《【書籍化決定】公衆の面前で婚約破棄された、無想な行き遅れお局令嬢は、実務能力を買われて冷徹宰相様のお飾り妻になります。~契約結婚に不満はございません。~》では、提案を。
そうして大広場の遊歩道に著くと、アレリラは先に降りたイースティリア様の手を取って馬車から降りた。
「しいですね」
「ああ」
通行人が行きい、広場の中央噴水を囲うように作られた花壇の縁やベンチに、人同士や老夫婦が座っている。
赤煉瓦で作られた広場の地面に直接布を敷いて、裝飾品を売っている者、靴磨きの年、一角に人を集めて大道蕓を披しているピエロ。
噴水の奧にはおそらく野外ステージがあるのだろう、複數の楽による軽快な音楽が流れており、その音楽に合わせて舞う踴り子が複數人、クルクルと噴水の周りから奧に人を導するようにステップを踏んで移している。
「今日は、何かのお祭りなのでしょうか?」
のも、髪のも、服裝も、出國も。
様々に違う人々が、そこには一堂に會しているかのような景である。
アレリラの疑問に、イースティリア様は首を橫に振った。
「おそらくこれが日常なのだろう。易地ということは、つまり観地足り得る土地であるということだからな。我々もそうした旅行者の一員だ」
Advertisement
「そうですね」
しかし、目新しく新鮮であることに変わりはない。
頷きながら周りを見回したアレリラは、ふともう一つ、見慣れないものに目を留めた。
「あれは何でしょう?」
り口近くに建てられた、巨大な板が2枚。
一枚は何かがを使って描かれており、その上に紙をったもの。
もう一つは板にマス目が作られており、やはりその中に何枚もの紙がられていた。
紙自は安価で作れる質の悪いもの。
それ自は近年現れた新聞の文化と同様、紙が安価に作れるようになってきたから普及してきた伝達方法……いわゆる『ビラ』というものだ。
そして板の近くには、制服のようなものをにつけた男が複數人立っている。
アレリラの問いかけにチラリと目を向けたイースティリア様は、淡々と答えを口になさった。
「地図掲示板、そして予定表というものだな」
「街中に、ですか?」
アレリラは、軽く目を見開いた。
掲示板、というもの自は分かる。
宮廷でも連絡や出勤者を管理するそれらが至る所にあり、見に行くのは書であるアレリラの日課だからだ。
Advertisement
「大広場にあるのは、どのような用途なのでしょう」
「そうだな、劇場案のようなものと思えば良い。この大広場自が、もっと用途は多岐に渡るだろうが無料の劇場のようなものなのだろう」
なるほど、何を掲示しているのかは遠目には見えないけれど、地図、なのであれば、あの板そのものがこの大広場のどこに何があるかを示しているのだろう。
あいにく、人がそれなりに間近にいる為、護衛の人數がそれなりに周りにいるアレリラ達が足を運んでしまうと、々しいので邪魔になってしまうだろう。
現狀、り口からし外れた辺りに立っているだけでも、々目立っている。
もしかしたら、貴族がこのような場に訪れること自が珍しいのだろうか。
最近はライオネルでも街歩きを楽しむ若い貴族は多い、と聞いているのだけれど……と考えたところで、アレリラは気づいた。
ーーー目立っているのは、イースですね。
慣れてきているせいか、忘れてしまうことも多いけれど、イースティリア様は並外れた貌の持ち主なのである。
こちらに視線を向けている者の多くは、若いだった。
疑問が解けたので、アレリラは改めて質問する。
「地図と予定表は分かりましたが、ではられている紙は、現在この広場での催しの種類なのでしょうか」
「そうだろうな」
「……この場にいる人々は、知的階級の方なのですか?」
文字を書いた紙をる、というのはそういうことだ。
絵が描かれているものもあるけれど、多くは文字のみなのである。
この場にはごく普通の平民に見える人々が多いけれど、彼らも文字を読めるのだろうか。
もしそうなのであれば、なくともこのオルブラン領に関しては帝都並みかそれ以上の教育制が整っていることになる。
文字が平民にも普及するよう各國が努め始めているとはいえ、都市部の平民であっても、多くはその必要を理解していない。
新聞にしてもビラにしても、貴族學校に通うような貴族以外に、法や行政に攜わる者、あるいは納稅を自ら行う必要がある大商人、特殊なところであれば騎士団など……教養を必要とする中流階級以上に重寶されているだけだ。
「その為の訳者(やくしゃ)だろう。もし仮に文字を読めたとしても、自國のものだけである人が多いだろうしな」
「それは確かに、そうですね」
他國の來賓を招いた時、と考えれば、通訳が必要なのは當然の話だ。
そもそもライオネルと帝國では、使われている言葉も違うけれど文字も違う。
帝國公用語は中央大陸北部から中央部に住む人々が使うもので、大陸中央語(ミ・バールア)と呼ばれているものだ。
言葉も文字もどちらかというと北の國バーランドと近く、北圏文字(ヴァイク)圏(けん)に屬している。
対して、南の國であるライオネル、及び南西の國ノーブレン大國國で使われている言葉は大陸南部語(シ・トライヴ)と呼ばれていて、文字も河象文字《アインダ》圏に屬していた。
アレリラやイースティリア様は複數言語を習得しており、周辺國の書を原語で読んだり會話を行うことに特に難はないけれど、かなり優秀な人でも語學系が苦手だと苦労する部分だ。
ボンボリーノなど、貴族學校時代から諦めていて、おそらく今も挨拶くらいしか出來ない。
つまるところ、『文字が読める』がどの程度の領域を指すかは置いておいて、オルブランでは『読めない』前提で人を配置しているのである。
「理由は理解出來ましたが、やはり街中にああした設備を作っているのはやはり珍しいです。場料も取っていないということは、オルブラン侯爵家雇いなのでは?」
文字のみではなく、異國語しか話せない者もこの場に訪れることが多いだろう。
あの制服の訳者が多言語に対応出來る人材であるのなら、確実にエリートであり、おそらくは貴族出者である。
適材適所といえばそうではあるけれど、優秀な人材をそうした人材の使い方をすること自が、アレリラには興味深かった。
一見、何の得もない配置に思えるからだ。
よく考えたら、外貨を落としてくれる人々に親切にすることで利回りを良くする為、と理解出來るけれど。
するとイースティリア様は、薄く笑って答えた。
「そう、珍しいが、合理だ。道の整備のように、一面において劣るように見えても、こうした人材運用の面では優れている部分もある。その地域や産業において必要であればさしめる故に、お互いにそうした良いところを學び合うのだろう?」
「仰る通りですね。イースであれば、どのようなことにこの學びを応用なさいますか?」
アレリラも小さく笑みを返すと、イースティリア様は面白そうに片眉を上げて顎を指先で挾んだ。
「そうだな。……発布人や伝令の手間を減らす、というような方向はどうだろう。帝都では文字を読める者が多いからな」
「労力の削減ですか。ではわたくしは、雇用創出を考えましょう」
「ほう?」
「今、路上孤児が旅人に対して各々、小さな対価を貰って人を案していることが帝都ではトラブルの原因になることが多発しておりますね」
アレリラの言葉に、イースティリア様は即座に意図を理解されてようだった。
が、問いを返してくる。
「報は把握している。それが、あの掲示板や訳者とどう繋がる?」
「その一部、たとえば商売を行うもの、嘆願に來た者などが目指す場所は決まっていますね。宿や役所、そうした場所への案も孤児らが行っていることが多いので、り口付近に案所を作るのは如何でしょう」
これが飲食の客引きなどであれば、民間の範囲の問題。
けれど、そうした孤児らの中には質のよろしくない筋の人々に利用されたりして、困っている者をさらに困らせるような行為を行う者がいるのだ。
國営において、そうした危険を排除した案所や案板を作るのは、有益なこと。
そう提案するアレリラに、イースティリア様は小さく首を傾げる。
「それは、どう雇用を創出することに繋がる?」
「道や帝都に詳しいのですから、孤児らをそのまま國で雇いれて住む場所を與えれば、福祉と問題の解決の糸口となりましょう」
「有益な意見だ。帰ったら詰めると良い」
満足そうに頷くイースティリア様に、アレリラは頷いた。
「ありがとうございます」
いつもお読みいただきありがとうございます!
お局令嬢と朱夏の季節、小説1~3巻及びコミカライズ1巻&web連載へのリンクを目次、各話下部に追加しました。
↓この下です
書籍版もよろしくお願い致しますー♪♪
【書籍化】誰にも愛されないので床を磨いていたらそこが聖域化した令嬢の話【コミカライズ】
両親の愛も、侯爵家の娘としての立場も、神から與えられるスキルも、何も與えられなかったステラ。 ただひとつ、婚約者の存在を心の支えにして耐えていたけれど、ある日全てを持っている“準聖女”の妹に婚約者の心まで持っていかれてしまった。 私の存在は、誰も幸せにしない。 そう思って駆け込んだ修道院で掃除の楽しさに目覚め、埃を落とし、壁や床を磨いたりしていたらいつの間にか“浄化”のスキルを身に付けていた。
8 69ひねくれ領主の幸福譚 性格が悪くても辺境開拓できますうぅ!【書籍化】
【書籍第2巻が2022年8月25日にオーバーラップノベルス様より発売予定です!】 ノエイン・アールクヴィストは性格がひねくれている。 大貴族の妾の子として生まれ、成人するとともに辺境の領地と底辺爵位を押しつけられて実家との縁を切られた彼は考えた。 あの親のように卑劣で空虛な人間にはなりたくないと。 たくさんの愛に包まれた幸福な人生を送りたいと。 そのためにノエインは決意した。誰もが褒め稱える理想的な領主貴族になろうと。 領民から愛されるために、領民を愛し慈しもう。 隣人領主たちと友好を結び、共存共栄を目指し、自身の幸福のために利用しよう。 これは少し歪んだ気質を持つ青年が、自分なりに幸福になろうと人生を進む物語。 ※カクヨム様にも掲載させていただいています
8 135世界最強が転生時にさらに強くなったそうです
世界最強と言われた男 鳴神 真 は急な落雷で死んでしまった。だが、真は女神ラフィエルに世界最強の強さを買われ異世界転生という第二の人生を真に與えた。この話は、もともと世界最強の強さを持っていた男が転生時にさらなるチート能力をもらい異世界で自重もせず暴れまくる話です。今回が初めてなので楽しんでもらえるか分かりませんが読んでみてください。 Twitterのアカウントを書いておくので是非登録してください。 @naer_doragon 「クラス転移で俺だけずば抜けチート!?」も連載しています。よければそちらも読んでみてください。
8 131「お前ごときが魔王に勝てると思うな」とガチ勢に勇者パーティを追放されたので、王都で気ままに暮らしたい
少女フラムは、神の予言により、魔王討伐の旅の一員として選ばれることとなった。 全員が一流の力を持つ勇者一行。しかし、なぜかフラムだけは戦う力を持たず、ステータスも全て0。 肩身の狹い思いをしながら、それでも彼女は勇者たちの役に立とうと努力を続ける。 だがある日、パーティのうちの1人から騙され「もうお前は必要ない」と奴隷商人に売り飛ばされてしまう。 奴隷として劣悪な環境の中で生きることを強いられたフラム。 しかし彼女は、そこで”呪いの剣”と出會い、最弱の能力”反転”の真価を知る。 戦う力を得た彼女は、正直もう魔王とかどうでもいいので、出會った奴隷の少女と共に冒険者として平穏に暮らすことを決めるのだった。 ――これは一人の少女が、平穏な日常を取り戻すためにどん底から這い上がってゆく、戦いの物語である。 日間最高1位、週間最高1位、月間最高2位にランクインしました。みなさんの応援のおかげです、ありがとうございます! GCノベルズ様から書籍化決定しました! 発売日はまだ未定です。 カクヨムとマルチ投稿してます。
8 54異世界で美少女吸血鬼になったので”魅了”で女の子を墮とし、國を滅ぼします ~洗脳と吸血に変えられていく乙女たち~
”魅了”、それは相手に魔力を流し込み、強制的に虜にする力。 酷いいじめを受けていた女子高校生の千草は、地獄のような世界に別れを告げるため、衝動的に自殺した。しかし瀕死の吸血鬼と出會い、命を分け合うことで生き延びる。人外となった千草は、吸血鬼の力を使って出會った少女たちを魅了し、虜にし、血を吸うことで同じ半吸血鬼に変えていく。 何も持たず、全てを奪われてきた少女は、吸血鬼として異世界に生まれ変わり、ただ欲望のままに王國の全てを手に入れていくのだった。 異世界を舞臺にした、吸血少女によるエロティックゴアファンタジー。 ※出て來る男キャラはほぼ全員が凄慘に死にます、女キャラはほぼ全員が墮ちます
8 125異世界に食事の文化が無かったので料理を作って成り上がる
趣味が料理の23才坂井明弘。彼の家の玄関が、ある日突然異世界へと繋がった。 その世界はまさかの食事そのものの文化が存在せず、三食タブレットと呼ばれる錠剤を食べて生きているというあまりにも無茶苦茶な世界だった。 そんな世界で出會った戦闘力最強の女の子、リーナを弟子に向かえながら、リーナと共に異世界人に料理を振舞いながら成り上がっていく。 異世界料理系です。普通にご飯作ってるだけで成り上がっていきます。 ほのぼのストレスフリーです。
8 74