前はその報告を聞いてどう思う?」
「決まっています。おそらく、バルディア家の本隊……いえ、正確には僕と父上が前戦に出てくるよう仕向けているのでしょう」
「ふむ。何故、そう思う?」
父上も察しているんだろうけど、あえての質問だろう。
「理由は『時間』です」
そう答えると、僕はバルディア家とグランドーク家の現狀を機に置いてある地図を指差しながら説明していく。
なからず、帝國における皇帝と保守派の貴族は、本気でグランドーク家が侵攻してくるとは考えていなかったのだろう。
帝國貴族達は、バルディア家が突出していく勢いや力を削ぐ目的。
もしくは嫌がらせで、今回の問題解決に消極的であり、両家の間で解決すべきという主張で保守派と革新派が一致。
皇帝としては、貴族達の主張に止むなく同意したというじである。勿論、世論を裏で導した貴族がいるだろうけどね……。
何にせよ、両家で解決すべきという結論が出た事により、帝國軍はバルディア領に駐在していない。
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本來、戦爭が起きる狀況であれば、當然大規模な帝國軍が紛爭地域に配置される。
でも、今回はその限りではない。
政治的に見れば、グランドーク家が帝國とズベーラという両國の首脳を出し抜き、奇襲的にバルディア家へ戦爭……もとい、領地戦を仕掛けたのだ。
通信魔法があるから忘れがちだけど、この世界の基本的な報伝達方法は人や馬で屆ける『手紙』だ。
グランドーク家がバルディア家に領地戦を宣戦布告。
同時にバルディア家の屋敷を襲撃、狹間砦に軍を侵攻させたという蠻行は、父上が出陣を前に皇帝へ手紙を送っている。
だけど、帝都に手紙が屆くのは早くても數日後だ。
加えて言うなら、バルディア領の帝國側の國境付近から、狹間砦には馬で數日。
バルディア家の屋敷から狹間砦までは、馬で二日程度の距離である。
もし、帝都から狹間砦まで帝國軍を派遣するとなれば、準備期間も含め、相當な日數が必要になるだろう。
その間に、何もしなければバルディア領はグランドーク家に滅茶苦茶にされてしまうことになる。
逆に言えば、グランドーク家も帝國軍がバルディア領に來るまでには、戦爭の決著をつけなければならない。
じゃあ、どうすれば決著が付くのか?
それは、意外と簡単だ。
チェスで言えば『キング』。
將棋で言えば、『王將』。
つまり、バルディア領の當主である父上と嫡男である僕を捕らえる。
もしくは、討ち取ることだ。
だからこそ、グランドーク家は狹間砦を大軍ですぐには落とさず、突くことで父上と僕を前戦にい出そうとしているのだろう。
そして、彼等のいと理解していても僕達、バルディア家は前に出なければならない。
それが、辺境伯という貴族の役割であり、領地を任されるの役目だ。
尾を巻いて逃げれば、命だけは助かるかもしれないけど、領地、信頼、立場、その他の全てを失うことになり、ある意味では死よりも辛い、生き恥をさらすことになる。
いや、敵前逃亡の罪を問われ、処刑される可能だってあるだろう。
グランドーク家もバルディア家が逃げるとは考えてはいないだろうけど、挑発して反応を確かめてから、大軍で潰す気なのかもしれない。
「……というのが、僕の考えです」
「うむ。それでほぼ間違いないだろう。だが、もう一つ付け加えることがある」
父上は、地図上の狹間砦と屋敷の間を指差した。
「グランドーク家が我等をいだそうと狹間砦を突き、挑発していることは間違いない。だが、奴らの真の目的は、おそらく狹間砦を超えた先にあるこの平地だ。そこで、決戦を考えているのだろう。平地となれば、正面でぶつかり合うしかない。そうなれば、數のない我等が圧倒的に不利な戦いを強いられるからな」
皆が息を呑む中、父上だけは不敵に笑った。
「しかし、だ。決戦の場所が狹間砦となれば、我等にも勝機は生まれるだろう。リッド、お前が考えた策を話せ」
「畏まりました。では……」
そう言って頷くと、僕は地図を指差しながら策略をこの場にいる皆に説明していく。
方話し終えると、皆は唖然としていた。
「でも、これだけじゃまだ足りない。そこで、アモン。君の力を借りたいんだ」
「わかった。私にできることであれば、何でもさせてもらう」
「ありがとう。じゃあ……」
力強く頷いてくれた彼に、僕はあることを尋ねた。
「な……⁉ リッド殿、それは本気で言っているのか?」
「うん。數で勝てない以上、出來ることは何でもしないといけないからね。大丈夫、々と用意はしてあるよ」
その後も狹間砦に向かう荷臺の中で、僕達は軍評定を続けた。
僕が考えた策を軸において、不足部分や問題點を皆が指摘していく。
いつもだったら車の振に直ぐ酔う僕だけど、この時だけは酔うこと無く、頭の中はずっと冴えている。
それから暫くして、戦場になっている狹間砦が小さいながらも見えてきた。
魔法によるものだろうか、何度も砦でが煌めいては消えていく。
よくよく見れば、砦のあちこちから白と黒の煙が立ち上がっているのが遠目からでも確認できる。
その景に、思わずが震えたその時、僕の肩にぽんと手が置かれた。
「リッド。戦場は想像以上にずっと悲慘な場所だ。気をしっかり持つようにな」
「……はい。畏まりました」
父上の厳しくも優しい言葉に、僕は靜かに頷いた。
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