宇宙での戦闘が開始され、すでに薄暗くなりつつある地上からも流れ星としてそれが観測できる中……帝都でも戦いが再開された。

口火を切ったのは七星連合軍だった。

彼らは休戦前に得た報から異世界派遣軍の防陣地をいくつか割り出していた。

そのうち最も頑強でカルナーク、火星両軍にとって脅威となる仮稱３－１Ｂに対してベルフ族のゴッジ將軍に協力を仰ぎ、一撃を加えたのだ。

彼はアウリンを上回る巨軀をゆっくりと前傾姿勢にあらため、口から垂れ下がるような獨特な牙を解放、口腔にある明なレンズの様な部位をにした。

先ごろジーク大佐と語らった時の笑顔ではない。

かつてハイタが見せた過去の映像同様の、古代文明の裝甲兵をも一撃で融解させる強力無比な生レーザー砲だ。

標的の陣地を中心に帝都中心部を薙ぐように照されたこの一撃は、異世界派遣軍の貴重な資集積所やカルナーク軍が補足した數か所の拠點ごと３－１Ｂにある地中に車を埋めた５０式歩兵戦闘車を中心とした重防陣地を溶かしつくした。

照された後には炭化したセラミックと解けた金屬……そして有機素材が燃えた後の獨特の匂いだけが殘った。

「……うむ。さあ行くがよい友よ」

ゴッジ將軍が膝を付きつつ流暢な英語で軍師長に告げた。

小さく頷いた軍師長は右手を斜め上に上げ、ぶ。

「総員前へー！　代表集中(ヤー・ラシュ)！！！」

「「「「「　代表集中(ヤー・ラシュ)！！！」」」」」

「俺たちも行くぞ！　イヤイヤハスター！！！」

「「「「「イヤイヤハスター！！！」」」」」

軍師長のびと共に中銃を抱えたカルナーク軍の兵士とアイオイ人達、そして自らが信奉する神の名をんだ火人連のサイボーグ達が駆け出していく。

臨時に組まれたサリュガートと呼ばれる大ぶりな斧を裝備したアイオイ人を一個分隊のカルナーク軍兵士と二人の火星陸軍サイボーグが支援する特編小隊と呼ばれる編だ。

この編は猛威を振るった。

異世界派遣軍は引き続き頑強に構築した陣地に籠り、撃度と火力を活かした戦闘を行おうとした。

これは休戦前は絶大な効果を発揮し、數多のカルナーク人とサイボーグの命を刈り取った。

しかし今度はこれがまるで機能しなかった。

サイボーグと歩兵に護衛されたアイオイ人によって陣地の場所やきを完全に把握されたサイボーグ達は撃度も火力も活かすことなく郊外に布陣したアウリン１(アイン)とニールストライフルを構えたアイオイ人狙撃部隊による支援攻撃によって陣地を追われた。

そうして別の陣地に、あるいは敵に接敵しようとしたアンドロイド達は、今度はアイオイ人に導されたサイボーグと歩兵による撃に曝され、みるみるうちに數を減らしていった。

數のアンドロイド達が敵の要であるアイオイ人を倒そうと攻撃を仕掛けたが、それらはサリュガートを構えたアイオイ人によって両斷され散っていった。

戦からほんの十數分で七星連合軍先鋒はかつて國葬會場だった中央広場に到達。

帝城を中心とした最終防衛圏と分斷されることを恐れた異世界派遣軍はニールストライフルと荷電粒子砲に背中から撃たれつつも最終防衛圏へと撤退を余儀なくされた。

そうして、帝都での戦闘は最終局面へと移る。

最終防衛圏には王道作戦で投された特務課と呼ばれるアンドロイドの鋭部隊が布陣しているとの報があり、七星連合軍はここまでＲＯＮＩＮＮとンヒュギの生機械兵、そして騎士長ジロード・ルモンを溫存していたのだ。

未だに何のきも無い異世界派遣軍側を警戒して最終防衛圏際で足を止めた七星連合軍は、自分たちも鋭の到著を待ち始めた。

この奇妙な靜寂の最中、帝城にある塔の一つから巨大な航空機が飛び立った。

カタクラフト。

異世界派遣軍が誇る強力な輸送攻撃機だ。

すわ異世界派遣軍指揮の出かと七星連合軍はめき立ち、予定を覆して絶対防衛圏へとなだれ込む。

しかし、そんな彼らの予想とは異なりカタクラフトはゆったりと帝城上空を旋回し始めた。

カタクラフトをるＳＡのアウンと搭乗者たちにはまだやる事が殘されていたからだ。

なだれ込んだ七星連合軍が特務課と殘存部隊の大歓迎をけ先鋒壊滅の憂き目を見る中、旋回していたカタクラフトはゆっくりと帝城にある城でもっとも重要な場所へと近づいていった。

彼らの目的はたった一つ。

休戦終了から今までジンライ・ハナコと戦闘を続ける一木弘和の強(・)制(・)救(・)出(・)である。

※

一木弘和とジンライ・ハナコの戦闘は一木救出を試みるグーシュ達、そして當人たちの想定を超えて長引いていた。

グーシュ達は當初即座に飛び立ち一木救出を試みるつもりだったが、七星連合軍の攻勢が予想以上に激しいことから戦闘が小康狀態になるのを待たざるを得なかった。

一木の相手がジンライ・ハナコであることから「これは終わった」という絶の空気が彼らを包んだが、最も能の高いセンサーを搭載したカタクラフトのアウンから驚きの報告が上がったのだ。

曰く「未だに戦闘音継続」である。

ジーク大佐を一瞬で倒し、アンドロイド部隊を一騎當千が如く躙するＲＯＮＩＮＮのサイボーグ相手になぜが機械なだけの一般人が相手できているのかと、狀況に安堵しつつもグーシュ達は訝しんだ。

これはひとえにハイタのおであった。

ジンライ・ハナコの消耗合は想像を超えていたのだ。

次回更新は明日の予定です。