《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》リッド達の攻防
「皆、四人一組になって仕掛けるんだ。クッキーは僕、ディアナ、カペラの組にれる。後は、オヴェリア達とクロス達で組むんだ」
呼びかけてすぐに「畏まりました」、「へへ、合點承知!」、「承知しました」と心地よい返事が聞こえ、先陣を切ったクッキーを追うように皆は獣化してき出す。
オヴェリア、ミア、シェリル、スキャラの組。
クロス、カルア、トルーバ、ゲディングの組。
僕、クッキー、カペラ、ディアナの組……以上の三組で奴を、エルバを倒す。
正面を見れば、エルバは「ほう……?」と不敵に口元を歪めて戦斧を地面に突き刺した。
「バルディア家では面白い魔を飼っているな。俺のペットにも一匹しいぐらいだ」
「ガァアアアアア!」
咆吼を上げ、巨大化したクッキーが前足の爪をわにして叩き潰すように繰り出すと、エルバは真っ正面からけ止めた。
「しかし……この程度では『番犬』にもならんなぁ」
「……⁉」
両方の前足を押さえられたクッキーは、大きく開けて口の中に真っ暗な球を生み出し「ガァアアア」と再び咆吼する。
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次の瞬間、エルバとクッキーが居た場所で大発が起きて音と煙が巻き起こった。
「クッキー⁉」
彼があんな『魔法』を使えるなんて知らなかった。
足を止めかけるが、すぐにハッとする。エルバの気配は消えていない。
「このまま仕掛けて畳みかけるんだ。奴の気配は消えてない」
皆に聲を掛けたその時、煙の中で影がゆらめき、見えた景に目を瞬いた。
エルバは無傷であり、クッキーの顔を片手で鷲づかみにして持ち上げている。
「はは、躾がなっておらんな。魔が如きが……人様に噛みついてくんじゃねぇよ」
「ガァアア⁉」
クッキーは逃れようと、必死に前足の爪で切り裂こうとするがエルバは傷一つ負っていない。
それどころか、奴はクッキーの足掻く景を見て楽しそうに笑っている。
「リッド様! まず、あたし達が仕掛けます。いくぞ、お前ら」
「俺に命令すんな。オヴェリア!」
「貴達! こんな時まで喧嘩しないの」
「あはは。エルバ……楽しそうな相手じゃないか」
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「な……⁉」
制止する間もなくオヴェリアが跳躍すると、ミア、シェリル、スキャラが続いていく。
「く……⁉ 僕達は彼達のきで解放されるクッキーを助ける。クロス達は彼達の援護と波狀攻撃を仕掛けるんだ」
指示を出して正面を見やれば、オヴェリア達にエルバは視線を変えていた。
「ふふ。返してほしいなら……返してやるよ」
奴は巨大化したクッキーを、向かっていく彼達へ暴に投げ捨てた。
彼達が慌てて回避行を取って陣形が崩れる。
エルバはその隙を見逃さず、瞬時にオヴェリアの正面に間合いを詰めた。
「な、て、てめぇ⁉」
「さっきのお返しだ。『蹴り方』を教えてやろう」
奴は不敵に笑って「こうするんだよ」と邪魔な小石を思いっきり蹴飛ばすかのように、足を振り抜いた。
オヴェリアは咄嗟に腕を差して防態勢を取ったが、軽々と吹き飛ばされる、
「ぐぁああああ⁉」
「オヴェリア!」
すかさずシェリルとスキャラが彼をけ止めると、エルバの背後に黒い影が現れる……ミアだ。
彼は渾の力を込めて「ここだぁ!」と両腕で爪撃を繰り出すが、「な……⁉」と目を丸くする。
エルバは涼しい顔であり、切り裂いたはずの背中には傷一つない。
「なんだ、今のは? 折角、俺様が紳士的に背中をみせてやったのにな。期待外れもいいところだ」
「く……⁉」
ミアが悔しそうに口を結んだその時、エルバが手を拳に変えて勢いよく振り下ろす。
咄嗟に彼は腕を差して防態勢を取るが、奴は彼の顔の前で拳を止めた。
「……ん?」
ミアが防を緩めたその時、鈍い衝撃音が辺りに鳴り響く。
何事かと見やれば、ミアが額からを出して、オヴェリア達の所まで吹き飛んでいた。
「ミア⁉」
シェリルとスキャラは心配そうに彼を抱き起こす。
でも、ミアは気絶しているらしく、白目を剝いて返事がない。
エルバは大聲で笑い始め、彼達を指差した。
「くっくく。安心しろ。ただの『デコピン』だ。この程度で、『誇り』だの『死んでも良い』だのほざくとはな。面白すぎるぞ。いっそ騎士ではなく、蕓人にでもなったらどうだ? ふふふ、ふはははは……」
奴の笑い聲は辺りを囲む狐人族の戦士達にも伝染し、周辺から嘲笑が巻き起こる。
でもその時、「大地破砕拳!」と二人の聲が轟き、二つの大きい魔力弾が大地を走り、エルバに直撃して轟音と激しい土煙が巻き起こる。
「シェリル、スキャラ。お前達はオヴェリアとミアを連れて引くんだ。態勢を立て直せ」
「……ここは、俺達が引きける」
「すまない。カルア、ゲディング!」
「畜生! 出番のないまま後退かよ」
二人が引き下がって間もなく、エルバが土煙の中から姿を現した。
「いい不意打ちだったぞ。だが、威力がこれではな。次は、俺の魔法を見せてやろう」
エルバが右手を掲げて『黒煙』を生み出したその時、奴を中心に小さな黒い影が生まれ、どんどん大きくなっていく。
「……なんだ?」
エルバが眉間に皺を寄せて空を見上げると、上空には巨石を掲げたトルーバの姿があった。
彼は『土の屬魔法』が使えるから、地上で巨石を生してから高く跳躍したのだろう。
「これでも……くらぇえええ!」
トルーバは、巨石でエルバを叩き潰すように空から落ちてくる。
見上げていた時はわからなかったけど、巨石はエルバの大きさを優に超えている。
彼等の存在に気付くのが遅れた奴は、「ぬぅ⁉」となすすべなく巨石をけ止め、辺りに轟音が鳴り、土煙が再び巻き上がる。
「ふぅ……二人のおかげで上手くいきましたよ」
トルーバがカルアとゲディングの元に跳躍して戻ってきた。
「いや、お前の作戦が良かったんだ」
「……あぁ。後は、奴に損傷を與えられたかどうかだな」
三人が警戒してエルバが居た場所を睨むと、巨石が突然に発して衝撃波が巻き起こる。
そして、奴が首を鳴らしながら煙の中から姿を現した。
「今のは、良かったぞ。傷は負わんが、衝撃はあるんでな。さぁ、次は何をしてくれるんだ」
「さぁ、何だろうね?」
トルーバが肩を竦めると同時に、エルバが何かの気配を察知したらしくハッとして後ろに振り返る。
そこには『屬強化・烈火』を発し、から炎のような魔力を揺らめかせたクロスが鬼のような形相で間近に迫っていた。
「己の力に溺れ過ぎだ」
「ぬぅ……⁉」
鬼気迫る彼の様子に嫌なものをじたようで、エルバがこの戦いで初めて避ける作を行う。
だが、クロスの振るった剣の切っ先は掠めていたらしく、奴の頬からが垂れた。
「おぉ⁉」
驚嘆とも取れる聲が狐人族達から発せられる中、クロスは剣技を次々と繰り出し、エルバは戦斧でその剣技をけ続けている。
「ははは! 面白い。俺に傷を付けた奴は久しぶりだぞ。確か、貴様の名は『クロス』と言ったな。覚えておこう」
「……覚えなくていい。どうせ、お前はここで終わりだからな」
「なに?」と首を捻ったその時、エルバのきが鈍る。
いや、『制限された』と言ったほうが正しい。
し離れた場所で、トルーバとカルアが『樹の屬魔法』を発。
エルバの足を蔦のようなもので拘束していたのだ。
「今です。副団長」
「二人とも、良くやった」
クロスはきの鈍ったエルバに、鋭く剣を振るった。
でも、奴はじず口元を歪める。
「力に溺れ過ぎだ? 違うな。俺は、ただ遊んでいただけさ」
クロスの振るった鋭い剣は、エルバの手に無傷でけ止められてた。
「な……⁉」
彼は目を瞬くが、エルバは首を橫に振る。
「驚くことはない。『金剛』に使う魔力の出力をしばかり上げたに過ぎん。お前も、まだまだこの程度ではないのだろう? さぁ、もうし楽しませてくれ」
「良いだろう。だが、次にお前を楽しませるのは俺じゃない」
クロスは目を細めて微笑むと、エルバの手から剣を素早く抜いて飛び退いた。
これで、線上に味方はいない。
僕は皆が奴を相手にしていた時間、ずっと魔力を溜めて魔法を圧していたんだ。
奴を倒すために。
「これならどうだ……螺旋槍・烈火」
右の掌を空に掲げた瞬間、烈火の如く燃えさかる炎に覆われた巨大な『螺旋槍』が晴天の大空で生されていく。
地上だと自や同士討ちを防ぐため、発できる螺旋槍の大きさには限界がある。
なら、制限のない空に生すればいい。
魔力量と圧する時間さえあれば、威力は空だけに青天井だ。
「貫けぇえええ!」
空に生された巨大な螺旋槍は、僕の言葉に従い、エルバに向かって落ちるように解き放たれた。
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