《【書籍化】その亀、地上最強【コミカライズ】》

『はぁ、あっしも外に行きたいでやんすねぇ……』

とりあえずサンシタのご機嫌取りをする僕達だったが、サンシタは相変わらずし悲しそうだった。

セリエに行った時もそうだったが、どうやらサンシタは僕らがどこかに行く時はできる限りついてきたいみたいだ。

ある程度魔に慣れ親しんでいるアクープの街では、サンシタが外に出ようが何も言われることはない。

けれど魔なんて見たことないという人も多い王都でサンシタが街に出れば、間違いなくパニックが起こってしまうだろう。

……あれ、でもちょっと待って。

考えてみると王都にやってきた時って、そんなに皆には驚かれてなかったような……?

「アイビー、サンシタを連れていっても大丈夫だと思う?」

「みみぃ」

多分、みたいなイントネーションで言ってくるアイビー。

の方も確信はないみたいだ。

「まあダメだったらすぐ一緒に戻ってくればいいしね。よし、それなら一緒に行こっか、サンシタ」

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『やったでやんす!』

というわけで僕達はサンシタと一緒に、大通りへと向かうのだった――。

王都の通りは、とにかく広い。

基本的に大通りは馬車が左右に分かれて二臺通れるくらいのスペースはあるじになっている。

そのためサンシタがいても、特に問題はなさそうだ。

「うーん……問題なさそうかな?」

そして意外なことに、サンシタを連れて來ても僕が想定していたようなパニックは起きなかった。

皆サンシタのことを見てビクッとしたりはしているけれど、そのまま何事もなかったかのように視線を逸らされて、それでおしまい。

不思議なことだけど、どうやらそこまで怖がられてはいないようだ。

でも……ちらちらと視線はじる。

レイさんと一緒に特訓をしているうちに、僕だって強くなっている。

今では魔力を使って能力を強化するのもお手のだ。

というわけでしマナーは悪いけれど、魔力を使って、僕らの方を見ている人達の聞き耳を立てることにする。

『あれがグリフォンライダー……』

『なんだかかわいらしい見た目をしてるわね……』

『だまされちゃダメよ、あんなナリして魔を皆殺しにできちゃうくらい強いんだから……』

なるほど、サンシタが怖がられていない理由がわかった。

どうやら僕達の存在は既に、王都にいる人達に周知されているみたいだ。

エンドルド辺境伯は前に、グリフォンライダーは何十年だか何百年だか誕生していない英雄だと言っていた。

恐らく僕らがガラリアを始めとする港町を助けた話が、尾ひれがついて広まっているらしい。

まあでもこれは、アクープでも通ってきた道だ。

注目を浴びるのには慣れてるから、あまり気にせず王都観を楽しむことにしよう。

「ペットOKのカフェでも探そうか」

「みっ!」

『そうするでやんす!』

既に完全に日は暮れてしまっているので、今日は軽くブラついてから早めに屋敷に戻ることにしよう。

あまり土地勘のない場所をうろついてても碌なことにならないし、それにせっかくならしっかりと時間をかけて王都観もしたいしね。

この時間は皆が仕事を終える時間。

そのためお晝頃のピークタイムと比べると人の數はまばらになっているはずなんだけど……それでもすごい人の量だ。

馬車なんかまともに通れないくらいにたくさんの人でごった返している。

けれど僕らはするすると思ったところに進むことができる。

何せ一歩前に出るたびにざっと人の波が割れて、スペースが空いていくのだ。

怖がられているのは間違いないのでちょっと複雑な気持ちだけど、こんな時でもスムーズに進めるのは非常にありがたい。

なのであまり気にせず、お店のを始めることにした。

通りを歩いていると、左右の至る所に店が開かれている。

細長い麺のようなマークの看板が置かれた食事処には、夕飯時だからか大量の人が並んでいる。中からは威勢の良い聲が聞こえてきていて、活気がすごい。

ファンシーな柄の服が外からも見える服屋さんのり口には、出の高い綺麗なお姉さんが立っている。

そしてその向かいには同じような店が建ち並んでおり、そこにはかわいらしい顔のの姿がある。

向かい合わせに服屋が建っている景は、なくともアクープでは見たことがない。

あれってお客さんを食い合って、共倒れにならないんだろうか……?

王都にたくさんの人がいるからこそ、ああいうこともできるんだろうな。

通りには寶飾店もあったが、當然ながら警備は厳重そうだった。

面に商品は並んでおらず、屈強そうな黒服の男の人達がり口を固めている。

ジッと見ていると、向こうがこちらの視線に気付いた。

を変えたので思わず構えそうになっていると、聲をかけられる。

「もしかして、グリフォンライダーのブルーノさんですかっ!?」

「ええ、多分そうだと思います……?」

「俺、ファンなんです! 握手してください!」

「――ええっ!?」

目をつけられたのかと思ったら、まさかの僕のファンだった。

腕を前に出されたので、僕の方もスッと右腕を出す。

握手をわすと、剣を握っている人特有の手のひらのじられた。

避けられてばかりかと思っていたけれど、どうやら僕らのことを怖がる以外のを持って見てくれる人も案外いるみたいだ。

しだけ気分を軽くしながら、僕らはを続けるのだった――。

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