《【書籍化決定】公衆の面前で婚約破棄された、無想な行き遅れお局令嬢は、実務能力を買われて冷徹宰相様のお飾り妻になります。~契約結婚に不満はございません。~》赤いツバキの花言葉は『控えめな素晴らしさ』です。
そうして大広場を見回って異國の珍しさを十分に堪能した後。
オルブラン侯爵家の客間に戻ったアレリラは、イースティリア様と共に買い上げた中に模様を刻み、が封じられた石を広げていた。
「どれも、素晴らしいものですね……」
見れば見るほど不思議なもので、何よりしい。
「どれが一番好みだ?」
「これ、でしょうか」
と、アレリラが指差したのは髪飾りだった。
本當に小さな石の中に、赤いでツバキ柄の模様が刻まれているものだ。
するとイースティリア様は、不思議なことを仰った。
「では、明日サーシェス薔薇園に赴く際ににつけていくと良い」
「え? ……ですが」
明らかに石の値段が持ってきている服とは釣り合わない。
オルブラン侯爵家の子息と會うのであれば、それを見られたら失禮に當たる、あるいは侮られるのではないだろうか。
そうアレリラが考えていると、イースティリア様はそれを察したように薄く微笑む。
「アル」
「はい」
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「私は以前、婚姻の前後で君に贈りをしたかと思う」
「はい。クリームと香水をいただきました」
旅行の思い出や知識など、形のないもの、禮裝などはあるけれど、イースティリア様自から直々に『アレリラの為に』と贈られた形のあるものはその二つだろう。
「クリームは、非常に高値をつけている。そもそもの希もあるが、あれの価値は価格のみだろうか?」
「いえ。実際の効果こそが、あの商品の重要な點かと思われます」
もし仮にあれが高値をつけたものではなく、低い価格のものであったとしても、あれだけの効果があるものでなければ、淑がたが一斉に手にれることを求めるものとはならなかっただろう。
イースティリア様は、小さく頷いた。
「そうだな。そしてあれを作った男爵はれにも拘り、に好ましい形に仕上げてある」
「はい」
「では、香水の方はどうだろう?」
「あれは……好みの香りである點が、商品としては素晴らしい點かと思われます」
アレリラに似合う香りを、とイースティリア様がわざわざ調合の為に足を運んで作ってくださった香りである。
その心遣いの価値は、何にも代え難いものだ。
「やはり、価格ではないな」
「はい」
「では、その香りを作っているのは?」
「調香師の方ですね。素晴らしい技ですね」
「そこだ」
イースティリア様は、アレリラが選んだツバキの模様をかした石の髪飾りを手に取り、そっとこちらの頭に添えて、鏡を示した。
イースティリア様の瞳の合いに近い薄青のそれとツバキのハッキリした赤のコントラストは、アレリラの黒髪によく映えている、ように思えた。
しずつ彼がかしてをかすと、石の中で影をもって立的なツバキが浮かび上がる。
「しい品です」
「そうだな。これを含む、私の贈り全てに共通する『価値』は、価格ではなく、希でもなく……効能と、それを作り出す技(・・)にある。君が口にした通りに」
言われて、アレリラは瞬きをした。
―――技的価値。
そう、それは、ペフェルティ領でもタイア領でも、そしてロンダリィズ領でも、ここでも。
常にイースティリア様が評価し、価値を見出し、褒め稱え、吸収しようと、あるいは広めようと興味を持って眺めていたものではなかったか。
何故最初に、全く無名だったクリームの元となった膏に目をつけ、アレリラに差し出したのか。
そしてその前にも、アレリラ自を……人とぶつかってばかりだった、文としては奇異であったの自分を、取り上げたのは、イースティリア様である。
しかも彼は、最初に目にした時からボンボリーノを評価していた、と言っていた。
きっと特異な能力や果を知る前から、『の見方が違う』というのをじ取っていたから。
―――イースティリア様がご覧になり、興味を持つのは。
常にその『果』ではなく『果を生み出す人』の方。
そう、アレリラ自が、アザーリエ様に認めていただいたことで、ようやく自分でも認めることが出來た『裏方にいる人間の価値』というもの。
手のにある、その技と、努力と、気。
「仰りたいことが、分かりました」
イースティリア様が評価するのは、価格でも、自でもないのだ。
いつだって、そう。
―――確かに、この石に込められた技は唯一無二です。
それは、紛れもなく『価値』なのである。
今後は人目にも分かりやすく、高価なにれて、この技をイースティリア様は広めるのだろう。
まず最初に、その技を生み出した人に報いや富を與えてから。
「わたくしに、この技をにつけてしい、と?」
「ああ」
イースティリア様は満足そうに頷き、アレリラの髪をサラリとでる。
「その技は、私のしいアルをしく飾るだろう。私は、そんな君が見たい」
アレリラはそんなイースティリア様に微笑み、髪飾りをけ取ってに著ける。
「……似合いますか?」
「ああ、とても」
そう言って、イースティリア様はおしそうに目を細めてから。
「ツバキの花言葉を含めて、誰よりも、君に似合う髪飾りだ」
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