《じゃあ俺、死霊《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。》32-3

32-3

「喝ッ!」

剣に魔力を籠め、斬撃を飛ばす!セカンドは橫っ飛びでそれをかわしたが、さっきよりも避け方に無駄が多い。某の剣を脅威だと認め、恐怖している証拠だ。

「そうだ、セカンド!貴様は常に怯えていた!」

走りながらぶ。フランも隣に並んだ。

「なにわけの分かんねーこと言ってやがんだ!」

セカンドが腕を振るうと、無數の槍が宙に現れた。雨腳のごとく降り注いでくる。

「分かっていたのだろう!貴様が一番、勇者の力というものを!」

剣を振るって、飛んできた槍を叩き折る。フランも爪で薙ぎ払った。そうやって槍を捌きながらも、口は休めない。こればかりは、言ってやらねば気が済まない。

「貴様は恐れた!クラークの力を!尊の力を!だから、手下に調べさせた!違うか!」

レーヴェは命じられて、勇者の能力を調べ上げたと言った。その命を出した者は誰か?何のためにさせたのか?

「貴様は決して、我々と正面から戦おうとしなかったな!しでも不利だと見るや、すぐにでも逃げ去った!」

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ヴォルフガングの姿の時、きゃつは橋を破壊し、戦わずして連合軍を壊滅させようと企んだ。それを切り抜けたのち、きゃつと戦闘になった際には、しでも不利になるとそそくさと退散した。それはなぜか?

「ちぃ……!ゴチャゴチャと、るせーんだよ!」

槍の雨をいち早く抜けたのはフランだ。彼に対して、セカンドは黒炎を長槍の形にして振り回し、フランを近寄らせまいとする。

「お前はサードに変裝して、騙し討ちをした!下手に出て、びへつらうような真似までしたことは覚えているか!」

「黙れ!テメエらがマヌケだっただけだろうが!馬鹿みたいにオレを信用して、オレ様の圧倒的な力の前にひれ伏した!」

「語るに落ちたな、セカンド!貴様に絶対的な力があるのならば、なぜ策を弄した!正面から叩き伏せればよかったものを!」

某は力を籠めると、再び斬撃を放った。セカンドの長槍が、半分にすっぱりと切り落とされる。

「チッ……!クソが!」

セカンドはやけっぱちに、折れた槍をフランに投げつけた。その瞬間、フランが妙技を見せた。飛んできた槍を、手の平で打ち返したのだ。自らの得で攻撃されると思っていなかったセカンドは、慌ててをかわす。

「貴様が分からんと言うのなら教えてやろう、セカンド!全ては恐怖故だ!貴様は心の底から、勇者を恐れていた!貴様自の足跡そくせきが、それを証明している!」

「だあああぁぁぁまぁぁぁぁれぇぇぇぇ!!!」

來た!追い詰められた、ここぞという時。きゃつは必ず大振りになる。

「消し飛べ!バーストレパード!」

風がセカンドを包み込む。唸る風が迫りくるが……

「信じているぞ!」

力を籠め、風に飛び込む!その瞬間、朗々たる聲が響き渡った。

「エアロフテラ!」

ズアアァァァ!突風が吹きつけると、風と風とが、お互いを打ち消し合った。必ず來ると信じていた。ライラの、呪文の援護が。

に飛び込んでしまえば、恐怖に引きつったセカンドの顔は、すぐそこだった。

「破アァッ!」

「がっ……!」

某の剣が、セカンドの左抜く。

「さあ。あと何回だ?」

ぐりっと剣を捻り、引き抜く。剣が抜けると、セカンドは魂が抜かれたように、がっくりとうなだれた。もしや、もう限界か?いや、それとも……

「……オラァァ!」

「っ」

やはり!セカンドが手のひらをこちらに向けると、鋭い黒炎の一閃が放たれた。紙一重でかわしたが、衝撃波で鎧の一部を持っていかれた。どこまでも悪あがきよるわ……!

(桜下殿!上です!)

エラゼムの聲に促され、弾かれたように上を見上げる。そこには宙に浮かび、ぐんぐん上昇していくセカンドの姿があった。

「ハッハハハハハァ!馬鹿が!テメエの剣が魔力を削るなら、斬られなきゃいいだけの話なんだよ!」

くっ、しまった!空に逃げられては、某は追うことはできない。一方で、きゃつは好きなだけ攻撃ができる。

「度し難く、悪知恵の働く……!」

セカンドは上空に留まったまま、両手を高く掲げた。

「テメェらまとめて、全部消してやるよ……!」

黒い炎が、きゃつの頭上に集まっていく。

「逃げられると思うな……!たとえどこに隠れようが、々に消し飛ばす!」

それは次第に大きくなり、やがて漆黒の太が如き、巨大な球と化した。

(なんと、禍々しき炎か……)

「奴め、まだあれほどの力を……!」

恐らく、きゃつの魔力にも余裕は無いはず。ならばこの一撃で、確実に仕留めるつもりか。

「何としても阻止しなければならん!エラゼム!次の一撃、お前と共に戦う最後の一撃となろう!」

意に!吾輩の全霊を込めましょう!)

柄を強く握り、橫に構える。今こそ、切り札の切り時だ。

セカンドは、一つ間違えた。某の剣は、魔力を消すのではない。れた魔力を“吸い取る”のだ。

「はあぁぁぁぁぁ……!」

が揺らぎ始める。ぱちぱちと、火花のような閃が飛び散り出す。

「ゆくぞ!」

ドオオォォォォ!

鍔つばから、今までに吸い取った魔力が怒濤のように噴き出した。柄を握る手がびりびりと震える。噴き出す魔力はどんどんとび、元の何十倍もの長さとなっても、なおび続ける。

「何をしようが、無駄だぁ!」

異変を察したセカンドが仕掛けてくる。漆黒の太が、今さに振り下ろされようとしている!

「鎧袖一!一撃の下に、全てを斷たん!」

決著の時だ、セカンド!

「燃えよ!ソウルフル・フレイム!」

剣を振り上げる!途方もなく長大にびた魔力の刃は、巨大な弧を描きながら、セカンドが振り下ろした太に迫る。

「はああぁぁぁぁぁぁ!!!」

「死ねえええぇぇぇぇ!!!」

シャパンッ。

某の剣は、空に薄桃の虹を引いた。一瞬の靜寂ののち、黒き太が強くる。

ズドオオオオオオン!

漆黒の太は、宙で発四散した。

(お見事)

耳元で聞こえるエラゼムの聲は、すでにずいぶんとおぼろげだ。

(勝たれよ、桜下殿……)

「ああ……ありがとう、エラゼム」

彼の聲が遠のくと同時に、を包み……

そして俺は、元の姿に戻っていた。

つづく

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読了ありがとうございました。

続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。

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