《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》182.悪魔の力

転生勇者ユリウスの嫁、ダンタリオンは、義弟を攻撃してきた邪霊・九尾と相対していた。

九尾は巨大な狐へと変化してる。

一方、ダンタリオンは人間姿のまま構えを取っていた。

(そういえば、ダンタリオンが人間の姿で戦っているところ、初めて見るな)

ガイアスは離れた場所で義姉を見ながら思う。

とは対校戦の際、クモ型悪魔になって戦っていた。

だがダンタリオンは一度死に、人間へと転生してる。

悪魔から人間への変化により、弱化は避けられないだろう。

(大丈夫なのか?)

『こないのか? ではこちらからいくのじゃ!』

ぐぉお! と九尾がダンタリオンに高速で襲い掛かる。

突進攻撃を、ひらりとダンタリオンはかわしてみせた。

どがぁん! という大きな音とともに地面に大があく。

「幻で大きく見せてるのではないのか!?」

『幻なんてちんけなものじゃあない! わらわの能力は千変萬化! 自他の姿を自在に変えることができるのじゃ!』

自他。

つまり、相手も姿を変えられるということ。

『もっとも、他者を変化させるためには、れる必要があるが……。あんなザコにその能力を使うまでもないのじゃ!』

九尾は飛び上がって、その尾を勢いよく、地面にたたきつける。

ドゴォオオオオオオオン!

砕け散った石が広範囲に飛び散り、弾丸のごときスピードで、ダンタリオンに襲い掛かる。

よける暇はない。

『終わりじゃ!』

だがそのときだった。

ぴたっ!

『んな!? なんじゃ、石が空中で靜止しておるじゃと!?』

無數の巖が、まるで凍り付いたかのようにその場で固まっているのだ。

時間停止かと思ったがガイアスはける。

別の能力をダンタリオンが使ったのだろうと思えた。

しかしダンタリオンはその場からいていない。何かしてる様子もない。

『く! こうなったら直接叩く……!』

九尾がをまるめ、勢いよく跳躍する。

ばうん!

見えない何かにぶつかると、九尾は思い切り、地面にたたきつけられたのだ。

『ぐああ! な、なんじゃ!? 何が起きてるのじゃ!?』

一方、這いつくばる九尾を、ダンタリオンは上空から見下ろしていた。

は空中にたっているのである。

『空中浮揚か?』

「わたくしは魔法を使っておりません」

『ではなんじゃ!? なにをしてる!?』

する九尾をよそに、ガイアスには見えていた。

「糸だ……」

ダンタリオンの両手の指から、無數の、蜘蛛の糸がびているのである。

それが周囲に巣を作っていた。

どうやらダンタリオンは、悪魔時代の能力を引き継いでいるようだった。

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