《兄と妹とVRMMOゲームと》第四百四十五話 異なる正義を盾に⑧

掲示板の報を頼りに訪れた『レギオン』と『カーラ』の者達は周辺に視線を張り巡らせる。

「『シャングリ・ラの鍾』付近で椎音梨らしき人を目撃した報。本當に信用できるのか?」

「分からん。だがーー」

ただの作り話と斷じるには気になる噂である。

それに他に有力な報がない今、調べる価値は充分にあった。

はその様子を花音とともに窺いながら、戦闘の準備を整える。

まだ、こちらには気づいていないみたいだ。

梨だとバレないように、花音とリノアの距離を一定に保つ必要があるな。

戦いの熱に侵されながらも、は『レギオン』と『カーラ』の者達との距離を図っていた。

くん……」

「花音、大丈夫だからな」

「花音、大丈夫だから」

「うん」

改めて、これからのことを確認するとリノアの言葉に、花音は勇ましく點頭してみせる。

「シルフィの力で姿を消すこともできるけれど、その分、魔力消耗は激しい。『サンクチュアリの天空牢』の探索に備えて、今は出來る限り、魔力消耗を抑えたいからな」

『レギオン』と『カーラ』の者達の姿を視野に納めた徹の顔は、不安をより浮き彫りにしている。

徹が契約している霊『シルフィ』は音の遮斷以外にも、その気になれば気配遮斷、魔力探知不可まで行うことができる。

しかし、その分、魔力消耗は激しい。

「この場所に訪れたのは紘が告げていたとおり、六人か。紘はこの展開を予測していたのかもな」

紘から告げられた言葉を思い返して、徹は考え込む仕草をした。

「徹様。各個撃破はお任せください」

「まずは敵陣営に紛れ込まないとな」

プラネットの思慮に、徹は複雑そうな表で視線を落とすと、考するように口を閉じる。

そして、花音はの合図をけて、リノアとともに駆け出していく。

「……っ」

「あれは……!」

梨に扮した花音がリノアとともに駆けていく姿が、『レギオン』と『カーラ』の者達の視界を橫切る。

「本當にいたぞ」

「絶対に逃がすな!」

『レギオン』と『カーラ』の者達による、隠しようもない戦意と敵意。

彼らは散開し、梨に扮した花音とリノアを行き止まりまで追い詰めていく。

的な狀況。錯する視線。

「……お兄ちゃん、これからどうしたらーー」

「……お兄ちゃん、これからどうしたらーー」

予想外の出來事を前にして、花音とリノアが疑問を口にしようとした瞬間ーー

「リノアーーーーっ!」

「なっ!」

響き渡ったその聲に、『レギオン』と『カーラ』の者達は大きく目を見開いた。

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