《気になるあの子はヤンキー(♂)だが、裝するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!》490 タクトとミハイル、そして……。

「あ、タクオ。これ」

1つのトランクを差し出すリキ。

どうやら、ミハイルの荷らしい。

俺がトランクをけ取ると、すぐさま車のエンジンをかける。

「え、ちょっと……」

引きとめようとしたが、間に合わなかった。

「じゃあ、俺とほのかちゃんは、卒業式の打ち上げがあるからさ。二人はゆっくり新婚旅行を楽しんでくれよ」

「そうそう♪ おじゃま蟲の私たちは、宗像先生やみんなと焼き鳥屋さんでパーティーするから」

なんか、そっちの方が楽しそうな気がするけど。

「二人とも、待ってくれよ! 本當にこのまま、行くのか!?」

俺の問いに、リキとほのかは黙って顔を合わせる。

しばしの沈黙の後、二人は息を合わせてこう言った。

「當たり前だろ」

「當たり前でしょ」

こいつらの方が、もう夫婦じゃね?

ふと、気になったので、ミハイルに目をやると。

顔を真っ赤にして、アスファルトに視線を落としていた。

恥ずかしさからか、を震わせている。

Advertisement

「……」

黙り込むミハイルを見て、心配になった俺は聲をかける。

「なあ、大丈夫か?」

「え……?」

俺が聲をかけるまで、我を忘れていたようだ。

大きな目を丸くして固まっている。

お互いどうしていいか分からず、その場で立ちすくんでいると……。

リキとほのかが乗る、ブライダルカーがき始めた。

「じゃあな! また同窓會とかで會おうぜ!」

「二人とも、お幸せに~♪」

殘されるこちらのも考えてよ……。

リキたちが去って、どれぐらい経っただろう。

20分以上は、このラブホテルの前に立っている。

裏通りとは言え、博多駅の近くだ。

真っ白なタキシードとウェディングスーツを著た、俺たちは悪目立ちしている。

すれ違う通行人たちが、指を差して笑う。

「なに、あれ?」

「きっとウェディングプレイとかじゃね」

違うわっ! プレイじゃなくて、正真正銘の夫婦だ!

するパートナーを見て、嘲笑う奴らに苛立ちを覚える。

これ以上、ミハイルを笑いものにさせてたまるかっ!

それに……宗像先生の真似じゃないが、ホテルには違いない。

どちらにしろ、今夜、俺とミハイルは結ばれる……予定だった。

なら、初めてがムードのないラブホでも良いじゃないか。

気合をれるために、頬を両手で叩く。

「うしっ!」

ようやく、俺も覚悟を決めた。

そして、ミハイルに一言。告げる。

「ミハイル、ろう」

「え、えぇ!?」

驚く彼を無視して、話を続ける。

「俺たちはもう結婚したんだ。今日からずっと二人で暮らす……なら、遅かれ早かれこういう場所も利用するだろ?」

「うん……そうだよ、ね」

目を合わせてはくれないが、ミハイルも俺の考えと同じようだ。

その姿を見た俺は同意と見なし、黙って彼の手を摑む。

これ以上の言葉は、無粋だろう。

し強引だが、彼の手を引っ張って、ホテルの中へろうとした……その瞬間、ミハイルが俺の手を払う。

驚いた俺は振り返って、彼の顔を確かめる。

「ご、ごめん……嫌とかじゃなくて……あのね、実は」

顔を真っ赤にして、をもじもじとさせている。

なんだ? トイレにでも行きたいのか?

そういうことなら、ホテルにもあるだろう。

「どうした? やはり、りづらいか?」

俺の問いに、頭をブンブンと左右に振って見せる。

「そうじゃないんだって……。あのね、タクトはウェディングドレスを見たくないって、言ったじゃん」

「ああ……そう言えば、そんな話もあったな」

「実はもう一人分、作ったの。ドレスを」

「へ?」

首を捻る俺に対して、彼は黙って指を差す。

ミハイルが差したのは、俺の右手。

先ほど、リキに渡されたトランクケースだ。

「その中には……アンナの分。ウェディングドレスがっているの」

久しぶりに聞いた、その名前に驚きを隠せない。

「なっ!? アンナだと!?」

「うん……いろいろ考えたけど。あ、アンナも著たいと思うし……タクトも見たいかなって」

「そ、それは……」

否定すれば、噓になる。

彼の言う通り、俺も一年以上、彼と會えていない。

それにプロポーズした際、男のミハイルを選んだが……。

本音は、未練タラタラで。

のことを引きずっているのも事実だ。

ウェディングドレス姿のアンナ……想像しただけで、興してしまう。

「ったい……見たい!」

気がつくと、自分の正直な気持ちをミハイルにぶつけていた。

またのアンナを選んで、傷つくんじゃないかと思ったが……。

「嬉しい☆ タクトなら、そう言ってくれると思ってた☆ 実はね、アンナのドレスも作っていたから、なかなか會えなかったんだよ」

「……」

そういう事だったのか。

ったく、こいつはどこまでも可いな。

トランクの中が分かったところで、ミハイルはようやくホテルへる決心が著いたようだ。

もう一度、俺と手を繋ぐ。

「じゃあ、今度こそってもいいのか?」

「うん……だけど、その前に聞いてもいいかな」

潤んだ瞳で上目遣いをする。

エメラルドグリーンだけでも、反則レベルなのに。

こんなことされたら、間が発しそうだ。

「なんだ?」

「あの……“どっち”がいい?」

「え?」

「だからさ、今のオレとアンナ。どっちを選ぶの?」

頬を赤くして、こちらをじっと見つめる。

なんてらしいんだ。

つまり、彼が言いたいのは……男のミハイルか、のアンナ。

どっちを食べたいですか? ということだろう。

なんだ、この高揚は。

まるで仕事から家に帰ってきたら、する妻が「お風呂にしますか? お食事にしますか? それともワタシ……」的なシチュエーション。

しかし、そんなことを選ぶ必要はない。

意味を理解した、俺は即答する。

「両方、いただこう」

「え?」

大きな目を丸くする、ミハイル。

「だから、二人ともいただく。俺がミハイルとアンナをしているのは、事実だからな」

ミハイルは俺の答えを聞いて、一瞬、言葉に詰まっていたが……。

恥ずかしそうにこう言った。

「じゃ、じゃあ……どっちから?」

「もちろん、ミハイルからだ。俺が一番最初に可いと思ったのは、お前だからな」

俺がそう答えると、ミハイルは小さな聲で「バカ……」と呟く。

だが、まんざらでもないようで、をもじもじさせながら、俺の目をじっと見つめる。

「オレで良いんだ?」

「確かにアンナも好きだ。でも大事なのは、中であるミハイル、お前だ」

「うん☆」

俺の顔を見つめて、優しく微笑むミハイル。

右手を差し出し、何かを待っているようだ。

「行こ、タクト☆」

「ああ……そうだな」

彼の小さな手を摑むと、ラブホテルの口に立つ。

張しているせいか、手の中は汗でっている。

こんなベトベトの手じゃ、ミハイルが嫌がるだろうと思ったが。

ミハイルは俺の考えていることを、察しているようだ。

上目遣いで、こう囁く。

「大丈夫だよ☆ オレもすごく怖いもん、タクトと一緒☆」

「……ミハイル」

その一言で、火がついた。

「じゃあ、二人で同時にホテルへるか?」

「うん、いいよ☆」

まさか結婚して、初めての共同作業が、ラブホテルへの場とはな。

深呼吸した後、互いの手を強く握りしめ、片足を前に上げる。

するとセンサーに反応したようで、自ドアが開いた。

「「せーの!」」

    人が読んでいる<気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女裝するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!>
      クローズメッセージ
      つづく...
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください