《【書籍化!】【最強ギフトで領地経営スローライフ】ハズレギフトと実家追放されましたが、『見るだけでどんな魔法でもコピー』できるので辺境開拓していたら…伝説の村が出來ていた~うちの村人、剣聖より強くね?~》最ギフ第108話 勇者を討ち取る
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”ガキン!”
僕と勇者ラインバートの剣が激突。い音が広場に響く。
「重い……!」
勇者ラインバートの剣の破壊力は、これまで剣で競った誰よりも高い。筋力もスピードも、”虹剣ドルマルク”の力で能力が上がっている僕より更に上だ。
僕と勇者ラインバートは何度も剣をぶつける。
「ロードベルグ流剣93式、”緋空一閃”!」
「勇者剣81式、”獅子吼雷斬”!」
僕の大技と、勇者ラインバートの雷を纏った一撃が激突。轟音が街に響く。
”ズザザ……!”
勇者の技の威力に押されて、僕は後ろに押し返される。
「どうしたどうした! その程度かよ! まだまだ行くぜ! 74式、”凍天氷翼斬”!」
勇者が今度は剣に冷気を纏わせて、真上から振り下ろしてくる。
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「12式、”流星斬”」
僕は橫薙ぎの剣で勇者の大技をけ流す。
「口ほどにもないな、メルキス! さっきから防戦一方じゃねぇか!」
勇者ラインバートが大技を連打して猛攻を仕掛けてくる。それを僕はひたすら避け、け流し続ける。
勇者ラインバートの剣技もギフトの力によるものだろう。大技を出す時には雷や氷の力を剣に纏わせ、通常攻撃とは桁違いの破壊力を発揮している。
だが、それだけだ。
僕は戦いの中で、勇者ラインバートの攻撃パターンも戦闘のクセも全て把握した。
「そろそろ反撃させてもらおう」
僕は勇者との間合いを詰める。
「自分から死にに來やがったか! おみ通りあの世に送ってやるよ! 81式、”旋風円月斬”!」
なぎ払う一撃を、僕は一歩下がって剣先をギリギリで回避。
「14式、”無影突”!」
返す僕の一撃が、勇者の鎧にを穿つ。
「ぐぅっ!」
き聲とともに勇者ラインバートが一歩下がる。
「なぜだ、なぜ當たらねぇ!」
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「勇者ラインバート。お前、まともに剣の練習をしたことないだろ」
「うぐっ」
勇者は直する。図星のようだ。
「確かにお前の方がパワーもスピードも上だ。だけど、所詮剣の素人。闇雲に剣を振り回して、隙があるとみればギフトの力で大技を繰り出すだけ。そんな剣が當たるわけないだろ」
「て、てめぇ……!」
勇者ラインバートの聲に怒気がこもる。
「せめて【勇者】のギフトを手にしてから剣の訓練をしていれば、もうし僕に攻撃は當たったはずだ」
「うるせえええぇ!」
頭にが上った勇者が、闇雲に攻撃を繰り出してくる。
その全てを、僕はギリギリでかわし、け流し、反撃を叩き込む。
「ロードベルグ流剣107式、”斷魔滅龍閃連斬”!」
「ぐあああああぁ!」
反撃の大技を食らった勇者ラインバートが吹き飛んで壁に叩きつけられる。鎧は、ボロボロになっていた。
しかし。
”シュウウウウゥ……”
淡いオレンジのを放ち、鎧が治っていく。
・ドラゴンの頭を召喚する力
・パワーとスピードの上昇
・圧倒的な破壊力を持つ剣技
・鎧の修復
これだけの力を持つ【勇者】のギフト、やはり規格外だ。
倒すには、鎧の修復速度を上回る攻撃力を短時間に叩き込むしかない。
「へへへ。見たか。勇者の力は攻めだけじゃねぇ。守りも鉄壁だ。ちょっと驚かされはしたが。俺に反撃したくらいでいい気になるんじゃねぇ! 力の差は歴然だ!」
勇者ラインバートが得意げに宣言する。鎧の傷はほぼ直りきっている。
「それに、俺にはとっておきがあるんだ。ギフト【スナッチ】発!」
「何!?」
僕の手にあった剣が、一瞬にして勇者の左手に移していた。
「今のは、【勇者】とは別の力……!?」
「その通り! 今のは俺本來のギフトだ。【勇者】は15歳で授かるギフトとは別に與えられる特別なギフトなのさ! 知らなかっただろう! これは、魔族共も知らない俺のとっておきだ!」
勇者ラインバートが、右手に自分の剣を。左手に僕の”虹剣ドルマルク”を持って距離を詰めてくる。
「俺の手には剣が2本。お前は丸腰。お前にはもう打つ手がない。これで終わり――」
「ロードベルグ流格闘4式、”烈昇腳”!
”ドン!”
油斷しきっていた勇者ラインバートの顎に、僕の回し蹴りがる。
僕がロードベルグ伯爵家で僕がにつけたのは剣だけではない。丸腰でも戦えるよう格闘もにつけている。
「ぐぅっ!!」
勇者ラインバートがよろける。
「くそ、まだ足掻くのか! この! 諦めが悪い奴め!」
勇者ラインバートが二本の剣を振り回すが、僕はそれを全て回避。頭に蹴りや掌底による攻撃を加えていく。
「くそったれ!」
勇者がふらつく。やはり頭への攻撃は、鎧があっても有効らしい。
「なんでだ! なんで當たらねぇんだよ!」
「當たるわけないだろう。二刀流は扱いが一刀流とは比べものにならないほど難しいんだ。初心者が剣を二本持ったって、何も怖くない」
「うるせえええぇ!」
二本の剣を振り上げて、ヤケになって突っ込んでくる勇者ラインバート。
剣を振り下ろす、その寸前。
「そこだ! ロードベルグ流格闘88式、”昇龍膝撃”!」
”ゴ ン ! !”
僕の飛び膝蹴りが勇者の顎に直撃した。
「そんな、蹴り、噓だろ……!」
ダメージで勇者ラインバートが両手の剣を落とす。
これは最後の好機だ!
僕が能力強化魔法”フォースブースト”を維持できるのは、あと10秒程度。なんとしても、ここで畳みかけて勝負を決める!
僕は足下に落ちている二本の剣を拾う。
「お前馬鹿か? さっき自分で、二刀流は扱いが難しいって言ってたじゃねぇか! 一本だけにしとけばいいのに、二本も拾いやがって!」
鎧の中で、勇者ラインバートは薄ら笑いを浮かべているのだろう。僕は笑い返す。
「僕は二刀流が使えるんだよ! 昔弟と訓練してたからな!」
守りを捨てた攻撃特化の戦。殘りない時間で勇者を倒すには、これしかない。
「ぐああああ!」
僕の振るう二刀が勇者の鎧を破壊していく。だがまだ、勇者を倒すには足りない。
――魔力が盡きるまで、殘り3秒。
「力を借りるぞ、カストル」
これは僕が使える技の中で、最も威力の高い技。
カストルと生み出した、本來ロードベルグ流には存在しないはずの型。
「零式、”雙極氷炎雙刃星煌斬”!」
一呼吸の間に17発の斬撃を繰り出す、とっておきの技だ。
「ぐあああああ!」
斬撃が、勇者の鎧を完全に破壊した。
勇者ラインバートが吹き飛び、地面に転がる。
「く、そ……!」
勇者のから、力が抜ける。完全に気を失ったようだ。
「今だ! 【勇者剝奪】発!」
僕は神様にもらった力を発する。勇者ラインバートのからの球が飛び出し、僕のの中に吸い寄せられていく。
「これが、【勇者】のギフト……!」
の側に、【勇者】の力が息づいているのをじる。僕では扱えないが、誰かに引き渡すことは出來そうだ。
尤も、僕の周りに適がある人はいないだろうからこちらは気にしなくていいだろう。勇者ラインバートはもう【勇者】の力を使えない。今はこちらの方が重要だ。
「これで決著だ!」
僕は大きく息を吐く。
振り返ると、ちょうど村のみんながオロチを倒してこちらへやってくるところだった。
「「「うおおおおお!! 領主様が勇者に勝ったぞ!!」」」
村の冒険者さん達が雄びを上げる。
「やったねメルキス! メルキスなら勇者にも勝てると思ってたよ!」
マリエルが駆け寄ってきて、僕に抱きつく。
「1対1で勇者を打ち倒すとは。お見事でした、主殿」
隣に、いつの間にかひざまずいた姿勢でカエデが現れていた。
「それでこそ我が弟子だ。汝であれば勇者に勝てると、我は見込んでおった」
大賢者エンピナ様が得意げな顔でうなずいている。
皆さん、満面の笑みで僕の勝利を祝福してくれる。
ただし、一人だけ。
「くっそー! 勇者はアタシが倒す予定だったのに、味しいとこ持ってかれちゃった~!」
カノンだけが悔しそうに頭を抱えていた。
勇者を倒すって、アレ本気で言っていたのか。
「こうなったらメルキス、次はアタシと勝負だ。勇者を倒したメルキスを倒せば、アタシが勇者より強いって証明できるらな!」
そういっていきなりカノンが拳を構えて襲いかかってくる。だが。
「ダメですよカノンちゃん! メルキス様は今戦いが終わったばっかりで疲れ切ってるんですからぁ! それに、仲間同士で戦うなんてダメですよぉ~!」
慌ててやって來たナスターシャが、後ろからカノンを羽い締めにする。
……前から思ってたけど、ナスターシャはカノンに対して結構遠慮しないというか、容赦が無いな。
「分かった! ギブギブ! メルキスに喧嘩売るのは止めるから、放してくれナスターシャ姉ちゃん!」
カノンが悲鳴の様な聲で訴えてナスターシャに解放してもらう。
「お疲れ様です皆さん。皆さんが街の人々を守ってくれたから、勇者との戦いに専念できました。勝てたのは、皆さんのおかげです」
「へっへっへ。領主サマに褒められちまった。日頃から訓練してた甲斐があったぜ」
タイムロットさんが、嬉しそうに笑う。後ろの冒険者さん達も同じ表をしていた。
……こうして、勇者との戦いは幕を下ろしたのだった。
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